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相対性理論⑳ シュワルツシルト解

シュワルツシルト解とは? アインシュタイン方程式のもっとも簡単な解のひとつであるシュワルツシルト解について紹介します。計算過程が大変煩雑なので過程は省略しますが... シュワルツシルト解の設定 原点に質量$M$の物体があることを設定します。それ以外は真空でよって球座標を導入します。 \begin{align*} x&=r\cos{\phi}\sin{\theta} \\ y&=r\sin{\phi}\sin{\theta} \\ z&=r\cos{\theta} \end{align*} という座標を設定します。 シュワルツシルト計量 シュワルツシルトにより導かれた計量は以下のようになります。 \begin{align*} ds^2=-\left(1-\dfrac{2GM}{c^2r}\right)c^2 dt^2+\left(1-\dfrac{2GM}{c^2r}\right)^{-1}dr^2+r^2(d\theta^2+\sin^2{\theta}d\phi^2) \end{align*} さて、ここで半径成分に特異点が出現しました。というわけでこの点に何か意味があるのか? ということなのですが、ブラックホールの半径がこの特異点、という見方が一般的です。 つまり、質量$M$の物体が \begin{align*} r=\dfrac{2GM}{c^2} \end{align*} の半径以下になるとがブラックホールになるのでは、とみることができます。 [ 前の記事へ ] [ 次の記事へ ]

相対性理論⑲ ダークマター(暗黒物質の数式的解釈)

ダークマターの解釈 前回アインシュタイン方程式に修正を加えましたがそれについてもう少し詳しく考えます。 宇宙項含むアインシュタイン方程式 宇宙項を入れたアインシュタイン方程式は以下のようになります。 \begin{align*} G_{\mu\nu}+\Lambda g_{\mu\nu}=\dfrac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \end{align*} さて、この宇宙項の解釈をどうするか、ですが、これを以下のようにしてみるとどうでしょう。 \begin{align*} G_{\mu\nu}=\dfrac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}-\Lambda g_{\mu\nu} \end{align*} もともとアインシュタイン方程式というのは、 \begin{align*} \text{重力場の歪み}=\text{物質場} \end{align*} という構造をしていたので、これはまるで新たな物質の存在を予感させることになります。 [ 前の記事へ ] [ 次の記事へ ]

相対性理論⑱ 宇宙項・宇宙定数

宇宙項とは?アインシュタイン方程式の修正 どこかで宇宙項という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、アインシュタイン方程式の修正のことです。 アインシュタイン-ヒルベルト作用 アインシュタイン方程式を導出した作用積分の一部、重力場の部分は以下のようなものでした。 \begin{align*} S_g=c_g\int R\sqrt{-g}d^4x \end{align*} これをアインシュタイン-ヒルベルト作用というのでしたが、この$g^{\mu\nu}$による変分を取った結果が以下の通りです。 \begin{align} \delta S_g=c_g\int \left(R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \label{eq:1} \end{align} 物質場の作用 さて。物質場の作用は \begin{align*} S_m=c_m\int \mathcal{L}_m\sqrt{-g}d^4x \end{align*} としてその$g^{\mu\nu}$による変分は \begin{align} \delta S_m&=c_m\int \left(\dfrac{\partial\mathcal{L}_m}{\partial g^{\mu\nu}}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}\mathcal{L}_m\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \nonumber\\ &=-\dfrac{c_m}{2}\int T_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \label{eq:2} \end{align} アインシュタイン-ヒルベルト作用に課された条件とは? アインシュタイン-ヒルベルト作用を作ったときに考えていた条件は微分が高々二階微分までしか含まないことです。というわけで作用積分の中身をスカラー曲率$R$のみにしていたわけですが、 定数も加えていいのでは? と考えたわけです。 つまり、以下のような作用を考えます。もちろん、$a$は定数です。 \begin{align*} S_

