偏微分方程式⑦ グリーン関数法 このエントリーをはてなブックマークに追加

グリーン関数とは?フーリエ変換との関係

グリーン関数とは微分作用素$\mathcal{D}$を考えます.このとき,以下の微分方程式
\begin{align} \mathcal{D}\psi=-f(x) \label{pde7eq:1} \end{align}
を考えます.このとき,
\begin{align} \mathcal{D}G(x-y)=-\delta(x-y) \label{eq:2} \end{align}
を満たす関数$G$をグリーン関数といいます.と,その前に前提となる知識を紹介しておきます.

畳み込み(Convolution)積分の定義と性質

\begin{align} f*g\stackrel{def}{=}\int_{-\infty}^\infty f(x-y)g(y)dy \end{align}
という式を畳み込み積分といいます.余談ですが,畳み込み積分のフーリエ変換は互いのフーリエ変換の積になります.つまり,
\begin{align} \mathcal{F}[f*g]=\mathcal{F}[f]\mathcal{F}[g] \end{align}
ということです.ちなみに逆に
\begin{align} \mathcal{F}^{-1}(\mathcal{F}[f]*\mathcal{F}[g])=fg \end{align}
も成り立ちます.

デルタ関数の性質

デルタ関数とは,引数が0のときのみ無限大で,他のときは0という関数でした.ただし,
\begin{align} \int_{-\infty}^\infty \delta(x)dx=1 \end{align}
となっています.ちょっと怪しい条件なので...嫌われている条件でもあります.そして,デルタ関数の畳み込み積分を計算すると,
\begin{align} \int_{-\infty}^{\infty} f(x-y)\delta(y)dy=f(x) \label{eq:7} \end{align}
というようにデルタ関数の引数が0になるときの他方の関数の値がそのまま出てきます.

グリーン関数法について詳しく調べてみる

さて,グリーン関数とは以下の式を満たす$G$でした.
\begin{align} \mathcal{D}G(x,y)=-\delta(x-y) \tag{\ref{eq:2}} \end{align}
ただし,この微分作用素は
\begin{align} \mathcal{D}\psi=-f(x) \end{align}
という元々の微分方程式由来でした.さて,\eqref{eq:2}の辺々に$f(y)$をかけます.$f(y)$は$x$の関数ではないので,微分作用素$\mathcal{D}$には影響されません.というわけで,微分作用素の中に入れましょう.
\begin{align} \mathcal{D}f(y)G(x,y)=-\delta(x-y)f(y) \end{align}
この辺々を$y$で積分してみましょう.\eqref{eq:7}より,
\begin{align} \int_{-\infty}^\infty \mathcal{D}f(y)G(x,y)dy=-\int_{-\infty}^\infty \delta(x-y)f(y)dy=-f(x) \end{align}
さて,先ほどもあったように微分作用素$\mathcal{D}$は元々の方程式にあった$x$の微分のみを含み,$y$の関数にはかかりませんでした.つまり,$y$の積分と微分作用素$\mathcal{D}$はやはり入れ替え可能で,
\begin{align} \mathcal{D}\int_{-\infty}^\infty f(y)G(x-y)dy=-f(x) \end{align}
元々の微分方程式は,
\begin{align} \mathcal{D}\psi=-f(x) \tag{\ref{pde7eq:1}} \end{align}
だったので,
\begin{align} \psi=\int_{-\infty}^\infty f(y)G(x-y)dy=f*G \label{eq:12} \end{align}
ということになります.これがまさに求めたかった解ですね.つまり,グリーン関数を求められれば解が畳み込みで計算できそうです.

実際にグリーン関数を求めてみる

何度も書きますが,グリーン関数は
\begin{align} \mathcal{D}G(x,y)=-\delta(x-y) \tag{\ref{eq:2}} \end{align}
でした.この$G$を求めたいのですが...こんな時に役立つのがフーリエ変換ですね.微分というのはフーリエ変換すれば簡単になります.たとえば,$x\to k$のように波数空間にうつすフーリエ変換だと考えれば,
\begin{align} \mathcal{F}\left[\dfrac{\partial \psi}{\partial x}\right]=ik\mathcal{F}[\psi] \end{align}
というように微分を除いた関数に変換先の文字(今回でいえば波数$k$)と虚数単位をかけたものになります.というわけで,\eqref{eq:2}は微分を含んでいても割と簡単にフーリエ変換できそうです.

さらにデルタ関数のフーリエ変換は簡単で,先頭につく定数は定義によって異なるので考えない(1にする)ことにすれば,
\begin{align} \mathcal{F}[\delta(x-y)]=\int_{-\infty}^\infty \delta(x-y)e^{-ikx}dx=e^{-iky} \end{align}
となります.つまり,$\mathcal{F}[\mathcal{D}G(x-y)]=\mathcal{D}^\prime (k)\mathcal{F}[G(x-y)]$とすれば,
\begin{align} \mathcal{D}^\prime(k)\mathcal{F}[G(x-y)]=-e^{-iky} \end{align}
この式から$\mathcal{F}[G(x-y)]$を求めて,逆変換すれば,グリーン関数が求まるでしょう.そして最後に,\eqref{eq:12}を利用すれば,元の解が求まりますね.だた,偏微分方程式では複数の変数を含んでいるので,$\mathcal{D}^\prime(k)$は,$x$以外の微分項などを含んでいる可能性もあります.が、そうなってくると計算できなくなるかも…

グリーン関数法が役立つ方程式とは?

ラプラス方程式やポアソン方程式のような座標しか含まないような方程式だけど,複数の次元で解きにくい…って時に有効なことが多いです. そのポアソン方程式から導かれる代表的な例がクーロンの法則です.クーロンの法則の記事にクーロンの法則をマクスウェル方程式から導出する方法を載せています.気になったらぜひ.
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