微分積分⑧ 2変数関数の極限 このエントリーをはてなブックマークに追加

2変数関数の極限の求め方とは?・例題

\begin{align*} \displaystyle \lim_{(x,y)\to(0,0)}\dfrac{x^{2}y^{2}}{x^{4}+y^{4}} \end{align*}
実はこの極限は存在しません。このことを数学的にきっちり示すことを考えて、もし極限が存在するならばその値の求め方も考えましょう。

極限が存在しないことを簡単に証明する

多変数関数の極限で大事なのは、近づき方によらず収束するときに極限が存在するということです。

上の極限が存在しないことを説明します。

たとえば、$y=mx$という直線に沿って$(0,0)$に近づけるとします。
\begin{align*}\displaystyle \lim_{(x,y)\to(0,0)}\dfrac{x^{2}y^{2}}{x^{4}+y^{4}}=\lim_{(x,y)\to(0,0)}\dfrac{m^{2}x^{4}}{(1+m^{4})x^{4}}=\dfrac{m^{2}}{1+m^{4}}\end{align*}
これ、$m$によって近づく先が異なるので、極限は存在しないことになります。極限が存在しないことは簡単に示せますね。

逆に、極限値が存在する例で極限を求めてみましょう。 どうやるのでしょうか?実は、極座標を用いて計算することになります。

極座標(三角関数)を用いた極限の求め方

\begin{align*}x=r\cos{\theta}\ ,\ y=r\sin{\theta}\end{align*}
このように変換します。($r\geq0$) また、$(x,y)\to(0,0)$というのは$r\to0$で表現できます。これを使って
\begin{align*}\displaystyle \lim_{(x,y)\to(0,0)}\dfrac{x^{2}y}{x^{2}+y^{2}}\end{align*}
を求めてみましょう。
\begin{align*}\displaystyle\lim_{(x,y)\to(0,0)}\dfrac{x^{2}y}{x^{2}+y^{2}}=\lim_{r\to 0}\dfrac{r^{3}\cos^{2}{\theta}\sin{\theta}}{r^{2}(\cos^{2}{\theta}+\sin^{2}{\theta})}=\lim_{r\to 0}r\cos^{2}{\theta}\sin{\theta}\end{align*}
まあ、0になるのはここまでくればわかると思いますがしっかりかけば
\begin{align*}0\lt|r\cos^{2}{\theta}\sin{\theta}|\lt r\to 0\ (r\to0)\end{align*}
これによってはさみうちの原理より極限値が0ということが示されました。

極限がないことの示し方の補足

もちろん、極限が存在しないことを極座標を経由して言うこともできます。

ただ、式変形が煩雑になることが多く、途中で計算ミスして...みたいなことにもなりかねないのでできるだけ簡単に示そう、ということです。ひとつでも反例を上げれば済みなので。

(参考:コーシー・リーマンの方程式)

複素解析・複素関数の内容ですが、多変数関数の極限操作を理解していないとできないものです。内容自体はこの記事の内容がわかっていれば理解しやすいものなのでぜひ。



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