相対性理論⑰ ニュートン近似

ニュートン近似でアインシュタイン方程式の係数決定 アインシュタイン方程式は以下のようにあらわされました。 \begin{align*} G_{\mu\nu}=R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R=\kappa T_{\mu\nu} \end{align*} ニュートン近似といって非相対論的極限を取ってNewton力学と一致するようにアインシュタイン方程式の右辺の係数$\kappa$を決めましょう。 重力ポテンシャルのポアソン方程式 重力ポテンシャルのポアソン方程式を導出します。まず、電磁気学でのポアソン方程式を、$q\leftrightarrow m$としてクーロンの法則と万有引力の法則を比較します。ただし、重力のポテンシャルはポテンシャルとしての電位に合わせているので、古典力学で使うような位置エネルギーではないです。 \begin{align*} \nabla^2\phi=-\dfrac{\rho}{\varepsilon}&\Leftrightarrow \phi(\boldsymbol{r})=\dfrac{q}{4\pi\varepsilon|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^\prime|}\\ \nabla^2\phi=4\pi G\rho &\Leftrightarrow \phi(\boldsymbol{r})=-\dfrac{Gm}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^\prime|} \end{align*} さて、つまり、重力についてのポテンシャル$\phi$が \begin{align*} \nabla^2 \phi=4\pi G\rho \end{align*} となればよいでしょう。アインシュタイン方程式の非相対論的極限がこのポテンシャルの条件を満たすことを確かめます。 アインシュタイン方程式をいじってみる アインシュタイン方程式をもう一度書いてみます。 \begin{align*} R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R=\kappa T_{\mu\nu} \end{align*} ここで、$g_{\mu\nu}\app

相対性理論⑯ アインシュタイン方程式

アインシュタイン方程式の導出 前回までに導出した重力場の作用であるアインシュタイン-ヒルベルト作用とエネルギー・運動量テンソルに絡む物質場の作用を用いてアインシュタイン方程式を導出します。 アインシュタイン方程式 アインシュタイン方程式(宇宙項なし) アインシュタインテンソル$G_{\mu\nu}$,エネルギー運動量テンソル$T_{\mu\nu}$に対して、 \begin{align*} G_{\mu\nu}=\kappa T_{\mu\nu} \end{align*} ただし、$\kappa$は定数です。 $\kappa$はNewton力学との接続から決めるので次回決定します。 アインシュタインはこの式に宇宙項という修正を加えていますが、それは次々回修正します。 アインシュタイン-ヒルベルト作用、物質場の作用の変分 さて、アインシュタイン-ヒルベルト作用$S_g$と、物質場の作用$S_m$は以下のようにあらわされました。$c_g$,$c_m$は定数です。 \begin{align*} S_g&=c_g\int R\sqrt{-g}d^4x \\ S_m&=c_m\int \mathcal{L}_m\sqrt{-g}d^4x \end{align*} さらに。この変分は前回、前々回の結果から以下のようになるのでした。 \begin{align*} \delta S_g &=c_g\int\left(R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x =c_g\int G_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \\ \delta S_m &=-\dfrac{c_m}{2}\int\left(g_{\mu\nu}-2\dfrac{\partial \mathcal{L}_m}{\partial g^{\mu\nu}}\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x =-\dfrac{c_m}{2}\int T_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \en

相対性理論⑮ エネルギー・運動量テンソル

物質場からエネルギー・運動量テンソルの導出 次の記事で重力方程式を導きたいのですが、そのためには重力場だけではなく物質が存在することからできる場、物質場を考える必要があるでしょう。 物質場の作用積分を考える 物質場は具体的な分布を考えると、適用範囲が狭くなってしまうので、一旦大雑把に、以下の形に作用積分を決めておきます。ただし、$c_m$は定数です。 \begin{align*} S_m=c_m\int\mathcal{L}_m\sqrt{-g}d^4x \end{align*} さて、前回、アインシュタインテンソルを導出したのに習って、$g^{\alpha\beta}$による変分を取ることにします。 \begin{align*} \delta S_m=c_m\int \left\{\dfrac{\partial \mathcal{L}_m}{\partial g^{\alpha\beta}}\sqrt{-g}+\mathcal{L}_m\dfrac{\partial\sqrt{-g}}{\partial g^{\alpha\beta}}\right\}\delta g^{\alpha\beta}d^4x \end{align*} 第二項に関しては前回の結果を用いて、 \begin{align*} \dfrac{\partial\sqrt{-g}}{\partial g^{\alpha\beta}}=-\dfrac{1}{2}g_{\alpha\beta}\sqrt{-g} \end{align*} なので、 \begin{align*} \delta S_m&=c_m\int \left(\dfrac{\partial \mathcal{L}_m}{\partial g^{\alpha\beta}}-\dfrac{1}{2}g_{\alpha\beta}\mathcal{L}_m\right)\sqrt{-g}\delta g^{\alpha\beta}d^4x \\ &=-\dfrac{c_m}{2}\int \left(-2\dfrac{\partial \mathcal{L}_m}{\partial g^{\alpha\beta}}+g_{\alpha\beta}\mathc

