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常微分方程式⑧ロンスキアン(Wronskian)

ロンスキアンの微分方程式への応用・その意味とは 行列$W(x)$を \begin{align*} W(x)= \begin{pmatrix} \psi_1(x) & \psi_2 & \cdots & \psi_n(x)\\ \psi_1^\prime & \psi_2^\prime &\cdots & \psi_n^\prime(x)\\ \vdots & \vdots &\cdots &\vdots\\ \psi_1^{(n)}(x) & \psi_2^{(n)}(x) & \cdots & \psi_n^{(n)}(x) \end{pmatrix} \end{align*} とおいて、この行列式$\det{W(x)}$を ロンスキアン といいます。 線形微分方程式について、あまり線形独立(一次独立)の話については言及しませんでしたが、たとえば定係数の斉次形の一階線形微分方程式であれば、1つの線形独立の関数が答えになったわけです。 同様に、二階定係数線形微分方程式であれば二つの線形独立解が得られます。 つまり、裏を返せば、定係数の$n$階の線形微分方程式では、$n$個の線形独立解を得られれば、その定数倍の和が解となります。 この判別するための道具がロンスキアンなわけです。 関数系$\{\psi_1(x),\psi(x),\cdots ,\psi_n(x)\}$を考えましょう。このロンスキー行列$W(x)$は、 \begin{align*} W(x)= \begin{pmatrix} \psi_1(x) & \psi_2 & \cdots & \psi_n(x)\\ \psi_1^\prime & \psi_2^\prime &\cdots & \psi_n^\prime(x)\\ \vdots & \vdots &\cdots &\vdots\\ \psi_1^{(n)}(x) & \psi_2^{(n)}(x) & \cdots & \psi_n^{(n)}(x) \end{pmatrix} \end{align*} という最

常微分方程式⑦ ラプラス変換

ラプラス変換とは?変換の公式 関数$f(t)$のラプラス変換$F(s)$は \begin{align*}F(s)=\displaystyle \mathcal{L}[f(t)]=\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\end{align*} と、表されます. 変数が$s$になることに注意してください.$x$で積分したらその積分結果には$x$は残りません。元の変数はどこかへ行ってしまったというわけです。ちなみにどこかへ行きっぱなしというわけではなく、実は戻す方法があります。だから変換なわけです。でもなにがいいのか?というと微分積分を簡単に扱えることがあげられます。 微分・積分の公式 ちなみに関数$f(x)$のラプラス変換に対して、 微分⇄$sF(s)-f(0)$ 積分⇄$\dfrac{F(s)}{s}$ という関係があります。微分のときには$s$をかけて、もとの関数の初期値をひく。積分は$s$で割るということになります。これは部分積分から計算できます。 \begin{align*}\mathcal{L}[f'(t)]&=\displaystyle \int_{0}^{\infty}f'(t)e^{-st}dt\\&=\displaystyle\left[f(t)e^{-st}\right]^{\infty}_{0}+s\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\\&=-f(0)+sF(s)\end{align*} \begin{align*}\mathcal{L}\left[\displaystyle \int f(t)dt\right]&=\displaystyle \int_{0}^{\infty}\left(\int f(t)\ dt\right)e^{-st}dt\\&=\displaystyle\left[-\left(\int f(t)dt\right)\dfrac{1}{s}e^{-st}\right]^{\infty}_{0}+\dfrac{1}{s}\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\\&=\dfrac{F(s)}{s}\end{align*} 微分方程式への応用例題 早速微分方程式を解いてみ

常微分方程式⑥ クレロー(Clairaut)の常微分方程式

クレローの微分方程式とは? 以下のクレローの微分方程式を解きましょう。 \begin{align*}y=x\dfrac{dy}{dx}+f\left(\dfrac{dy}{dx}\right)\end{align*} 以下、$\dfrac{dy}{dx}=y'$として表記します。 微分方程式の両辺を$x$で微分すると、 \begin{align*}\dfrac{df(y')}{dx}=\dfrac{df(y')}{dy'}\dfrac{dy'}{dx}=f'(y')y''\end{align*} となるので、 \begin{align*}y'=y'+xy''+f'(y')y''\\ \therefore \left\{x+f'(y')\right\}y''=0\end{align*} となります。すなわち、$y''=0$または$f'(y')+x=0$ということが導けます。 直線となる解を導く $y''=0$のとき 辺々を$x$で積分することで、積分定数を$C$として、 \begin{align*}y'=C\end{align*} もう一度辺々を$x$で積分して、積分定数$D$として、 \begin{align*}y=Cx+D\end{align*} 今、この式ではパラメータが二つ存在することになります。 しかし、これは 一階の微分方程式なので積分定数は1つであるはず です。 どうにかして積分定数$D$を消去できないでしょうか。 ここで、元の微分方程式に戻って考えましょう。 \begin{align*}y=x\dfrac{dy}{dx}+f\left(\dfrac{dy}{dx}\right)\end{align*} ここで、これと先に求めた結果を比較すると、$D=f(C)$ということになります。すなわち、$y''=0$のとき、 \begin{align*}y=Cx+f(C)\end{align*} ということになります。 特異解が包絡線となる! $x+f'(y')=0$のとき

