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熱力学⑪ ギブス(GIbbs)の自由エネルギー

ギブスの自由エネルギーとは?その定義と意味 一般に化学反応は等温等圧過程での話を考えたほうが考えやすいですね。 ギブスの自由エネルギーの定義 ギブスの自由エネルギーは以下のように定義されます。 ギブスの自由エネルギー \begin{align} G&=F+pV\\ &=U-TS+pV \end{align} と表されます。さて、ギブスの自由エネルギーが持つ意味について考えます。 ギブスの自由エネルギーの微小変化 ギブスの自由エネルギーの微小量を考えると、$dS\geq\dfrac{d^\prime Q}{T},d^\prime W=-pdV$なので、 \begin{align*} dG &=d(U-TS+pV)\\ &=dU-SdT-TdS+Vdp+pdV\\ &=(dU-TdS+pdV)-SdT+Vdp\\ &\leq(dU-d^\prime Q-d^\prime W)-SdT+Vdp \end{align*} となります。 化学反応の進行との関係 式の前半の括弧の部分は熱力学第一法則の式そのものであり、 粒子数が一定の系では0 になります。よって、粒子数一定の場合には, \begin{align} dG\leq -SdT+Vdp \end{align} とすることができます。ここで、等温等圧過程を考えれば、$dT=0,dp=0$であり \begin{align} dG\leq 0 \end{align} となります。つまり、 等温等圧過程ではギブスの自由エネルギーが減少する方向に化学反応が進行 します。そして極小の点(下に凸なので最小といってもいいです)で平衡状態に至ることがわかります。 [ 前の記事へ ] [次の記事へ]

熱力学⑩ ヘルムホルツの自由エネルギー

ヘルムホルツの自由エネルギーとは? ヘルムホルツの自由エネルギーという新しい量を定義します。 微小変化の正確な計算方法 ヘルムホルツの自由エネルギー ヘルムホルツの自由エネルギー$F$を、内部エネルギー$U$、エントロピー$S$、絶対温度$T$を用いて、 \begin{align} F=U-TS \end{align} 天下り的にはなりますが、この式の微小量をとってみます。 \begin{align} dF&=dU-d(TS)\\ &=dU-SdT-TdS\label{eq:2} \end{align} ここで、エントロピーの定義より、 \begin{align} dS&\geq \dfrac{d^\prime Q}{T}\nonumber \\ TdS&\geq d^\prime Q\nonumber \\ -TdS&\leq -d^\prime Q \nonumber \end{align} なので、\eqref{eq:2}式は、 \begin{align} dF&\leq dU-SdT-d^\prime Q\nonumber \\ &=dU-d^\prime Q-SdT\nonumber \\ \end{align} となります。この先に導出したように,不等号はエントロピー由来です。エントロピーの変化が等号をとるのは可逆変化のときなので, 等号成立は可逆過程の場合 です。ここで、熱力学第一法則$dU=d^\prime Q+d^\prime W$より、 \begin{align} dF \leq d^\prime W-SdT \end{align} ここで、等温変化$dT=0$を考えると、 \begin{align} dF&\leq d^\prime W\nonumber \\ -dF&\geq -d^\prime W \end{align} ヘルムホルツの自由エネルギーが持つ意味 もともと$W$というのは系がされる仕事を表していました。つまり、$-W$は系が外部にする仕事で、これは 等温変化で取り出せる仕事の最大値がヘルムホルツの自由エネルギーの減少 と対応していると