相対性理論⑭ アインシュタインテンソル

アインシュタインテンソルを導出する アインシュタインテンソルというものを導出しましょう。これは前回紹介したアインシュタイン-ヒルベルト作用から導出します。 アインシュタインテンソルの定義 アインシュタインテンソル$G_{\mu\nu}$ リッチテンソル$R_{\mu\nu}$,スカラー曲率$R$、計量テンソル$g_{\mu\nu}$に対して \begin{align*} G_{\mu\nu}=R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R \end{align*} これをアインシュタイン-ヒルベルト作用の変分を取ることで導出しましょう。 アインシュタイン-ヒルベルト作用の変分 アインシュタイン-ヒルベルト作用は以下のようにあらわされます。ただし、$R=g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}$を用いました。$c_g$は定数です。 \begin{align*} S_g=c_g\int g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \end{align*} ここで、$g^{\alpha\beta}$に関する変分を取ります。 \begin{align} \delta S_g =c_g\int\left\{ \dfrac{\partial g^{\mu\nu}}{\partial g^{\alpha\beta}}R_{\mu\nu}\sqrt{-g} +g^{\mu\nu}\dfrac{\partial R_{\mu\nu}}{\partial g^{\alpha\beta}}\sqrt{-g} +g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}\dfrac{\partial \sqrt{-g}}{\partial g^{\alpha\beta}} \right\}\delta g^{\alpha\beta}d^4x \label{eq:1} \\ \end{align} \eqref{eq:1}の第一項について 文字がそろっているときのみ1になり、それ以外は0になるので以下のようにあらわせます。 \begin{align*} \dfrac{\partial g^{\mu\nu}}{\partial g^{\alpha\beta}}=\delt

相対性理論⑬ アインシュタイン-ヒルベルト作用

アインシュタイン-ヒルベルト作用とは?アインシュタインテンソルの導出 解析力学でいう作用積分を決定したいと思います。その作用としてどんなものを選ぶといいか?考えていきます。 アインシュタイン-ヒルベルト作用に求められる条件 そもそもですが、 作用積分はスカラー量 です。なので、スカラー量になるものから考えましょう。 今まで扱ってきた変数で、スカラーになるものといえば、スカラー曲率$R$があります。ほかにも$R_{\mu\nu}R^{\mu\nu}$などがスカラーになるわけですが、そんなにたくさんのものを考えることは難しいので思い切って候補を絞ります。 Newton力学では二階微分の方程式が基本方程式でした。というわけで 作用積分から導かれる方程式が二階微分の方程式になるように 作用積分を選びましょう。以下のリーマン曲率テンソルの表示を見てみましょう。 リーマン曲率テンソルの具体的な表示 \begin{align*} {R_{abc}}^d=\partial_b{\Gamma^d}_{ca}-\partial_a{\Gamma^d}_{cb}+{\Gamma^d}_{\lambda b}{\Gamma^\lambda}_{ca}-{\Gamma^d}_{\lambda a}{\Gamma^\lambda}_{cb} \end{align*} 作用積分から方程式を導く、ということを考えればさらに微分が1階分増えるはずです。つまり、リーマン曲率テンソルを作用積分の中身に、と言いたいところですが、中身はスカラーであるべきでした。よって、リーマン曲率テンソルをから導けるスカラー曲率 \begin{align*} R=g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}=g^{\mu\nu}{R_{\mu\alpha\nu}}^\alpha \end{align*} を作用積分の中身に選びます。 作用積分の形を決定する さて、定数部分は$c_g$とおいて、重力場による作用積分$S_g$は \begin{align} S_g\stackrel{?}{=}c_g\int R d^4x \label{eq:1} \end{align} としたいのですが、一般相対性原理より導かれる方程式が座標によらないものであってほし

