力学② 運動方程式の解法 このエントリーをはてなブックマークに追加

ニュートンの運動方程式を解く。慣性抵抗,粘性抵抗など

微分方程式を力学に応用したいと思います. 前回は結構大雑把に計算をしましたが, 今回は数学的にも丁寧にやろうと思います. 問題を解くうえでの初手はとりあえず運動方程式を立ててみるだということです.

位置、速度、加速度の関係と微分表記

文字の上に点を一つつけて時刻$t$による一階微分,点を二つつけて時刻による二階微分を表します。まず,速度について,
\begin{align*} \boldsymbol{v}=\boldsymbol{x}'=\dfrac{d\boldsymbol{x}}{dt}=\dot{x} \end{align*}
これらは全部同じ意味です. $x$を時刻$t$で一階微分したものということです。 また、加速度について
\begin{align*} \boldsymbol{a}=\boldsymbol{v}'=\dot{\boldsymbol{v}}=\dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt}=\boldsymbol{x}''=\ddot{\boldsymbol{x}}=\dfrac{d^{2}\boldsymbol{x}}{dt^{2}} \end{align*}
$x$の時刻$t$による二階微分、つまり,$v$の時刻$t$による一階微分です。

運動方程式を積分して位置や速度を求める

では、実際に問題を解いていきましょう. 以下、解析する物体の質量を$m$とします.

(1)外力が一定で$f$のとき

また,初期位置を$x_0$,初期速度を$v_0$とします。 変数分離で解く方法も後で説明しているので,授業の解説と見比べている方はそちらもどうぞ。今回の場合の運動方程式は、
\begin{align*}m\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=f\end{align*}
運動方程式を立てたら、$a=\cdots$の形に直しましょう.
\begin{align*}a=\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=\dfrac{f}{m}\end{align*}
こういうわけで加速度が求まりました。 ここから、$v$と$x$を求めましょう。

$a,v,x$はそれぞれ微分、積分の関係にあることを最初にお話ししました。 $v$は$a$を積分したものですから、両辺を積分しましょう。

右辺に文字式があって困惑するかもしれませんが、右辺の文字はただの定数です.(質量$m$, 力$f$で引っ張っているということはもうわかっているんです, ただ具体的に数値を代入するのはしんどいので文字にしているだけです)

両辺を積分すると,
\begin{align*} v=\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{f}{m}t+C \end{align*}
$t=0$で辺々が等しくなるように積分定数を決めます。初期条件の一つ,初速度$v_0$に対して,$C=v_0$となり,積分が決定できます。つまり以下のようになります。
\begin{align*} v=\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{f}{m}t+v_0 \end{align*}
この辺々をもう一回時刻$t$で積分すると、
\begin{align*} x=\dfrac{f}{2m}t^{2}+v_{0}t+x_{0} \end{align*}
ここでも$x_0$は$t=0$で、等式が成り立つような積分定数、初期位置です.

変数分離による微分方程式の解法

変数分離して($~~dx=~~dt$の形にして)積分するように言われている人もいると思うのでここで先ほどと同じことを書きます.

時刻による一階微分を設定する

運動方程式$(\text{式})dt=(\text{式})dx$を直接求めるのは無理なので, まず,運動方程式を$v$で書きなおしましょう。そして$v$を求めて、つづいて$x$を求めます。加速度と速度は以下のような関係にあります。
\begin{align*} a=\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=\dfrac{d}{dt}\left(\frac{dx}{dt}\right)=\frac{dv}{dt} \end{align*}
これを用いて,運動方程式を以下のように書きなおしましょう。
\begin{align*} \dfrac{dv}{dt}=\dfrac{f}{m} \end{align*}
この形で方程式が得られています. 左辺に$dv$と$v$の式、右辺に $dt$と$t$の式を集めます. 今回は, $dv ,\ dt$のほかには定数しかないのでとりあえず右辺にそのままにしときます。
\begin{align*} dv=\dfrac{f}{m}dt \end{align*}
ここで、両辺にインテグラルをつけてやると、
\begin{align*} \displaystyle \int dv=\int \dfrac{f}{m}dt \end{align*}
$\dfrac{f}{m}$は定数ですから、インテグラルの外に出すことができて,
\begin{align*} v=\dfrac{f}{m}t+v_{0} \end{align*}
ここで,$v_{0}$は積分定数を初期条件に合うように決めたものです. もしこの積分定数のつけ方が腑に落ちないなら、定積分にしてやればよいです. 動かす範囲を決めてあげましょう. 時刻0から$t$までの変化が知りたいのです. ちなみにこの時, 速度は$v_{0}$から$v$まで変化しますね。
\begin{align*} \displaystyle \int_{v_{0}}^{v}dv&=\int_{0}^{t}\dfrac{f}{m}dt\\ v-v_{0}&=\dfrac{f}{m}t \\ v&=\dfrac{f}{m}t+v_{0} \end{align*}
このように求められます.