熱力学⑨ エントロピー・エントロピー増大の法則

エントロピーとその次元は? エントロピーとは? エントロピーという量を以下の式で定義します。$S(A)$は状態Aのエントロピーを表します。 エントロピー \begin{align} dS&=\dfrac{d^\prime Q}{T} \\ S(A)-S(\text{基準})&=\int_{\text{基準}}^A \frac{d^\prime Q}{T} \end{align} エントロピーは状態量 です。エントロピーは重力による位置エネルギーと同様に基準となる点を決めなければいけません。 また,この式からもわかるように エントロピーは(エネルギー/温度)という次元 を持っています。 エントロピー変化の計算方法 繰り返しますが,エントロピーというのは状態量です。ただし、エネルギーと同様に基準というものを決めてやる必要があります。ここで、前回紹介したクラウジウスの不等式を一般化したもの \begin{align} \oint\dfrac{d^\prime Q}{T}\leq 0 \end{align} を考えます。この式が可逆過程であれば等号が成り立つので、左辺は0になります。つまり、 一周してもとに戻ってくればどんな経路をたどろうと同じ値に戻ってきます 。というわけで、経路によらない、つまり状態量ということができそうです。 エントロピーは、 \begin{align} S(B)-S(A)=\int_A^B \dfrac{d^\prime Q}{T} \end{align} と計算できるわけですが、積分経路は 可逆過程で計算する必要がある 、ということです。 エントロピー増大の法則とは? エントロピー増大の法則 孤立系では、 \begin{align} S(B)-S(A)\geq \int \dfrac{d^\prime Q}{T} \label{eq:2} \end{align} となるようなA→Bにしか自然に変化が進行しない この式をクラウジウスの不等式から導いてみます。\eqref{eq:2}式は以下のように変形できます。ただし,$C_1,C_2$は状態$A,B$を結ぶ適当な経路です。 \begin{align} \oint \dfrac{d^\prime Q}{T}=\int

熱力学⑧ クラウジウスの不等式

クラウジウスの不等式の証明をわかりやすく クラウジウスの不等式を証明してみます。前回証明したカルノーの定理を用います。 クラウジウスの不等式の意味 クラウジウスの不等式 $N$個の熱源からなるサイクルについて,$i$番目の熱源から吸収する熱を$Q_i$(放出する場合は$Q_i\lt 0$)として \begin{align} \sum_{i=1}^{N}\dfrac{Q_i}{T}\leq 0 \label{eq:1} \end{align} を紹介します。ここで、繰り返しますが,$Q_i$は 系が吸収した熱 です。 等号は可逆過程でのみ成立 します。 過程が二つ(N=2)の場合のクラウジウス不等式の導出 簡単にクラウジウスの不等式を示してみます。たとえば、$N=2$について示します。 カルノーの定理をつかってみる カルノーサイクルを考える 高熱源(温度$T_1$)から熱量$Q_1$をうけとり,低熱源(温度$T_2$)から熱量$Q_2$を放出するサイクル を考えます。 カルノーの定理をもちいる あらゆる熱機関の効率$\eta^\prime$は,高温熱源$T_1$と低温熱源$T_2$について \begin{align} \eta^\prime\leq \dfrac{T_1-T_2}{T_1} \label{eq:carnot} \end{align} となります。ただし,等号成立はカルノーサイクルの場合のみです。つまり, 熱効率が最大となるのはカルノーサイクル ということになります。ところで,今考えているサイクルでは高温熱源から吸収する熱量を$Q_1$, 低温熱源に放出する熱量 を$Q_2$とすると, \begin{align} \eta^\prime=\dfrac{Q_1-Q_2}{Q_1} \end{align} です。これを\eqref{eq:carnot}に代入すると, \begin{align} \dfrac{Q_1-Q_2}{Q_1}&\leq \dfrac{T_1-T_2}{T_1}\nonumber \end{align} となります。これを整理していきましょう。 \begin{align} 1-\dfrac{Q_2}{Q_1}&\leq 1-\

熱力学⑦ カルノーサイクル・カルノーの定理

カルノーサイクルの熱効率と仕事 カルノーサイクルでは断熱変化と等温変化を繰り返す可逆サイクルのことです。 カルノーサイクルの$p-V$グラフの面積を求める たとえば以下のようなサイクルを考えましょう。 状態A→B:等温膨張 状態B→C:断熱膨張 状態C→D:等温圧縮 状態D→A:断熱膨張 というサイクルを考えます。状態$A$のときの圧力を$p_A$、体積を$V_A$、絶対温度を$T_A$のように添え字に状態を添えて表すことにします。 状態A→B:等温膨張 この過程で吸収する熱量$Q_{A\to B}$、外部にする仕事$W_{A\to B}$を計算しましょう。圧力$p$は体積と温度の関数で表しなおすことができて、いま等温過程を考えているので$T$は定数($T=T_A=T_B$)とみなすことができて、また,気体の状態方程式$p=\dfrac{nRT}{V}$を用いて, \begin{align} W_{A\to B} &=\int_{V_A}^{V_B}pdV\nonumber \\ &=\int_{V_A}^{V_B}\dfrac{nRT_A}{V}dV\nonumber \\ &=nRT_A \log{\dfrac{V_B}{V_A}} \label{eq:1} \end{align} また、熱力学第一法則より、$d^\prime Q=dU$であり,この微小量をAからBまで足し合わせると,$Q_{A\to B}=W_{A\to B}$なので、 \begin{align} Q_{A\to B}=W_{A\to B}=nRT_A \log{\dfrac{V_B}{V_A}} \label{eq:2} \end{align} 状態B→C:断熱膨張 断熱変化なので、$Q_{B\to C}=0$です。では、仕事を計算しましょう。今回は体積も、圧力も温度も固定されていないので、\eqref{eq:1}のようには計算できません。ところで、断熱変化ではポアソンの法則より比熱比$\gamma$を用いて、 \begin{align} pV^\gamma&=一定 \label{eq:3}\\ \end{align} が成り立ちます。ここで、\eqref{eq:3}式が定数$C$に等し