相対性理論⑫ リッチテンソル・スカラー曲率

リッチテンソルとスカラー曲率の定義 リーマンテンソルからリッチテンソルとスカラー曲率を導くことができます。 リッチテンソルの定義 リッチテンソル$R_{\mu\nu}$ \begin{align*} R_{\mu\nu}={R_{\mu\alpha\nu}}^\alpha \end{align*} リーマン曲率テンソルの添え字の2つを使って縮約を取っただけです。直感的な意味をつかむことが難しいです。 スカラー曲率の定義 スカラー曲率$R$ \begin{align*} R=g^{\mu\nu}R_{\mu\nu} \end{align*} スカラー曲率はリッチテンソルに計量テンソルを作用させて添え字をつぶしただけですね。 リッチテンソルの具体的表示 リーマン曲率テンソルは前回までの記事で以下のようにあらわされたのでした。 リーマン曲率テンソルの具体的な表示 \begin{align*} {R_{abc}}^d=\partial_b{\Gamma^d}_{ca}-\partial_a{\Gamma^d}_{cb}+{\Gamma^d}_{\lambda b}{\Gamma^\lambda}_{ca}-{\Gamma^d}_{\lambda a}{\Gamma^\lambda}_{cb} \end{align*} さて、では、添え字を変えて和を計算します。 \begin{align} {R_{\mu\alpha\nu}}^\alpha &=\partial_\alpha {\Gamma^\alpha}_{\nu\mu}-\partial_{\mu}{\Gamma^\alpha}_{\alpha\nu}+{\Gamma^\alpha}_{\lambda \alpha}{\Gamma^\lambda}_{\nu\mu}-{\Gamma^\alpha}_{\lambda \mu}{\Gamma^\lambda}_{\nu\alpha} \label{eq:1} \end{align} クリストッフェル記号の性質 \begin{align*} {\Gamma^\alpha}_{\mu\nu}={\Gamma^\alpha}_{\nu

相対性理論⑪ リーマン曲率テンソル

リーマン曲率テンソルとは 共変微分とは曲がった座標の基底ベクトルに対してされる微分で、非可換です。曲がっていないユークリッド空間であれば、微分は基本的には交換します。よって 共変微分の交換関係を新たに「曲がり具合」として定義 してやりましょう。 リーマン曲率テンソルの定義 リーマン曲率テンソル${R_{abc}}^d$ $a$成分に沿った共変微分$\nabla_a$に対して、 \begin{align} (\nabla_a\nabla_b-\nabla_b\nabla_a)T^d=-{R_{abc}}^d T^c \label{eq:1} \end{align} となります。さて、左辺を計算して曲率テンソルの具体的な成分を導出します。 共変微分を計算する 前回までの記事内容になりますが、共変微分とはそもそも以下のようにできたのでした。 \begin{align*} \nabla_b T^d=\partial_b T^d+{\Gamma^d}_{\rho b}T^\rho \end{align*} さて、これをさらに$a$方向に共変微分すると、 \begin{align} &\nabla_a\nabla_b T^d \nonumber \\ &=\partial_a(\partial_b T^d+{\Gamma^d}_{\rho b}T^\rho)+{\Gamma^d}_{\lambda a}(\partial_b T^\lambda+{\Gamma^\lambda}_{\rho b}T^\rho) \nonumber \\ &=\partial_a\partial_b T^d+\partial_a({\Gamma^d}_{\rho b})T^\rho+{\Gamma^d}_{\rho b}\partial_a T^\rho+{\Gamma^d}_{\lambda a}\partial_bT^\lambda+{\Gamma^d}_{\lambda a}{\Gamma^\lambda}_{\rho b}T^\rho \label{eq:2} \end{align} さて、\eqref{eq:1}の左辺第二項は\eqref{eq:2}

