複素解析④ ローラン級数展開 このエントリーをはてなブックマークに追加

ローラン級数展開の計算のやり方

点$\alpha$まわりの関数$f(z)$のローラン級数展開の一般形は以下の形で表されます。
\begin{align*}f(z)=\displaystyle \sum_{k=1}^\infty \dfrac{c_{-k}}{(z-\alpha)^k}+\sum_{k=0}^\infty c_k (z-\alpha)^k\end{align*}
$c_k(k \in\mathbb{Z})$は係数です。テイラー展開の式と見比べると、$z-\alpha$の項が分母まで来ています。(指数がマイナス方向まで拡張されています。)

では、どうやってローラン級数展開を求めるのかということを解説します。関数$f(z)$が以下の形で与えられたとします。
\begin{align*}f(z)=\dfrac{g(z)}{(z-\alpha)^n}\end{align*}
ただし、一旦、関数$g(z)$は複素数平面全体で正則だとします。複素数平面全体で正則な関数なので、点$\alpha$まわりでテイラー展開してみましょう。
\begin{align*}g(z)=\displaystyle \sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{g^{(k)}(z)}{k!}(z-\alpha)^k\end{align*}
よって、
\begin{align*}f(z)=\displaystyle\dfrac{g(z)}{(z-\alpha)^n}=\sum_{k=0}^\infty \dfrac{g^{(k)}(z)}{k!}(z-\alpha)^{k-n}\end{align*}
となります。問題は、点$\alpha$以外に特異点があるときです。特異点があるときは、領域によってローラン級数の取り方が変わります。これ以上は文字でやるとわかりにくいので、具体例を使います。

ローラン級数展開の例題と解答

以下の関数を原点まわりにローラン展開することを考えます。
\begin{align*}f(z)=\dfrac{1}{z(z-1)}\end{align*}
方針としては無限等比級数和の公式、初項$a$、公比$|r|\lt 1$に対して、
\begin{align*}\dfrac{a}{1-r}=a+ar+ar^2+\cdots=\displaystyle \sum_{k=0}^\infty ar^k\end{align*}
この式をつかって少し変形したいので、$f(z)$を以下のように変形します。
\begin{align*}f(z)=-\dfrac{1}{z(1-z)}\end{align*}
つまり、
\begin{align*}|z|\lt1\end{align*}
のときには無限等比級数の公式を使うことができて、
\begin{align*}\dfrac{1}{1-z}=1+z+z^2+\cdots \end{align*}
つまり、
\begin{align*}\begin{split}f(z)&=-\dfrac{1}{z}(1+z+z^2+\cdots)\\ &=-\dfrac{1}{z}-1-z-z^2-\cdots\end{split}\end{align*}
となります。対して、$|z|>1$のときはというと、
\begin{align*}\begin{split}f(z)&=\dfrac{1}{z^2}\dfrac{1}{\left(1-\dfrac{1}{z}\right)}\\ &=\dfrac{1}{z^2}\left(1+\dfrac{1}{z}+\dfrac{1}{z^2}+\cdots\right)\\&=\dfrac{1}{z^2}+\dfrac{1}{z^3}+\cdots \end{split}\end{align*}
となり、領域によって展開の形が違うことがわかります。これはなぜおこるかというと、考えている領域の中に特異点がどれだけふくまれているかによって変わります。$f(z)$の特異点は、原点と点1ですが、これを原点まわりにローラン展開したいとき、原点中心の円で考えます。このとき、原点は必ず円の中にありますが、点1は円の半径によって含まれるかどうかが変わります。


円の中に含まれていないときには、テイラー展開と同様にできます。ただ、円の中に含まれているときには、注意して展開する必要があるわけです。

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