複素解析⑦ 複素積分の実数積分への応用 このエントリーをはてなブックマークに追加

複素積分の実積分への応用

留数定理を用いる

複素積分は実数積分に応用ができます。今回は、
\begin{align*} \int_{-\infty}^{\infty}\dfrac{1}{x^2+1}\mathrm{d}x \end{align*}
を計算します。ちなみに、実はこの関数は簡単に
\begin{align*} \int_{-\infty}^{\infty}\dfrac{1}{x^2+1}\mathrm{d}x=\left. \arctan{x}\right|^{\infty}_{-\infty}=\pi \end{align*}
とも計算できますが、あえて複素解析で解いて結果が一致することを確かめます。以下、被積分関数を\(f(x)\)とおいて考えます。関数$f(z)$の特異点は複素数の範囲で、
\begin{align*}z^2+1=0\ \ \ \therefore z=\pm{i}\end{align*}
の2点です。次に積分路を考えます。実軸に沿って$-\infty$~$\infty$の複素積分を考えると、これが求めたい積分と同じことになります。よって、この経路を含むように経路を定めたいです。また、コーシーの積分定理をはじめとして、周回積分についての計算の定理を使いたいので、周回積分を考えましょう。では、例えば、以下のような経路を反時計回りにまわる経路$C$を考えましょう。
最後に$R\to\infty$とします。 \begin{align*} C_1&:-R\leq \mathrm{Re}\ z\leq R,\mathrm{Im}\ z=0\\ C_2&:z=Re^{i\theta}(0\leq \theta \leq \pi ) \end{align*} とすれば、
\begin{align*}\oint_Cf(z)\mathrm{d}z=\int_{C_1} f(z)\mathrm{d}z+\int_{C_2} f(z)\mathrm{d}z\end{align*}
まず左辺について、閉路$C$内に含まれる特異点は点$i$のみで、それ以外の$C$の内部分では正則なので、留数定理より、
\begin{align*}\oint_C f(z)\mathrm{d}z=2\pi i\ \mathrm{Res}\ [f,i]\end{align*}
ここで、点$i$は第一位の極なので、
\begin{align*}\mathrm{Res}\ [f,i]=\lim_{z\to i}(z-i)f(z)=-\dfrac{1}{2}i\end{align*}
となり、
\begin{align*}\oint_C f(z)\mathrm{d}z=\pi\end{align*}

ジョルダンの補題を用いる

次に$C_2$に沿った積分について$\mathrm{d}z=iRe^{i\theta}\mathrm{d}\theta$なので、
\begin{align*}\int_{C_2}f(z)\mathrm{d}z=\int_0^\pi \dfrac{iRe^{i\theta}}{R^2e^{i2\theta}+1}d\theta\end{align*}
ここで、被積分関数は$R\to+\infty$とすれば、$0$に収束します。積分範囲は有限なので、
\begin{align*}\lim_{R\to\infty}\int{C_2}f(z)\mathrm{d}z\to0\end{align*}
このことをジョルダンの補題とか言ったりしますが適用条件が面倒なので、毎回計算したほうが楽なように思います。もちろん0に収束すると思いながら。 最後に、$C_1$について、$R\to +\infty$で、
\begin{align*}\int_{C_1}f(z)\mathrm{d}z\to\int_{-\infty}^{\infty}f(z)\mathrm{d}z\end{align*}
となり求めたい積分に収束します。よって、(1)~(4)式より、
\begin{align*}\int_{-\infty}^\infty f(z)\mathrm{d}x=\int_{-\infty}^\infty\dfrac{1}{x^2+1}\mathrm{d}x=\pi\end{align*}
となります。このように複素数平面上で適当な積分経路をとることで実数積分を計算することができます。

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