相対性理論⑧ クリストッフェル記号と計量テンソル

クリストッフェル記号と計量テンソル 計量テンソルの定義について この記事を書くにあたって、計量テンソルの負を空間か時間かどちらにつけるか迷いました。相対論的量子力学のほうでは空間成分に負を、一般相対論では時間成分に負を付けることが多いのですが、相対論的量子力学のほうで空間成分に負を付けていたので...統一しようかな...とか考えましたが...まあ、一般相対論の記事なので時間に負を付けることにします。 計量テンソルの意味 計量テンソル 計量テンソルを$g_{\mu\nu}$は \begin{align*} ds^2=g_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu \end{align*} となるもので、特に局所慣性系では、 \begin{align*} g_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu}=\text{diag}{(-1,1,1,1)} \end{align*} であり、定義より明らかに \begin{align*} g_{\mu\nu}=g_{\nu\mu} \end{align*} が成り立ちます。 つまり、時空の歪み、重力が計量テンソルに現れます。歪みがないときには特殊相対論でやったような議論に帰着できます。 クリストッフェル記号 これが「定義」というわけではないですが、このような表式になるので、先に紹介しておきます。 クリストッフェル記号 \begin{align} {\Gamma^\lambda}_{\mu\nu}=\dfrac{1}{2}g^{\lambda\alpha}\left(\partial_\nu g_{\alpha\mu}+\partial_\mu g_{\alpha\nu}-\partial_\alpha g_{\mu\nu}\right) \label{eq:1} \end{align} 縮約を取っていますので注意してください。さて、前回の記事では測地線方程式を紹介しましたが、そこにクリストッフェル記号が登場していました。ただし、$\{X^\alpha\}$は局所慣性系です。 \begin{align*} \dfrac{d^2x^\lambda}{d\tau^2}&+{\Gamma^\l

相対性理論⑩ 下付き添え字・テンソルの共変微分

下付き添え字の共変微分の導出 一般相対性理論では曲がった時空間を扱うため共変微分という操作が必要でした。前回は反変ベクトル(上付きの添え字)に対して定義したので、今回は下付きの添え字(共変ベクトル)に対して定義したのちに、テンソルの共変微分を紹介します。 スカラー量の共変微分は? スカラー量は 基底によらない値 なので、共変微分は普通の微分にすぐに置き換えることができます。 \begin{align} \nabla_\rho f=\partial_\rho f \label{eq:1} \end{align} 上付き添え字の共変微分 次に上付き添え字の共変微分についてです。前回の記事で以下の式を紹介しました。 \begin{align} \nabla_\rho u^\mu(\xi)=\partial_\rho u^\mu(\xi)+\Gamma^\mu_{\ \rho\alpha}(\xi)u^\alpha(\xi) \label{eq:2} \end{align} この式と先ほどのスカラーの共変微分が普通の微分に変えられることを用いて下付き添え字に関しても共変微分を導きます。 下付き添え字の共変微分 上付きの$u^\mu$と下付きの$v_\mu$という量を考えます。 \begin{align*} u^\mu v_\mu \end{align*} はスカラーとなります。これを共変微分します。共変微分にライプニッツ則(積の微分法)が成り立つことを要請したので、 \begin{align} \nabla_\rho (u^\mu v_\mu) &=(\nabla_\rho u^\mu)v_\mu+u^\mu(\nabla_\rho v_\mu) \nonumber \\ &=(\partial_\rho u^\mu+\Gamma^\mu_{\ \alpha\rho}u^\alpha)v_\mu+u^\mu(\nabla_\rho v_\mu) \label{eq:3} \end{align} また、左辺はスカラーなので、 \begin{align} \nabla_\rho(u^\mu v_\mu) &=\partial_\rho(u^\mu v_

