熱力学⑤ クラウジウスの原理(Clausius)・トムソンの原理(Tomson) このエントリーをはてなブックマークに追加

クラウジウスの原理・トムソンの原理と熱力学第二法則

熱力学第二法則の一つの表現であるクラウジウスの原理とトムソンの原理を紹介します。

クラウジウスの原理・トムソンの原理とは?

クラウジウスの原理他に変化を残さずに低熱源から高熱源に熱を移すことはできない
トムソンの原理他に変化を残さずに一つの熱源から熱を取り出して力学的な仕事をすることはできない



これらは等価なものだということを示すことができます。どういうことかというと... クラウジウスの原理を否定すればトムソンの原理に矛盾、トムソンの原理を否定すればクラウジウスの原理に矛盾するという関係が成り立ちます。


トムソンの原理からクラウジウスの原理を導く

「トムソンの原理が成り立つ」$\Rightarrow$「クラウジウスの原理が成り立つ」を示せばよいのですが、この対偶を取ると、「クラウジウスの原理が成り立たない」$\Rightarrow$「トムソンの原理が成り立たない」となるのでこれを示しましょう。


まず、クラウジウスの原理を否定します。つまり、 「他に変化を残さずに低熱源から高熱源に熱を移すことができる」と仮定します。

サイクル$C_1$を高熱源から熱量$Q_A$をとりだし、低熱源に熱量$Q_B$を放出するサイクルとします。この時、外部にする仕事は$Q_A-Q_B$と表されます。いま、クラウジウスの原理を否定しているので、低熱源から高熱源に他に変化を残さずに熱を移すことができます。いま、$Q_B$の熱量を低熱源から高熱源に移すサイクル$C^\prime_1$を組み合わせると、合計として、低熱源の熱収支は0になるので、

高熱源から熱量$Q_A-Q_B$の熱を取り出しそのまま仕事に変え、他に何も変化を残さないという変化が可能になり、これはトムソンの原理に矛盾 します。



クラウジウスの原理からトムソンの原理を導く

先ほどと同様です。トムソンの原理を否定します。このとき、「1つの熱源から外部に変化を残さずに仕事を取り出す」ことを仮定ができます。

低熱源から$Q_B$の熱量を吸収し、仕事$Q_A-Q_B$を受け取って高熱源に熱量$Q_A$を放出する$C_1$の逆サイクル$C_{-1}$を考えましょう。


さらに、サイクル$C^\prime_2$として、高熱源から熱量$Q_A$を受け取りそのまま仕事に変えるサイクル$C^\prime_2$を考えます。(このサイクルはトムソンの原理を否定しているから存在を仮定できています。)ここで、$C_{-1}$と$C^\prime_2$を組み合わせると、合計として、低熱源から$Q_B$を受け取りそのまま仕事に変えることができることになり、これはトムソンの原理と矛盾します。



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