常微分方程式⑤ リッカチ(Riccati)の微分方程式

特殊解があるリッカチの微分方程式 以下のリッカチの微分方程式を考えます。 \begin{align*}\dfrac{dy}{dx}+p(x)y^{2}+q(x)y+r(x)=0\end{align*} この微分方程式を楽に解くには 特殊解が1つ見つかっている ことが条件となります。 ただ、解が見つかっていなくても解く方法は一応あるので、あとで紹介します。(ただ、そこまで実用的でないので一般的に教科書などでは書かれていなかったりしています。) 特殊解が見つかっている場合 この特殊解を$v(x)$としましょう。つまり、 \begin{align*}\dfrac{dv(x)}{dx}+p(x)\{v(x)\}^{2}+q(x)v(x)+r(x)=0\end{align*} が成り立っています。 ここで、元の微分方程式から、この式をひくと、 \begin{align*}\dfrac{d}{dx}(y-v)+p(x)(y^{2}-v^{2})+q(x)(y-v)=0\end{align*} ここで、$u(x)=y(x)-v(x)$とおくと、 \begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+p(x)u(x)\{y(x)+v(x)\}+q(x)u(x)=0\end{align*} この通り、$u(x)$についての微分方程式に変形しています。 ここで、$y(x)$が残っていますが、これは未知関数なので消去したいですね。 ただ、$v(x)$は既知関数なので残っていても問題はないでしょう。 というわけで、$y(x)$を$y(x)=u(x)+v(x)$によって消去して、 \begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+p(x)u(x)\{u(x)+2v(x)\}+q(x)u(x)=0\end{align*} これを$u(x)$についてまとめると、 \begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+p(x)\{u(x)\}^{2}+\{2p(x)v(x)+q(x)\}u(x)=0\end{align*} あれ、これ結局そんなに変わってなくない?って思うかもしれませんが、実はこの方程式は ベルヌーイの微分方程式 になっています。 ここで、ではこのベルヌーイの微分方程式の解法を使って解いてみましょう。上の記事の

常微分方程式④ ベルヌーイ(Bernoulli)の微分方程式

ベルヌーイの微分方程式の一般解・特殊解 ベルヌーイ( Bernoulli )の微分方程式です. \begin{align*}y'+p(x)y=q(x)y^{n}\end{align*} つまり 非線形 なものです. 非線形の微分方程式はかなり解くのが難しいです たとえば代数方程式($x=\cdots$を求める方程式)も二次方程式は一次方程式に比べれば公式を使わないといけないようになったり少ししんどくなりますよね というわけで非線形な問題は非常に複雑なものが多いですがこの形の微分方程式は意外と簡単に解けるわけです。 難しい微分方程式では特殊解が見つからないと手が付けられないことも多いですが、実は今回は特殊解を求めることなく一般解を求めることができます。 ベルヌーイの微分方程式の例題 覚えてもらうことは一つで十分かな。 \begin{align*}u=y^{1-n}\end{align*} この変数変換をします. 多分それだけ覚えておけば大丈夫です。 では解の導出だけしておきましょう. 上で置いた変数を微分してみると, \begin{align*}u'=(1-n)y^{-n}y'\therefore y'=\dfrac{1}{1-n}y^{n}u'\end{align*} つまり,元の微分方程式はこうなるわけです。 \begin{align*}u'y^{n}+(1-n)p(x)y=(1-n)q(x)y^{n}\end{align*} この式には従属変数、(つまり、$x$の関数)が二つも存在するわけです。 結局これでは意味ないわけで。 だからここから$y$を消去したいのです.(つまり$u$だけの微分方程式にしたい) $u=y^{1-n}$より、この形を無理やり作ってみましょう. 一階線形微分方程式に帰着する 辺々を$y^{n}$乗で割ると \begin{align*}u'+(1-n)p(x)y^{1-n}=(1-n)q(x)\end{align*} ここで,$u=y^{1-n}$だったので、置き換えると \begin{align*}u'+(1-n)p(x)u=(1-n)q(x)\end{align*} これは$u$についての一階線形微分方程式とな

