フーリエ解析⑥ ラプラス変換 ブロムウィッチ積分 このエントリーをはてなブックマークに追加

ラプラス変換とは?その公式

今までの記事で、フーリエ変換については書いていましたが、収束条件などでフーリエ変換には制約があります。そこで、ラプラス変換というものを導入します。

(参考:フーリエ変換)

ラプラス変換の定義とは?

ラプラス変換
関数$f(t)(t\geq 0)$のラプラス変換は以下のように定義されます。
\begin{align*} F(s)=\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt \end{align*}
これはフーリエ変換の定義
\begin{align*}F(\omega)=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-i\omega x}dx\end{align*}
ととても似ていることがわかるでしょうか。ラプラス変換はフーリエ変換に由来しています。ところで、フーリエ変換はもとの関数に戻すことができました。つまり、
\begin{align*}f(t)&=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}F(\omega)e^{i\omega t}d\omega\\ &=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-i\omega t}\right)e^{i\omega t}d\omega \end{align*}
となるのでした。ラプラス変換にもこのように逆変換ができれば変換として実用的でしょう。関数$f(t)$のフーリエ変換を$F(\omega)$として、
\begin{align*}f(t)&=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty F(\omega)e^{i\omega t}dt\\ &=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-i\omega t}dt\right)e^{i\omega t}d\omega \end{align*}

フーリエ変換・ラプラス変換の収束条件

ここで、フーリエ変換ができる条件を思い出してみましょう。つまり、
\begin{align*}\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-i\omega t}dt\end{align*}
が収束する条件はどのような条件でしょうか。それは絶対可積分であることです。つまり、
\begin{align*}\int_{-\infty}^{\infty}|f(t)e^{-i\omega t}|dt=\int_{-\infty}^{\infty}|f(t)|dt\lt \infty\end{align*}
であることです。しかしこれは大変厳しい条件であることがわかるでしょうか。たとえば定数関数$f(t)=1$なんてフーリエ変換できないのは明らかです。そこで以下のような形に変形してみましょう。
\begin{align*}f(t)=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-(c+i\omega)t}dt\right)e^{(c+i\omega) t}d\omega\end{align*}
ただし、$c\gt 0$とします。ここで、一番最初に述べておいた条件として、$f(t)$は$t\gt 0$でのみ定義していました。そこで、$t\lt 0$で$f(t)=0$と定義しましょう。このとき、
\begin{align*} f(t)&=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-(c+i\omega)t}dt\right)e^{(c+i\omega) t}d\omega\\ &=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-(c+i\omega)t}dt\right)e^{(c+i\omega) t}d\omega\end{align*}
ここで、括弧内の積分について絶対可積分である条件を調べてみれば、
\begin{align*}\int_{0}^{\infty}|f(t)e^{-(c+i\omega)t}|dt\lt \infty\end{align*}
オイラーの公式を考えれば、
\begin{align*}|e^{i\theta}|=1\end{align*}
なので、この式は
\begin{align*}\int_{0}^{\infty}|f(t)e^{-ct}|dt\lt \infty\end{align*}
と言い換えることができます。


フーリエ変換からの導出・ブロムウィッチ積分とは

ブロムウィッチ積分
関数$f(t)(t\geq 0)$のラプラス変換$F(s)$から元の関数を導く式は
\begin{align*} f(t)=\dfrac{1}{2\pi}\int_{c-i\infty}^{c+i\infty} F(s)e^{st}ds \end{align*}
であり、これをブロムウィッチ積分といいます。
いま、$c\gt 0$を考えていたので被積分関数は$t\to\infty$で多くの関数$f(t)$が0に収束するのではないでしょうか。つまり、より変換しやすい形の変換ができたということです。 ここで、$s=c+i\omega$とすると、
\begin{align*}F(s)=\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\end{align*}
となり、
\begin{align*}f(t)&=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty \left(\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\right)e^{(c+i\omega)t}d\omega\\ &=\dfrac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}F(c+i\omega)e^{(c+j\omega)t}d\omega\\ &=\dfrac{1}{2\pi}\int_{c-i\infty}^{c+i\infty}F(s)e^{st}ds \end{align*}
この最後の積分は複素積分であり、この積分をブロムウィッチ積分(Bromwich)といい、逆ラプラス変換の公式です。ただし、この逆ラプラス変換は非常に繁雑な計算になりあまり実用的ではないですがね...

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