熱力学⑨ エントロピー・エントロピー増大の法則 このエントリーをはてなブックマークに追加

エントロピーとその次元は?

エントロピーとは?

エントロピーという量を以下の式で定義します。$S(A)$は状態Aのエントロピーを表します。
エントロピー
\begin{align} dS&=\dfrac{d^\prime Q}{T} \\ S(A)-S(\text{基準})&=\int_{\text{基準}}^A \frac{d^\prime Q}{T} \end{align}
エントロピーは状態量です。エントロピーは重力による位置エネルギーと同様に基準となる点を決めなければいけません。 また,この式からもわかるようにエントロピーは(エネルギー/温度)という次元を持っています。

エントロピー変化の計算方法

繰り返しますが,エントロピーというのは状態量です。ただし、エネルギーと同様に基準というものを決めてやる必要があります。ここで、前回紹介したクラウジウスの不等式を一般化したもの
\begin{align} \oint\dfrac{d^\prime Q}{T}\leq 0 \end{align}
を考えます。この式が可逆過程であれば等号が成り立つので、左辺は0になります。つまり、一周してもとに戻ってくればどんな経路をたどろうと同じ値に戻ってきます。というわけで、経路によらない、つまり状態量ということができそうです。 エントロピーは、
\begin{align} S(B)-S(A)=\int_A^B \dfrac{d^\prime Q}{T} \end{align}
と計算できるわけですが、積分経路は可逆過程で計算する必要がある、ということです。

エントロピー増大の法則とは?

エントロピー増大の法則 孤立系では、
\begin{align} S(B)-S(A)\geq \int \dfrac{d^\prime Q}{T} \label{eq:2} \end{align}
となるようなA→Bにしか自然に変化が進行しない
この式をクラウジウスの不等式から導いてみます。\eqref{eq:2}式は以下のように変形できます。ただし,$C_1,C_2$は状態$A,B$を結ぶ適当な経路です。
\begin{align} \oint \dfrac{d^\prime Q}{T}=\int_{C_1:A\to B}\dfrac{d^\prime Q}{T}+\int_{C_2:B\to A} \dfrac{d^\prime Q}{T}\leq 0 \end{align}
ここで,、マイナスの符号を逆サイクルにする記号と考えます。つまり,
\begin{align*} \int_{C_2:B\to A}\frac{d^\prime Q}{T}=-\int_{C_2:A\to B}\frac{d^\prime Q}{T} \end{align*} といった具合です。
\begin{align} \int_{C_2:A\to B}\dfrac{d^\prime Q}{T}\geq \int_{C_1:A\to B}\dfrac{d^\prime Q}{T} \label{eq:6} \end{align}
ここで、$C_2$を可逆過程と考えると、可逆過程に沿ったこの積分はエントロピーの変化に等しく
\begin{align} S(B)-S(A)\geq \int_{C_1:A\to B}\dfrac{d^\prime Q}{T} \label{eq:8} \end{align}
\eqref{eq:8}式がエントロピー増大の法則です。

エントロピーの意味とは

統計力学では取りうる状態の数$W$に対して、ボルツマン定数を$k_B$として、
\begin{align} S=k_B \log{W} \end{align}
たとえば,情報理論などでは状態$i$を取る確率を$p_i$として、
\begin{align} S=-k_B \sum_{i}p_i \log{p_i} \end{align}
とも書けます。ちなみにボルツマン定数は次元を合わせるための係数程度に考えればよいです。こんな感じで、取りうる状態数の増加と関係していることから複雑さとか乱雑さと表現されることが多いです。

エンタルピーとの違い

よく混同される単語ですが、全く違う単語です。エンタルピーは,内部エネルギー$U$,圧力$p$,体積$V$に対して,
\begin{align} H=U+pV \end{align}
と定義できる状態量です。間違えないようにしてください。



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