常微分方程式③ 二階線形微分方程式

二階線形微分方程式の解き方 $\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}+a\dfrac{dy}{dx}+b=f(x)$ 今回は,この形の常微分方程式を解きましょう。 ($a,b$は定数です) まず、確認です。 $\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}=y'', \dfrac{dy}{dx}=y'$ あまり詳しくは触れませんが微分の記号の使い方、慣れていない人はちゃんと覚えましょうね。 では、本題です。 特性方程式の導出と使い方 今回、この微分方程式を解くのには 特性方程式 を使います。まず、外力項$f(x)=0$の場合についてです。 今考えている微分方程式の特性方程式としてこんなものを考えます。 $\lambda^{2}+a\lambda+b=0$ 解を$\alpha,\beta$とすると、微分方程式の解は、$A,B$を定数として、 $y=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}\ (\alpha\ne \beta)$ $y=Axe^{\alpha x}+Be^{\alpha x}\ (\alpha=\beta)$ となります。(虚数解になるときはオイラーの公式を用いて展開するべきですが、考え方としては実数解のときと同じように解を求めることができます) では、なぜこうなるのか、順を追って説明します。 特性方程式が重解を持たないとき 重解ではないときを考えます。 まず、微分記号について。 $\dfrac{dy^{2}}{dx^{2}}=\dfrac{d}{dx}\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{d}{dx}\dfrac{d}{dx}y$ こうなるのはわかりますか? つまり、元の微分方程式は こんなふうにかけるのではないでしょうか。 $\dfrac{d}{dx}\dfrac{d}{dx}y+a\dfrac{d}{dx}y+by=0$ ここで、$y$でくくると、 $\left(\dfrac{d}{dx}\dfrac{d}{dx}+a\dfrac{d}{dx}+b\right)y=0$ 微分演算子$\dfrac{d}{dx}$を数とみれば、かっこの中が因数分解できそうですね。 特性方程式の解$\alpha,\beta$を用いると、 $\left(\dfrac{

常微分方程式② 一階線形微分方程式

一階線形微分方程式の解き方 線形とは? 線形 とは、定数倍と和で書けることを言います。 今回の場合は$y$とその微分項$y'$に関して、定数倍と和で書ける($y^{2}$などはない)ということです。 では、以下の微分方程式を考えます。 \begin{align*}\dfrac{dy}{dx}+p(x)y=q(x)\end{align*} この右辺$q(x)=0$のときを 斉次形 、それ以外を 非斉次形 といいます。 ちなみに、斉次形なら変数分離で簡単に解けることになるので非斉次のときを考えます。 解法1 左辺を積の微分公式の形にする方法 \begin{align*}{f(x)g(x)}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\end{align*} この形に左辺を帰着させることを考えます。 右辺には微分項がひとつあるので、微分して第二項の係数$p(x)$を生み出すような関数を考えます。 答えを言ってしまうと、$\displaystyle e^{\int p(x)dx}$を辺々にかけます。そうすると、 \begin{align*}\displaystyle e^{\int p(x)dx}\dfrac{dy}{dx}+e^{\int p(x)dx}p(x)y=q(x)e^{\int p(x)dx}\end{align*} ここで、第二項の係数について、 \begin{align*}\dfrac{d}{dx}e^{\int p(x)dx}=p(x)e^{\int p(x)dx}\end{align*} なので、元の微分方程式の左辺は、 \begin{align*}e^{\int p(x)dx}\dfrac{dy}{dx}+(e^{\int p(x)dx})'y=\dfrac{d}{dx}(e^{\int p(x)dx}y)\end{align*} となります。つまり、元の微分方程式は、 \begin{align*}\dfrac{d}{dx}(e^{\int p(x)dx}y)=q(x)e^{\int p(x)dx}\end{align*} と書きなおせることになります。両辺を$x$で積分して、 \begin{align*}e^{\int p(x)dx}y=\displaystyle \int

常微分方程式① 変数分離

変数分離形の微分方程式の解法 変数分離形の一般的な形は以下の形で書けます \begin{align} \dfrac{dy}{dx}=f(x)g(y) \end{align} つまり、$xとy$それぞれの関数の積で書けるということです。 最もシンプルな形の例題 $g(y)=$定数だと簡単に考えることができます。特に$g(y)=1$としてみましょう。このとき以下のようにできるでしょう。 \begin{align} \dfrac{dy}{dx}=f(x) \end{align} この辺々を$x$で積分してみると, \begin{align} y=\int f(x)dx \label{eq:1} \end{align} ということになります。 初期値を含む例題・一般解と特殊解 \eqref{eq:1}式の右辺はいま不定積分の形で書いています。 つまり、積分定数を加味する必要があります。この定数を含む解を 一般解 といいます。 これに対して、具体的に定数の値を定めたときの解を 特殊解 または 特解 といいます。 これをどう扱うかが問題なわけです。物理的な応用に関してはきっと初期値問題を考えるはずです。 たとえば時刻$t=t_0$で位置$x_0$に物体がある、なんていう条件を考えることがあると思います。 こういうときにはこの初期条件の値を代入すれば積分定数$C$の値が決定できるでしょう。 たとえば、以下のような問題を考えましょう。 \begin{align} \dfrac{dy}{dx}=x^3+x^2, y(0)=2 \end{align} 微分を含む法の式の辺々を$x$で積分することで, \begin{align} y=\dfrac{1}{4}x^4+\dfrac{1}{3}x^3+C \end{align} となります。($C$は積分定数) 次に$C$を決定したいわけですが、$y(0)=2$という条件から求めてみましょう。$x=0$を代入すれば,$y(0)=C$となるので,$C=2$と決定できます。 $g(y)\ne const.$の場合 基本の考えは 「同じ式の中に違う変数が入ってると面倒」 です。 だから、左辺は$y$だけ、右辺は$x$だけの式に変形します。 \begin{a