熱力学⑥ マイヤーの関係式・ポアソンの法則

マイヤーの関係式・ポアソンの法則の導出をわかりやすく マイヤーの関係式とポアソンの法則を導出します。やはり熱力学第一法則を用います。 ポアソンの法則とは? ポアソンの法則は理想気体を考えて導かれます。 ポアソンの法則 準静的(十分な時間を書けたゆっくりとした変化)断熱変化において圧力$p$,体積$V$に対して、 \begin{align} pV^\gamma=\text{一定} \end{align} という式が成り立ちます。ただし,定圧モル比熱$c_p$,定積モル比熱$c_V$をもちいて,$\gamma=\frac{c_p}{c_V}$です。 これを圧力以外で表そうと思えば、以下のように表すこともできます。 ポアソンの法則の別の表現 \begin{align} TV^{\gamma-1}=\text{一定} \end{align} ということもできます。さて、この式を導出してみましょう。 マイヤーの関係式を導く マイヤーの関係式とは? マイヤーの関係式 定積モル比熱$c_V$,定圧モル比熱$c_p$,気体定数$R$について, \begin{align*} c_p=c_V+R \end{align*} 以上のような式が成り立ちます。これを以下で導出します。 熱力学第一法則より$dU=nc_V\ dT$を導く ここで、やはり頼るのは熱力学第一法則で \begin{align} dU=d^\prime W+d^\prime Q\label{eq:4} \end{align} ここで、等積変化$dV=0$を考えると、$d^\prime W=0$なので、熱力学第一法則は、 \begin{align} d^\prime Q=dU \label{eq:5}\end{align} と表せます。つまり、 等積変化では加えられた熱はすべて内部エネルギーの変化に使われる ということです。ちなみに、加えられる熱量は温度変化$dT$に対して、物質量が一定で$n$とすれば, \begin{align} d^\prime Q=nc_VdT\label{eq:6} \end{align} と表せます。\eqref{eq:5},\eqref{eq:6}式を合わせて考えると、 \begin{align} dU=nc_VdT \la

熱力学⑤ クラウジウスの原理(Clausius)・トムソンの原理(Tomson)

クラウジウスの原理・トムソンの原理と熱力学第二法則 熱力学第二法則の一つの表現であるクラウジウスの原理とトムソンの原理を紹介します。 クラウジウスの原理・トムソンの原理とは? クラウジウスの原理 他に変化を残さずに低熱源から高熱源に熱を移すことはできない トムソンの原理 他に変化を残さずに一つの熱源から熱を取り出して力学的な仕事をすることはできない これらは等価なものだということを示すことができます。どういうことかというと... クラウジウスの原理を否定すればトムソンの原理に矛盾、トムソンの原理を否定すればクラウジウスの原理に矛盾する という関係が成り立ちます。 トムソンの原理からクラウジウスの原理を導く 「トムソンの原理が成り立つ」$\Rightarrow$「クラウジウスの原理が成り立つ」を示せばよいのですが、この対偶を取ると、「クラウジウスの原理が成り立たない」$\Rightarrow$「トムソンの原理が成り立たない」となるのでこれを示しましょう。 まず、クラウジウスの原理を否定します。つまり、 「他に変化を残さずに低熱源から高熱源に熱を移すことができる」と仮定 します。 サイクル$C_1$を高熱源から熱量$Q_A$をとりだし、低熱源に熱量$Q_B$を放出するサイクルとします。この時、外部にする仕事は$Q_A-Q_B$と表されます。いま、クラウジウスの原理を否定しているので、低熱源から高熱源に他に変化を残さずに熱を移すことができます。いま、$Q_B$の熱量を低熱源から高熱源に移すサイクル$C^\prime_1$を組み合わせると、合計として、低熱源の熱収支は0になるので、 高熱源から熱量$Q_A-Q_B$の熱を取り出しそのまま仕事に変え、他に何も変化を残さないという変化が可能になり、これはトムソンの原理に矛盾 します。 クラウジウスの原理からトムソンの原理を導く 先ほどと同様です。トムソンの原理を否定します。このとき、 「1つの熱源から外部に変化を残さずに仕事を取り出す」ことを仮定 ができます。 低熱源から$Q_B$の熱量を吸収し、仕事$Q_A-Q_B$を受け取って高熱源に熱量$Q_A$を放出する$C_1$の逆サイクル$C_{-1}$を考えましょう。 さらに、サイクル$C^\prime_2$と