速度と時間の式から座標を求める

次に
\begin{align*} v=\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{f}{m}t+v_{0} \end{align*}
こうすれば、変数分離ができる気がしますね。
\begin{align*} dx=\left(\dfrac{f}{m}t+v_{0}\right)dt \end{align*}
インテグラルをつけて積分すると、
\begin{align*}\displaystyle \int dx=\int \left(\dfrac{f}{m}t+v_{0}\right)dt\end{align*}
\begin{align*}x=\dfrac{f}{2m}t^{2}+v_{0}t+x_{0}\end{align*}
もちろん、このやり方が性に合わないならさっき取り上げたように定積分にしても良いです。

では次の例です。

(2)粘性抵抗が働く場合

 粘性抵抗とは速度の1次の項に比例する運動を妨げる方向に働く力です。
粘性抵抗 比例定数$k$をもちいて
\begin{align*} \boldsymbol{F}=-k\boldsymbol{v} \end{align*}
たとえば、1次元で$t=0$での初速度$0$,初期位置を$x=0$として,で重力を受けながら落下する質点に粘性抵抗がはたらく場合を考えます. このとき運動方程式は, 鉛直下向きを正として,
\begin{align*} m\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=mg-kv \end{align*}
と表せます.($a$は加速度, $g$は重力加速度)今回は働く力が一定ではありません.

速度を求める

加速度$a=\cdots$の形にすると,
\begin{align*} \dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=\dfrac{dv}{dt}=g-\dfrac{k}{m}v \end{align*}
$x$を使わずに$v$の式で表現したのはいきなり二階微分の微分方程式を解くのは難しいからです。 基本的にはこの形で解を求めるのが計算も楽です。

今回の変数は$v$と$t$です.  あとは定数と考えてくださいね. ここで、変数分離のやり方で解くためには$v$の式を左辺にまとめてやる必要があります。 ただ、$( \text{式} )dv= ( \text{式} )dt$の形に帰着させなければいけません。 だから、基本的には両辺に式をかけるかわるかでしか変形ができません。 今回は, 両辺を$(k/m)v-g$でわると,
\begin{align*}\dfrac{1}{\frac{k}{m}v-g}dv=-dt\end{align*}
ここにインテグラルをつけてやると,
\begin{align*}\displaystyle\int \dfrac{1}{\frac{k}{m}v-g}dv=\int -dt\end{align*}
これを計算すると
\begin{align*}\log{\left|\dfrac{k}{m}v-g\right|}=-\dfrac{m}{k}t+C\end{align*}
(左辺右辺の積分定数はまとめて右辺に改めてCとおくことが一般的です.) 今求めたいのは$v$ですから、この式を$v=\cdots$の形に直すと
\begin{align*}v=\dfrac{m}{k}\left(g\pm{e^{-\frac{m}{k}t+C}}\right)=\dfrac{m}{k}\left(g\pm{e^{C}e^{-\frac{m}{k}t}}\right)\end{align*}
ここで、$e^{C}$というのは定数です。 初速度0という条件に合致するようにするには±の符号は-しかありえません。また, $e^{C}$ の値は,$e^{C}=g$となります。つまり、
\begin{align*}v=\dfrac{mg}{k}\left(1-e^{-\frac{m}{k}t}\right)\end{align*}
となり、これが時刻$t$での速度となります。

位置をもとめる

では、さらに位置$x$を調べましょう.
\begin{align*}\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{mg}{k}\left(1-e^{-\frac{m}{k}t}\right)\end{align*}
この微分方程式を解きます. 以下のように変形してみます.
\begin{align*}dx=\dfrac{mg}{k}\left(1-e^{-\frac{m}{k}t}\right)dt\end{align*}
インテグラルをつけると、
\begin{align*}\displaystyle\int dx=\int \dfrac{mg}{k}\left(1-e^{-\frac{m}{k}t}\right)dt\end{align*}
これを計算すると, Cを積分定数として
\begin{align*}x=\dfrac{mg}{k}\left(t+\dfrac{k}{m}e^{-\frac{m}{k}t}\right)+C\end{align*}
となります. では、あとは初期条件から積分定数$C$を決定しましょう. $t=0$で$x=0$なので、
\begin{align*}0=g+C \ \ \ \therefore C=-g\end{align*}
これをもとの方程式に代入すると
\begin{align*}x=\dfrac{mg}{k}t+g\left(e^{-\frac{m}{k}t}-1\right)\end{align*}
となります.

