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集合論③ カントールの対角線論法

カントールの対角線論法とは? ここでは実数の集合$\mathbb{R}$が可算集合でないことを示します。背理法をもちいますが、今回紹介する方法が対角線論法と呼ばれています。 前提:可算集合や濃度の定義など 定義以外にも細かい説明は前回記事におおざっぱにのせてあるので、細かいことは前回記事をご覧ください。(参考: 集合の濃度とベルンシュタインの定理(+可算集合) ) 可算集合とは? 可算集合 自然数と濃度が等しい集合を可算集合といいます。 集合の濃度とは? 集合の濃度 \begin{align*} 「集合AとBの濃度が等しい」&\stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}AとBの間に全単射が存在する\\ 「集合Aの濃度はBの濃度以下」&\stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}AからBへの単射は存在する \end{align*} 可算集合の無限部分集合は可算集合 可算集合の中で無限部分集合を考えると、その無限部分集合も可算集合になります。 もちろん、これは証明すべきことなのですが、一旦事実として話を進めます。 対角線論法による証明 対角線論法を用いて、実数が非可算濃度をもつことを証明します。 背理法を用いる 実数の集合$\mathbb{R}$が可算集合と仮定します。この仮定の下では、$\mathbb{R}$の無限部分集合$[0,1]$も可算集合になります。 可算集合の定義から、$\mathbb{R}$と$\mathbb{N}$の間には1対1の対応(全単射)が存在することになります。 対応関係を考える つまり、写像$f$:$\mathbb{N}$$\mapsto$$[0,1]$を考えて、 \begin{align*} f(1)&=0.a_{11}a_{12}a_{13}\cdots \\ f(2)&=0.a_{21}a_{22}a_{23}\cdots \\ &\vdots \\ f(k)&=0.a_{k1}a_{k2}a_{k3}\cdots \\ &\vdots \end{align*} という対応関係

集合論② 集合の濃度とベルンシュタインの定理

集合の濃度とは? 測度論ってところでも使います。いわゆるルベーグ積分につながります。(参考: ディリクレ関数のルベーグ積分 ) まず、定義から。 集合の濃度とは? 集合の濃度 \begin{align*} 「集合AとBの濃度が等しい」&\stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}AとBの間に全単射が存在する\\ 「集合Aの濃度はBの濃度以下」&\stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}AからBへの単射は存在する \end{align*} 集合$A$と$B$の濃度が等しいことを、$A$~$B$と書きます。 集合$A$の濃度を$|A|$と書きます. つまり、$A$~$B$は$|A|=|B|$とも書けます。 可算集合の定義とは? 可算集合 自然数と濃度が等しい集合を可算集合といいます。 と、定義します。 ここで、「算」というのは「数える」ということで、数えることができる集合のことを言います。 ベルンシュタインの定理 ベルンシュタインの定理の内容 ベルンシュタインの定理 \begin{align*}「AからB,BからAの単射がそれぞれ存在すれば、A~B」\end{align*} $A$~$B$とは$A$から$B$への全単射が存在することですから、 $A$から$B$, $B$から$A$の単射がそれぞれ存在すれば、$A$から$B$への全単射が存在する、ともいえますね。 厳密な証明は難しいので割愛しますが、意味だけ理解してください。 ベルンシュタインの定理の意味 $A$から$B$への単射が存在するならば、$|A|$$\leq |B|$であり、$B$から$A$への単射が存在するならば、$|B|$$\leq|A|$ つまり、以上かつ以下、これを満たすのは両者が等しいときだけです。 [ 前の記事へ ] [ 次の記事へ ]

集合論①写像の種類 単射 全射 全単射

写像の意味とは? 数学で扱う、「写像」とは二つの集合があるときのそれぞれの要素の対応をいいます。英語ではmapとかmappingといいます。が、実は「関数」という考え方とほぼ同義と思ってよいと思います。 単射・全射・全単射の定義 写像の種類 写像$f:X↦Y$に対して、 単射 $X$の要素$x$の値が違うなら対応する$Y$の値も異なる 全射 どんな$Y$の要素$y$をとっても、対応する$X$の要素$x$が存在する。 全単射 単射かつ全射な写像 $X,Y$は、いわゆる定義域と値域です。無限集合として集合の一種として扱います。 $X,Y$を実数全体とします。以下に例を示します。 単射・全射・全単射の例 「単射であるが、全射ではない」 $y=2^{x}$ 同じ値$yを出力するx$はないはずです。 一般に、連続かつ単調増加な関数は$x$の値が違えば$y$も違います よって、単射です。 全射ではないことは「どんな$y$を考えても、それを満たす$x$が存在するか?」を考えればいいわけです。 今回、集合$Y$として実数全体を考えているのですが、指数関数の値域は正の実数です。 つまり、$y=-1$を満たす$x$の値は存在しません。 よって全射ではありません。 「全射であるが、単射ではない」 $y=\tan{x}$ どんな$y$の値に対してもそれを満たす$x$は存在します。 しかし、これは 周期関数 ですから、$y$の値に対して、それを満たす$x$は複数存在します。 「全射かつ単射、つまり全単射」 $y=x$ $x$の一次関数は全単射です。 もう言うまでもないかな。 「全射でも単射でもない」 $y=\sin{x}$ $y=2$を満たす$x$は存在しないし、$y=0$となる$x$はいくらでもありますね。 単射・全射・全単射判定の例題 $X,Y$を実数全体としたときに、以下は全射、単射、どちらでもない、全単射のどれでしょうか。 $$ \begin{align*} (1)y&=\log{x}\\ (2)y&=x^{2} \end{align*}$$ (答) (1)全単射...($x$が0や負のときは定義されません