熱力学④ エンタルピー・吸収熱の求め方

エンタルピーとは?エントロピーとの違い エンタルピーと等圧過程の関係 エンタルピー エンタルピー$ H $は内部エネルギー$ U $,圧力$ p $、体積$ V $に対して、 \begin{align} H=U+pV \end{align} たびたび,エンタルピーとエントロピーが混同されますが全く違う話です。さて、エンタルピーというのはどういう意味を持つ量かを考えます。 等圧過程を考えて熱収支を求める エンタルピーは等圧過程で意味を持つ量になります。 熱力学第一法則を考える 以下の熱力学第一法則を考えます。 \begin{align} dU = d^\prime Q+d^\prime W \end{align} ここで、$ d^\prime W=-p_{外}dV $なので、もし常につりあいを保ちながらゆっくり反応するときは、常に$ p_{外}=p $と、系の圧力で書きなおせます。このとき、熱力学第一法則は、 \begin{align} d^\prime Q= dU+pdV \label{eq:3}\end{align} もし、等積過程であれば$ dV=0 $であるので、外部からの熱供給はそのまま内部エネルギーに使われることになります。では、等圧過程ではどうでしょうか。 熱力学第一法則を使いながら状態量で式をまとめていく ずっと非状態量のうっとうしさの話については語っていますがやはり非状態量は扱いにくいわけです。そこで、エンタルピー$ H=U+pV $を導入すると、右辺がすべて状態量なので、 エンタルピーは状態量 として扱えて、 \begin{align} dH &= dU+d(pV) \nonumber \\ &= dU+Vdp+pdV \nonumber \end{align} 1行目から2行目の計算について、積の微分法と同様に二つの関数の積の全微分はそれぞれを微分してやる必要があるので、$d(pV)=Vdp+pdV$となっています。今考えているのは等圧過程で$dp=0$なので、 \begin{align} dH = dU +p dV \label{eq:5}\end{align} この\eqref{eq:5}式を\eqref{eq:3}式と比較してみましょう。 非状態量$Q^\p

熱力学③ 熱力学第一法則

熱力学第一法則とは? 大学で習う熱力学第一法則は少し微分を意識して書いてありますが,意味としては今までと変わりません。 熱力学第一法則の式は? 熱力学第一法則はエネルギーの保存を表す法則で、 熱力学第一法則 \begin{align} dU=d^{\prime}Q + d^{\prime}W \label{eq:1} \end{align} と表されます。$U$は内部エネルギー、$Q$は系に加えられた熱量、$W$は系がされた仕事で、その微小量を考えています。(微小量を考えたほうが都合が良いので) いま、$Q$と$W$には微小量の記号を$d^\prime$としていますが、これは非状態量なのでこのようにしています。 また、$d^\prime W$は$d^\prime W=-p_{外}V$と表されます。ここで、$p_{外}$は外界の圧力ですが、もし 外圧を使わずに系の圧力で書いてしまうと、外圧が0の真空で系の圧力が0でないような,自由膨張で仕事が発生することになり不都合 になります。というわけで、\eqref{eq:1}をかきなおすと、 \begin{align} dU=d^\prime Q-p_{外}dV \label{eq:2} \end{align} となります。これで非状態量が一つ減りました。ただし,先ほどの述べた自由膨張を除く, 多くの場合では力のつり合いを保ちながら変化するので、その場合には、系の圧力$p$に対して、常に$p_{外}=p$が成り立っていると考えることができます。 定積熱容量を新しく導入する ここで、定積熱容量$C_V$を導入します。厳密にはこれは定数ではないですが、いまは定数だと考えましょう。(熱力学の範囲では定数と考えていることが多いような気がします。)このとき、微分項の右下に一定に保っている量を記すことにすれば,体積一定で維持したままの吸収熱と温度の関係は \begin{align} \left(\dfrac{d^\prime Q}{dT}\right)_V &=C_V\\ \therefore d^\prime Q&=C_V dT\ \ (\text{体積一定}) \end{align} が成り立ちます。これを\eqref{eq:2}式に代入すれば、 \

