場の量子論⑥ 4元マクスウェル方程式の解 このエントリーをはてなブックマークに追加

真空の電磁場のマクスウェル方程式

4元マクスウェル方程式ですが、これをローレンツゲージの下で解いてみましょう。

真空中のマクスウェル方程式

真空として4元電流密度を0とする

ベクトルポテンシャルをもちいたマクスウェル方程式は
\begin{align*} \partial_\mu F^{\mu\nu}=\mu j^\nu \end{align*}
となります。ここで、真空を考えましょう。電荷も電流もない状態、つまり、$\rho=0$,$\boldsymbol{j}=\boldsymbol{0}$となるので、$j^\mu=0$として、
\begin{align*} \partial_\mu F^{\mu\nu}=0 \end{align*}
となります。ベクトルポテンシャルを用いて書くと、
\begin{align*} \partial_\mu\partial^\mu A^\nu-\partial^\nu\partial_\mu A^\mu=0 \end{align*}
ここで、ローレンツゲージ$\partial_\mu A^\mu$$=0$を課してみます。ローレンツ条件の下ではMaxwell方程式は以下のようになります。
\begin{align*} \partial_\mu\partial^\mu A^\nu=0 \end{align*}
この式の微分項を書き換えると以下の様になります。
\begin{align*} \left(\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial^2}{\partial t^2}-\nabla^2\right)A^\nu=0 \end{align*}
これは波動方程式なので、波動方程式の解を知っているならそれを用いればいいのですが、以下では正面から解いてみます。

波動方程式をフーリエ変換する

でてきた微分方程式を解くためにフーリエ変換を行います。$\nabla\to$$i\boldsymbol{k}$として、
\begin{align*} \left(\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial^2}{\partial t^2}+\|\boldsymbol{k}\|^2\right)\mathcal{A}^\nu=0 \end{align*}
$\omega_k=c\|\boldsymbol{k}\|$とおいて、移項すると、以下のようになります。
\begin{align*} \dfrac{\partial^2}{\partial t^2}\mathcal{A}^\nu=-\omega_k^2\mathcal{A}^\nu \end{align*}
単振動の式なので、以下のように解が表せます。
\begin{align*} \mathcal{A}^\nu=C^\nu_k e^{-i\omega_k t}+D^\nu_ke^{i\omega_k t} \end{align*}
ここで、上につけた$\nu$はベクトルの添え字で、下につけた$k$は$k$への依存($k$の関数ということ)を示すための添え字です。逆変換してみると、
\begin{align*} A^\nu=\int d^3k\left(C^\nu_ke^{-i\omega_kt}+D^\nu_ke^{i\omega_kt}\right)e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{x}} \end{align*}
Klein-Gordon方程式の記事でやったのと同様に、第二項の$\boldsymbol{k}$の符号を反転させることができて、
\begin{align*} A^\nu = \int d^3k\left(C^\nu_ke^{-ikx}+D^\nu_k e^{ikx}\right) \end{align*}
となります。さらに、電磁場が実という条件を課します。複素共役を取った式
\begin{align*} {A^*}^\nu=\int d^3k\left({C^*_k}^\nu e^{ikx}+{D^*_k}^\nu e^{-ikx}\right) \end{align*}
と元の式が等しくなるようにすると、${D^*_k}^\nu$$={C^*_k}$なので、
\begin{align*} A^\nu=\int d^3k \left(C^\nu_k e^{-ikx}+{C^*_k}^\nu e^{ikx}\right) \end{align*}
となります。

他の成分からの影響を考慮

今用いている$C^\nu_k$という項について考えてみましょう。今考えている$A^\nu$はベクトルなので、例えば$x$成分を考えたかったら、ほかの空間成分と時間成分からの影響を考えるべきでしょう。よって、実単位ベクトル$\boldsymbol{e}^\nu_{k\lambda}$をもちいて、
\begin{align*} C^\nu_k=\sum_{\lambda=0}^3 \boldsymbol{e}^\nu_{k\lambda}a_{k\lambda} \end{align*}
と表せるでしょう。ここで注意したいのが、$\nu$はベクトルを表す添え字ですが、$k$は波数依存を表す添え字、$\lambda$はすべての成分からの影響を加味したくて、0~3まで和を取るために付け加えた単なるパラメータであると考えてみると式の意味が分かりやすいでしょう。つまり、以下のようになります。
\begin{align*} A^\nu=\int d^3k \sum_{\lambda=0}^3\boldsymbol{e}^\nu_{k\lambda}\left(a_{k\lambda}e^{-ikx}+a^*_{k\lambda}e^{ikx}\right) \end{align*}




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