相対性理論⑨ 上付き添え字の共変微分

共変微分・接続係数とは? 一般相対性理論では曲がった空間を扱っているので通常の微分が正しく定義できないということが起こります。その対処には基底ベクトルまで含めて考える必要がありまして... 共変微分とはどのようなときに用いるのか 一般相対性理論では曲がった時空間を考えています。つまり、座標の基底ベクトルが一定ではないということがいえます。 つまり、従来のようなユークリッド空間を前提とした微分の定義では計算ができなくなっています。 というわけで新たな微分の定義を用意します。 ベクトルと座標の関係 ベクトル$\boldsymbol{u}$というのは \begin{align} \boldsymbol{u}=u^\mu \boldsymbol{e}_\mu \label{eq:1} \end{align} というように、基底に依存して展開されるものになります。ただ、物理量を表すベクトルは座標に依存しないですが、一般の教科書では$u^\mu$というように基底と切り離しているので共変微分の意味がよくわからなくなっていますが、この基底ベクトルも含めれば導出が可能になります。 共変微分の形 共変微分(の意味) パラメータ$\xi$で表される曲線上の点$P(\xi)$と$Q(\xi+\varepsilon)$を考えます。基底$\boldsymbol{e}_\rho$方向の共変微分を以下のように定義します。ただし、$u^\mu_{Q\to P}$は点$Q$から点$P$に曲線に沿って平行移動したものです。 \begin{align} \nabla_\rho \boldsymbol{u} \stackrel{def}{=}\lim_{\varepsilon\to 0}\dfrac{\boldsymbol{u}_{Q\to P}(\xi+\varepsilon)-\boldsymbol{u}(\xi)}{\varepsilon t^\rho} \label{eq:2} \end{align} ここで注意したいのが、右辺分子内第一項です。 一般相対性理論では曲がった時空を扱うために位置によって基底ベクトルが違います。 ゆえに点$Q$の$u^\mu(\xi+\varepsilon)$を平行移動させて、点$P$での基

相対性理論⑦ 測地線方程式

測地線方程式の導出とクリストッフェル記号 測地線方程式というのは曲がった空間での運動方程式みたいなものです。 測地線方程式の導出 測地線方程式 局所慣性系を$\{X^\alpha\}$として、一般の座標系$\{x^\alpha\}$中で以下の関係が成り立ちます。 \begin{align*} \dfrac{d^2x^\mu}{d\tau^2}+\dfrac{\partial^2 X^\nu}{\partial x^\lambda \partial x^\rho}\dfrac{\partial x^\mu}{\partial X^\nu}\dfrac{dx^\lambda}{d\tau}\dfrac{dx^\rho}{d\tau}=0 \end{align*} 導出の方針 最初に等価原理から局所慣性系を考えましょう。その局所慣性系での微分をチェーンルールを使って一般座標系に関する方程式に直していきます。 重力を打ち消した局所慣性系 等価原理から重力を打ち消した局所慣性系を考えることができます。この系を$\{X^\alpha\}$ で表すと、 \begin{align*} \dfrac{d^2 X^\alpha}{d \tau^2}=0 \end{align*} 一般座標系の微分項に直していく とはいえ、局所慣性系だけで考えていても非実用的なので、一般の座標系$\{x^\alpha\}$を考えることにします。 \begin{align*} (\text{左辺}) &=\dfrac{d}{d\tau}\left(\dfrac{dX^\alpha}{d\tau}\right) \\ &=\dfrac{d}{d\tau}\left(\dfrac{dx^\beta}{d\tau}\dfrac{\partial X^\alpha}{\partial x^\beta}\right)\\ &=\dfrac{d^2x^\beta}{d\tau^2}\dfrac{\partial X^\alpha}{\partial x^\beta}+\dfrac{dx^\beta}{d\tau}\dfrac{d}{d\tau}\left(\dfrac{\partial X^\alpha}{\pa

相対性理論⑥ 一般相対性理論の原理

一般相対性理論の原理とは? 今回は原理だけなので手短に書きます... 等価原理 等価原理 重力は同じ加速度での観測者から見れば力は打ち消せる つまり、局所的に(ある系では)重力がはたらかない系を考えることができます。このためには慣性質量と重力質量が等しい必要があるので、そのように書いてあることが多いですが... 一般相対性原理 一般相対性原理 物理法則は任意の座標系で不変 これは物理法則は任意の慣性系で不変としていた、特殊相対性原理を拡張させただけのものです。 [ 前の記事へ ] [ 次の記事へ ]

