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偏微分方程式③ 1階特性曲線法

特性曲線法とは?その考え方 特性曲線法という考え方を紹介します。以下のような方程式の解法です。 \begin{align} a(x,y,z)\dfrac{\partial z(x,y)}{\partial x}+b(x,y,z)\dfrac{\partial z(x,y)}{\partial y}=c(x,y,z) \label{pdeeq:1} \end{align} この式だけでは全く想像ができないと思うので以下の 連鎖律 を考えましょう。 \begin{align} \dfrac{dz(x,y)}{dt}=\dfrac{\partial z(x,y)}{\partial x}\dfrac{dx}{dt}+\dfrac{\partial z(x,y)}{\partial y}\dfrac{dy}{dt} \label{pdeeq:2} \end{align} \eqref{pdeeq:1},\eqref{pdeeq:2}式を比較すれば、 \begin{align} \dfrac{dx}{dt}&=a(x,y,z)\label{pdeeq:3}\\ \dfrac{dy}{dt}&=b(x,y,z)\label{pdeeq:4}\\ \dfrac{dz}{dt}&=c(x,y,z)\label{pdeeq:5} \end{align} というような形に書くことができます。($z$について直接$t$の関数ではないので書かないでおきます.)ここで新しく表れたパラメータ$t$が重要で、この新しいパラメータにそった曲線を考えるので 特性曲線 といいます。 ラグランジュ・シャルピ方程式を用いた簡単な計算方法 新しくパラメータを設定するというのが少しハードルが高いので別の考え方があります。 \begin{align} \dfrac{dx}{a(x,y,z)}=\dfrac{dy}{b(x,y,z)}=\dfrac{dz}{c(x,y,z)} \end{align} という式から解を導くこともできます。これは変数分離形のようになっているので少しは計算しやすいかもしれませんが、計算の意味が抽象的になっています。 特性曲線法の例題を解いてみる たとえば以下のような偏微分方程式を解いてみしょう.

偏微分方程式⑦ グリーン関数法

グリーン関数とは?フーリエ変換との関係 グリーン関数とは微分作用素$\mathcal{D}$を考えます.このとき,以下の微分方程式 \begin{align} \mathcal{D}\psi=-f(x) \label{pde7eq:1} \end{align} を考えます.このとき, \begin{align} \mathcal{D}G(x-y)=-\delta(x-y) \label{eq:2} \end{align} を満たす関数$G$を グリーン関数 といいます.と,その前に前提となる知識を紹介しておきます. 畳み込み(Convolution)積分の定義と性質 \begin{align} f*g\stackrel{def}{=}\int_{-\infty}^\infty f(x-y)g(y)dy \end{align} という式を畳み込み積分といいます.余談ですが,畳み込み積分のフーリエ変換は互いのフーリエ変換の積になります.つまり, \begin{align} \mathcal{F}[f*g]=\mathcal{F}[f]\mathcal{F}[g] \end{align} ということです.ちなみに逆に \begin{align} \mathcal{F}^{-1}(\mathcal{F}[f]*\mathcal{F}[g])=fg \end{align} も成り立ちます. デルタ関数の性質 デルタ関数とは,引数が0のときのみ無限大で,他のときは0という関数でした.ただし, \begin{align} \int_{-\infty}^\infty \delta(x)dx=1 \end{align} となっています.ちょっと怪しい条件なので...嫌われている条件でもあります.そして,デルタ関数の畳み込み積分を計算すると, \begin{align} \int_{-\infty}^{\infty} f(x-y)\delta(y)dy=f(x) \label{eq:7} \end{align} というようにデルタ関数の引数が0になるときの他方の関数の値がそのまま出てきます. グリーン関数法について詳しく調べてみる さて,グリーン関数とは以下の式を満たす$G$でした. \begin{ali

偏微分方程式② 変数分離法

変数分離法が使える根拠とは?できない? 変数分離を用いる例題 たとえば、以下のような波動方程式を解くことを考えましょう。 \begin{align} \dfrac{\partial^2 y(x,t)}{\partial t^2}=v^2\dfrac{\partial^2 y(t,x)}{\partial x^2} \label{eq:1} \end{align} このままでは解けないので、以下のような解を仮定して解くことにします。この方法で本当に正しいのかどうかは後で解説します。 \begin{align} y(x,t)=X(x)T(t) \end{align} この式を用いれば、 \begin{align} \dfrac{\partial^2 X(x)T(t)}{\partial t^2}=v^2\dfrac{\partial^2X(x)T(t)}{\partial x^2} \end{align} 微分演算子の扱い方 ここで、微分演算子の扱いについて少し話しておきます。$x$の関数$X(x)$を時間で微分するのはそのまま形が変わりません。しかも、偏微分が常微分と変わらなくなります。 \begin{align} \left(\eqref{eq:1}式の左辺\right)=\dfrac{d^2X(x)T(t)}{dt^2}=X(x)\dfrac{d^2T(t)}{dt^2} \end{align} という具合になります。右辺も同様にすると波動方程式が以下の形で書きなおせます。 \begin{align} X(x)\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=v^2T(t)\dfrac{d^2X(x)}{dx^2} \end{align} 各辺に同じ変数をまとめる さらにここで辺々を$y(x,t)=X(x)T(t)$でわって、定数$v$を左辺に移します。 \begin{align} \dfrac{1}{v^2T(t)}\dfrac{d^2T(t)}{dt^2}=\dfrac{1}{X(x)}\dfrac{d^2X(x)}{dx^2} \label{eq:6} \end{align} となります。 恒等式になる条件を考える いま、\eqref{eq:6}式の左辺は

偏微分方程式① 偏微分方程式入門

偏微分方程式の解き方とは? 偏微分方程式の解き方はバリエーションが豊富で一応ある程度完成された学問とはなっていますが、まだ解けていないナビエストークス方程式などまだまだ研究が続く分野であります。その難しさは解の抽象さにあるような気がします。 簡単な偏微分方程式の一般解を求める たとえば以下のような方程式を解きます。 \begin{align*} \dfrac{\partial f(x,y)}{\partial x}=0 \end{align*} この解は \begin{align*} f(x,y)=g(y) \end{align*} となります。($g(y)$は任意の関数) これが1変数関数の常微分方程式だったら、 \begin{align*} \dfrac{df(x)}{dx}=0 \end{align*} を解けば、定数$C$を用いて \begin{align*} f(x)=C \end{align*} となります。常微分方程式では解の自由度として任意定数というものが登場しました。その代わりに、偏微分方程式では任意関数という形で自由度が得られます。 簡単な例題を解いていみる 簡単な形の例題を解いてみます。 \begin{align*} \dfrac{\partial^2f(x,y)}{\partial x\partial y}=0 \end{align*} この式を以下のように変形します。 \begin{align*} \dfrac{\partial}{\partial x}\left(\dfrac{\partial f(x,y)}{\partial y}\right)=0 \end{align*} こうすれば任意関数$g(y)$を用いて, \begin{align*} \dfrac{\partial f(x,y)}{\partial y}=g(y) \end{align*} となります。続いてこの式を解きます。実はこれを積分した式にさらに$x$の関数がついてもいいわけです。つまり、任意関数$g(y)$を用いて、 \begin{align*} f(x,y)=\int g(y)dy +h(x) \end{align*} となります。ここで、積分の項もただの任意関数なので、改め