熱力学② ファンデルワールスの状態方程式・理想気体が成り立つ条件

ファンデルワールスの状態方程式の導出・臨界点とは? 理想気体の状態方程式は理想気体に対して成り立つだけで実在気体とは多少誤差があります。そこで修正を加えた状態方程式を紹介します。 各定数が持つ意味とは?理想気体との乖離 ファン・デル・ワールスの状態方程式 $a,b$を気体に固有の定数とします。 \begin{align} \left(p+\dfrac{an^2}{V^2}\right)\left(V-nb\right)=nRT \label{eq:1} \end{align} この式を、理想気体の状態方程式 \begin{align*}pV=nRT\end{align*} と見比べてみます。いま、圧力と体積に修正項が入っています。これはなぜでしょうか。ファンデルワールスの状態方程式とは実在気体を状態方程式に適用するために修正されたものです。そこで、理想気体と実在気体の違いを考えてみます。理想気体とは、 分子の体積が0である 分子間力がはたらかない という二つの大きな条件がありました。当然、実在気体ではこれらの条件は成り立たないので、ファンデルワールスの状態方程式の修正項という形で、実在気体に近づけているのです。 体積に関する修正項 1molの分子の体積を$b$とすれば、$n$molでは、$nb$の分子体積があります。ここで、気体の体積$V$というのは、分子が動き回れる領域のことなので、理想気体で考えているときの体積に、分子の分だけ加える必要があります。これが測定できる体積$V$なわけです。よって、 \begin{align*}V'=V-nb\end{align*} という修正を加えます。 圧力に関する修正項 次に圧力について、分子間力を加味しなければなりません。分子間力というのは互いに引き合う力なので、圧力が小さくなります。(容器壁面に衝突する分子の速さが小さくなります) \begin{align*} p~\prime = p+\frac{an^2}{V^2} \end{align*} この修正になぜ$V^2$が入るのか、直感的な理解は難しいですが、考えの一つとして... 分子間の距離が大きくなれば分子間力は小さくなります。この関係は、分子間力が万有引力、またはクー

熱力学① 状態方程式とボイル・シャルルの法則

理想気体の状態方程式とは?導出? 元々はボイル・シャルルの法則から理想気体の状態方程式が導かれたわけですが今回は状態方程式から導出したいと思います。 理想気体の状態方程式とは? 理想気体の状態方程式 $p$は圧力、$V$は体積、$n$は物質量、$R$は気体定数、$T$は絶対温度として, \begin{align*}pV=nRT\end{align*} いま、 粒子数は一定 と考えると、$n$は一定になります。また、気体定数$R$も定数なので一定です。 ちなみに、ボイルの法則、シャルルの法則は実験事実です。だからそこから理想気体の状態方程式が導かれたわけですが,今回は状態方程式から二つの法則を説明します。 ボイルの法則とは? ボイルの法則 $p$を圧力、$V$を体積として,絶対温度$T$が一定のとき \begin{align*}pV=\text{一定}\end{align*} 状態方程式で$T=$一定のときには \begin{align*}pV=nRT=一定\end{align*} となるからですね。 シャルルの法則とは? シャルルの法則 $V$を体積,絶対温度を$T$として,$p$を圧力、が一定のとき \begin{align*}\frac{V}{T}=\text{一定}\end{align*} $p=$一定のときには、 \begin{align*}\dfrac{V}{T}=\dfrac{nR}{p}=一定\end{align*} となります。 ボイル・シャルルの法則とその成り立たない例 ボイル・シャルル法則の法則 $p$を圧力、$V$を体積,絶対温度を$T$として \begin{align*}\frac{pV}{T}=\text{一定}\end{align*} これは理想気体から以下のように考えることができます。 \begin{align*}\dfrac{pV}{T}=nR=\text{一定}\end{align*} よって,理想気体の状態方程式が成り立っているときには成り立ちます(温度一定とか圧力一定とかの条件が付いていません) ただ,粒子数の一定,つまり物質量$n$の一定を前提にしているので, 粒子数が変化するような反応では成り立ちません。 [ 次の記事へ ]