相対性理論⑤ 速度の合成則とラピディティ

速度の合成則の導出 特殊相対論的にはどの系から見ても光速度を超えることが禁止になります。では、光速度に近い速さで2物体が互い逆向きに運動すれば片方から見て光速度を超えるのか?という懸念が生まれます。 速度の合成則の式 速度の合成則 系$S$から見て、$x$軸方向に一定の速度$v_1$で運動する系$S_1$、系$S_1$から見て$x$軸方向に速度$v_2$で運動する系$S_2$について、系$S$から見た系$S_2$の速度$v$は以下のようになります。 \begin{align*} v=\dfrac{v_1+v_2}{1+\frac{v_1v_2}{c^2}} \end{align*} ローレンツ変換の復習 今回も観測者がいる系$S(t,x,y,z)$とその系に対して$x$軸方向に一定の速さ$v$で運動する系$S^\prime(t^\prime,x^\prime,y^\prime,z^\prime)$を考えます。このとき両系には \begin{align*} \begin{pmatrix} ct^\prime \\ x^\prime \\ y^\prime \\ z^\prime \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \gamma & -\beta\gamma & 0 & 0\\ -\beta\gamma & \gamma & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 0\\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ct \\ x \\ y \\ z \end{pmatrix} \end{align*} という関係がありました。ただし、$\gamma$はローレンツ因子で、 \begin{align*} \gamma&=\dfrac{1}{\sqrt{1-\beta^2}} \\ \beta&=\dfrac{v}{c} \end{align*} でした。以下、$v_i$に対応する$\beta$,$\gamma$をそれぞれ$\beta_i

相対性理論④ ローレンツ収縮

ローレンツ収縮とは 動いている物体の長さは縮んで見えることが理論的に導かれています。これをローレンツ収縮といいますが、これを特殊相対性理論から導出します。 ローレンツ変換・ローレンツ因子の確認 今回も観測者がいる系$S(t,x,y,z)$とその系に対して$x$軸方向に一定の速さ$v$で運動する系$S^\prime(t^\prime,x^\prime,y^\prime,z^\prime)$を考えます。このとき両系には \begin{align*} \begin{pmatrix} ct^\prime \\ x^\prime \\ y^\prime \\ z^\prime \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \gamma & -\beta\gamma & 0 & 0\\ -\beta\gamma & \gamma & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 0\\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ct \\ x \\ y \\ z \end{pmatrix} \end{align*} という関係がありました。ただし、$\gamma$はローレンツ因子で、 \begin{align*} \gamma&=\dfrac{1}{\sqrt{1-\beta^2}} \\ \beta&=\dfrac{v}{c} \end{align*} でした。 $x^\prime$にだけ注目すると、 \begin{align*} x^\prime=(-\beta ct +x)\gamma \end{align*} となります。 両系の座標の差をとる ここで、系$S^\prime$の座標系で静止している物体(系$S$から見ると$x$軸方向に速さ$v$で運動している物体)を考えます。 位置$x^\prime_1$から$x^\prime_2$まで伸びる物体、つまり、長さ$(x^\prime_2-x^\prime_1)$の物体を系$S^\prime$で観測しま

相対性理論③ 特殊相対性理論・相対論的エネルギーの導出

相対論的エネルギーを導出する 相対性理論では質量の存在自身がエネルギーになるということが導けます。 相対論的エネルギーの式の内容と意味 相対論的エネルギー 静止質量$m_0$と運動量$p$に対して、 \begin{align*} E^2&=m_0^2c^4+p^2c^2 \\ E&=\gamma m_0c^2 \end{align*} さて、1つ目の式から早速意味深ですが2乗になっています。これは導出の途中でそうなってしまっただけで、負のエネルギーになるとどこまでも低いエネルギーがとれることになり、安定状態が存在しなくなるので、矛盾が生じます。というわけで捨ててしまっていいのですが、相対論的量子力学になると負のエネルギー問題もあって...いまのところは捨てることにします。 相対論的な運動方程式 Newtonの運動方程式は以下のようなものでした。 \begin{align*} m\dfrac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2}=m\dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt}=\boldsymbol{F} \end{align*} さて、これを用いて、$f^\mu$を以下のように定めます。 \begin{align*} m_0\dfrac{dv^\mu}{dt}=\dfrac{dp^\mu}{dt}=f^\mu \end{align*} まず、この式の表式を求めましょう。簡単のために速度は$x$軸方向に$V$として、区別するために4元速度は$v^\mu$のままで計算します。 \begin{align*} f^\mu &=\dfrac{d}{dt}(\gamma m_0 v^\mu) \\ &=m_0 \dfrac{d\gamma}{dt}v^\mu+m_0 \gamma \dfrac{dv^\mu}{dt} \\ \end{align*} さて、ここで、 \begin{align*} \dfrac{d\gamma}{dt} &=\dfrac{d\beta}{dt}\dfrac{d}{d\beta}\left(\dfrac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}\right) \\ &=\