では最後の例です.

(3)慣性抵抗が働く場合

慣性抵抗とは速度$v$の二乗に比例する抵抗力です.
慣性抵抗 比例定数を$k$とします。速度方向の単位ベクトル$\boldsymbol{e}$として,
\begin{align*} \boldsymbol{F}=-k|\boldsymbol{v}|^2\boldsymbol{e} \end{align*}
なめらかな水平面上で水平方向に移動する質点に時刻$t=0$での初速度$v_{0}$, 初期位置$x=0$という初期条件を考えます。この時質点が慣性抵抗を受けるとします. このとき運動方程式は
\begin{align*}m\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=-kv^{2}\end{align*}
$m,k$は定数です. さらにこれを解析しましょう.

速度を求める

これを$v$についての微分方程式にして、辺々を$m$でわって、
\begin{align*}\dfrac{dv}{dt}=-\dfrac{k}{m}v^{2}\end{align*}
ここで、左辺に$v$, 右辺に$t$の関数をまとめると,
\begin{align*}-\dfrac{dv}{v^{2}}=\dfrac{k}{m}dt\end{align*}
インテグラルをつけてやると,
\begin{align*}\displaystyle \int -\dfrac{dv}{v^{2}}=\int \dfrac{k}{m}dt\end{align*}
この式を計算して、積分定数を$C$とすると
\begin{align*}\dfrac{1}{v}=\dfrac{k}{m}t+C\end{align*}
初期条件$t=0$で$v=v_{0}$を適用すると
\begin{align*}C=\dfrac{1}{v_{0}}\end{align*}
となるので、これを代入すると
\begin{align*}\dfrac{1}{v}=\dfrac{k}{m}t+\dfrac{1}{v_{0}}=\dfrac{kv_{0}t+m}{mv_{0}}\end{align*}
つまり、
\begin{align*}v=\dfrac{mv_{0}}{kv_{0}t+m}\end{align*}
こうして速度が求まりました! 一応確認ですが,$t\to\infty$のとき、$v\to\infty$となるので確かにあっていそうですね!

位置を求める

つぎに、位置$x$を求めましょう. 微分方程式の形
\begin{align*}\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{mv_{0}}{kv_{0}t+m}\end{align*}
と、変形して左辺に$x$、右辺に$t$の式を集めると
\begin{align*}dx=\dfrac{mv_{0}}{kv_{0}t+m}dt\end{align*}
(ここで、$x,t$以外は定数です) 辺々にインテグラルをつけると
\begin{align*}\displaystyle\int dx=\int \dfrac{mv_{0}}{kv_{0}t+m}dt\end{align*}
計算すると積分定数を$C$として
\begin{align*}x=\dfrac{m}{k}\log{\left(kv_{0}t+m\right)}+C\end{align*}
初期位置,$t=0$で$x=0$を適用して
\begin{align*}0&=\dfrac{m}{k}\log{\left(m\right)}+C\\ C&=-\dfrac{m}{k}\log{m}\end{align*}
よって元の微分方程式に代入して
\begin{align*}x=\dfrac{m}{k}\log{\left(\dfrac{kv_{0}}{m}t+1\right)}\end{align*}
となり、解が得られました.

ベクトルの運動方程式を考える

前回の記事では運動方程式はベクトルで表記していました。これを解く方法は?というと,各成分ごとにばらばらに考えればよいです。
\begin{align*} \frac{d^2}{dt^2}\begin{pmatrix}x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} f_x \\ f_y \\ f_z \end{pmatrix} \end{align*}
ベクトルの微分というのは各成分をそれぞれ微分するだけですから
\begin{align*} \begin{pmatrix}\frac{d^2x}{dt^2} \\ \frac{d^2y}{dt^2} \\ \frac{d^2z}{dt^2} \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} f_x \\ f_y \\ f_z \end{pmatrix} \end{align*}
となります。これで3つの運動方程式が得られました。これで各方向について運動方程式を解いてあげればOKです。



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