偏微分方程式② 変数分離法
変数分離法が使える根拠とは?できない?
変数分離を用いる例題
たとえば、以下のような波動方程式を解くことを考えましょう。\begin{align}
\dfrac{\partial^2 y(x,t)}{\partial t^2}=v^2\dfrac{\partial^2 y(t,x)}{\partial x^2} \label{eq:1}
\end{align}
このままでは解けないので、以下のような解を仮定して解くことにします。この方法で本当に正しいのかどうかは後で解説します。
\begin{align}
y(x,t)=X(x)T(t)
\end{align}
この式を用いれば、
\begin{align}
\dfrac{\partial^2 X(x)T(t)}{\partial t^2}=v^2\dfrac{\partial^2X(x)T(t)}{\partial x^2}
\end{align}
微分演算子の扱い方
ここで、微分演算子の扱いについて少し話しておきます。$x$の関数$X(x)$を時間で微分するのはそのまま形が変わりません。しかも、偏微分が常微分と変わらなくなります。\begin{align}
\left(\eqref{eq:1}式の左辺\right)=\dfrac{d^2X(x)T(t)}{dt^2}=X(x)\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}
\end{align}
という具合になります。右辺も同様にすると波動方程式が以下の形で書きなおせます。
\begin{align}
X(x)\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=v^2T(t)\dfrac{d^2X(x)}{dx^2}
\end{align}
各辺に同じ変数をまとめる
さらにここで辺々を$y(x,t)=X(x)T(t)$でわって、定数$v$を左辺に移します。\begin{align}
\dfrac{1}{v^2T(t)}\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=\dfrac{1}{X(x)}\dfrac{d^2X(x)}{dx^2} \label{eq:6}
\end{align}
となります。
恒等式になる条件を考える
いま、\eqref{eq:6}式の左辺は$t$のみの関数、右辺は$x$のみの関数になります。しかし、常に等号が成り立っていなければなりません。これは両辺が常に定数になるときのみになります。この定数を$C$とすると、\begin{align}
\dfrac{1}{v^2T(t)}\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=\dfrac{v^2}{X(x)}\dfrac{d^2X(x)}{dx^2}=C \label{eq:7}
\end{align}
となります。
位置の変数について考える
\eqref{eq:7}の真ん中の式と最右辺の定数を考えます。つまり、以下の式です。\begin{align}
\dfrac{1}{X(x)}\dfrac{d^2X(x)}{dx^2}=C
\end{align}
これをさらに整理すると、
\begin{align}
\dfrac{d^2X(x)}{dx^2}=CX(x)
\end{align}
この常微分方程式を解いてみましょう。もし$C\lt 0$のときは、$\sqrt{C}=i\sqrt{-C}$と置き換えることにしてとりあえず解を求めておくと、
\begin{align}
X(x)=Ae^{\sqrt{C}x}+Be^{-\sqrt{C}x} \label{eq:10}
\end{align}
時間項について探ってみる
\eqref{eq:7}式の最左辺と定数$C$を統合で結んで、\begin{align}
\dfrac{1}{v^2T(t)}\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=C
\end{align}
これを整理して、
\begin{align}
\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=Cv^2T(t)
\end{align}
となります。この解も同様に
\begin{align}
T(t)=De^{v\sqrt{C}t}+Ee^{-v\sqrt{C}t} \label{eq:13}
\end{align}
解をまとめる
こうして\eqref{eq:10},\eqref{eq:13}式から解が$X(x)T(t)$として求まります。あくまでこの場合は解は特殊解ですね。
変数分離法は本当に完全?
変数分離法は勝手に解を積の形に仮定して解いたわけですが、これは本当にいいのでしょうか。実はいいのです。線形方程式ならね。線形方程式なら解の和も解となります。こうしてすべての変数分離解の和を取ることによって一般解を構成します。
ここまでくると変数分離は便利なように聞こえますね。