相対性理論② 特殊相対性理論・ミンコフスキー時空間

ミンコフスキー時空間とは? 座標と時間を混ぜ合わせてローレンツ変換という変換を導入しましたが、ここではその4次元空間を扱う方法を考えることにします。 計量テンソルと線素を導入する 時空間、つまり時間と3次元の空間を合わせた4次元の世界を考えます。$O(x,y,z,t)$系と$O^\prime(x^\prime,y^\prime,z^\prime,t^\prime)$を考えます。光速度不変の原理より、 \begin{align*} dx^2+dy^2+dz^2&=c^2 \ dt\\ d{x^\prime}^2+d{y^\prime}^2+d{z^\prime}^2&=c^2 \ d{t^\prime}^2 \end{align*} となります。つまり、各系で光速度は同じ$c$で、光が発せられて$dt$後には、半径$c^2\ dt^2$の球面の位置まで到達していて、それは$O$系も$O^\prime$系も同じということです。この式を利用して、線素dsを以下のように定義します。 線素の定義 \begin{align*} ds^{2}=c^2\ dt^2-dx^2-dy^2-dz^2 \end{align*} ただし、負を時間成分にして空間成分を正にするという定義もありますが、最初に示した球面の式を考えれば、どちらを採用しても同じことでしょう。 ここで、 計量テンソル(ミンコフスキー計量) を以下のように定義します。 \begin{align*} \eta_{\mu\nu}= \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0\\ 0 & -1& 0 & 0\\ 0 & 0 & -1& 0\\ 0 & 0 & 0 & -1 \end{pmatrix} \end{align*} $\mu,\nu$が$0,1,2,3$をそれぞれ動くとして、$ct=x^{0},x=x^{1},y=x^{2},z=x^{3}$と番号を振ります。すなわち以下のように表せます。 \begin{align*} \begin{pmatrix} x^{0}\\ x^{1}\\ x^{2}\

相対性理論① 特殊相対性理論・ローレンツ変換

ローレンツ変換と光速度の関係 光速度がどの系から見ても一定という原理を使ってローレンツ変換というものを考えます。光速度を超える物体の運動が許されないという条件はこの導出に含まれています。 基本となる2つの原理 二つの重要な原理が存在します 光速度不変の原理 光源や観測者の速度によらず光速度は一定 特殊相対性原理 物理法則は慣性系では不変(同じ公式が成り立っている) 光速度不変の原理はそのまま受け入れていただくことにして、特殊相対性原理について以下のガリレイ変換の例で示します。 ガリレイ変換で特殊相対性原理で不変 基準となるような$O$系$(t,x,y,z)$と$O$系に対して$x$軸方向に等速度$v$で運動する$O'$系$(t',x',y',z')$を考えます。 この二つの系の各軸は同じ方向になっている、$t=t'=0$で原点一致として、 \begin{align*} t'&=t\\ x'&=x-vt\\ y'&=y\\ z'&=z \end{align*} という関係が成り立ちます。今、慣性系を考えています。慣性系は物体は絶対的に静止している、または等速運動をしていることになります。つまり、加速度は零なので両系での物体にはたらく外力は、$\boldsymbol{F}$$=$$\boldsymbol{F^\prime}$で$O$,$O^\prime$の両系で物体にはたらく力は等しくなります。また、位置を表すベクトル$\boldsymbol{r}$,$\boldsymbol{r^\prime}$についても$x^\prime$を$t^\prime$で2階微分すれば、結局、時刻を含む項は消えて、 \begin{align*} m\dfrac{d^2\boldsymbol{r^\prime}}{d{t^\prime}^2}=m\dfrac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2} \end{align*} つまり特殊相対性原理を満たしているわけです。 ただこの方法ではMaxwell方程式は不変にはならず、特殊相対性原理に反することになります。というわけでここで新たに用意するのがローレンツ変