電磁気学④ 電場によるエネルギー密度・コンデンサ このエントリーをはてなブックマークに追加

電場によるエネルギーを求める

電場によるエネルギーを求めましょう。実際,重力によるポテンシャルエネルギーと似た話です。保存力にかかわる話を復習しながら進めていきます。

質点のエネルギー・保存力

質点のエネルギーや保存力に関する話を確認するために重力を考えます。地面を原点として鉛直上向きに$z$軸を取ることにします。このときに質量$m$の質点にはたらく力は$z$軸方向の単位ベクトル$\boldsymbol{e_z}$として,
\begin{align*} \boldsymbol{F}=-mg\boldsymbol{e_z} \end{align*}
と表されます。ここで,基準を$z=0$に取れば$z=h$でのポテンシャルは,
\begin{align*} U&=-\int_{z=0}^h \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{L}\nonumber \\ &=-\int_0^h (-mg) dz\nonumber\\ &=mgh \end{align*}
と求められます。ちなみにこの結果は経路によらず始点と終点のみで決定されるのでした。なぜかといえば,重力は保存力だからです。

保存力の判定法・ストークスの定理

保存力の判定方法
外力$\boldsymbol{F}$が保存力である必要十分条件は
\begin{align} \nabla\times\boldsymbol{F}=\boldsymbol{0} \label{eq:001} \end{align}
ベクトル解析ではストークスの定理
\begin{align*} \int_S (\nabla\times \boldsymbol{F})\cdot \boldsymbol{n}dS=\oint_C \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r} \end{align*}
という関係がありました。ただし、$C$は$S$を囲む閉曲線です。もし右辺が0になれば途中経路によらずに仕事の結果が始点終点のみで決定されるということを意味しています。

左辺が0になっていれば右辺の線積分の結果も0ということになるので,左辺を恒等的に0にするようなのはいつか考えればよいのですが,被積分関数が0になれば確実に0になるでしょう。というわけで,
\begin{align} \nabla\times \boldsymbol{F}=\boldsymbol{0} \tag{\ref{eq:001}} \end{align}
であればその力$\boldsymbol{F}$は保存力だといえます。この判定方法を保存力の判定方法として古典力学の分野で学んだことと思います。

マクスウェル方程式から保存力判定を行う

Maxwell方程式から数式で追っていきます。Maxwell方程式の一つ、ファラデーの式
\begin{align*} \nabla\times \boldsymbol{E}=-\dfrac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t} \end{align*}
という式がありました。実はこの式がものすごく重要で,もし静磁場、つまり、磁束密度の時間変化がなければ右辺が$\boldsymbol{0}$になります。ところで,電場にはたらく力というのは$q\boldsymbol{E}$だったので,辺々に$q$をかけて,
\begin{align*} \nabla\times(q\boldsymbol{E})=\boldsymbol{0} \end{align*}
つまり,電場にはたらく力は静磁場中では保存力ということがわかります。ただし、ローレンツ力の式では速度と磁束密度に依存する項がありました。この項の影響がない場合を考えています。($\boldsymbol{v}=\boldsymbol{0}$または$\boldsymbol{B}=\boldsymbol{0}$)

電位を計算する

電荷$q$をもつ点電荷のポテンシャル
位置$\boldsymbol{r^\prime}$にある点電荷$q$にはたらくポテンシャル$U$は電位を$V$として、
\begin{align} U=qV(\boldsymbol{r^\prime}) \label{eq:002} \end{align}
先ほどまで計算してきたように電場中の電荷にはたらく力は保存力でした。そこで,ポテンシャルを計算してみましょう。基準を無限遠として,
\begin{align*} U(\boldsymbol{r^\prime})=-\int_{|\boldsymbol{r}|=\infty}^{\boldsymbol{r}^\prime}q\boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{r} \end{align*}
ここで,電荷は一定とみなせば,
\begin{align*} U=q\left(-\int_{|\boldsymbol{r}|=\infty}^{\boldsymbol{r}^\prime} \boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{r}\right) \end{align*}
さて,後半部分の式は無限遠を基準にした電位の定義と全く同じなので,
\begin{align} U=qV(\boldsymbol{r}^\prime) \tag{\ref{eq:002}} \end{align}
となります。

コンデンサのエネルギーからエネルギー密度を求める

一見関係ないように見えるコンデンサとエネルギー密度の関係ですが簡単なイメージを得ることができます。

コンデンサのエネルギーを求める

互いに平行な面積$S$の極板を間隔$d$で向かい合わせます。$\pm{q}$の電荷が無限に離れている状態から子の極板の一方に正電荷,他方に負電荷をもってくることを考えます。(この状態を以後、$q$に充電された状態ということにします。)

コンデンサの電気容量の定義

コンデンサの電気容量とエネルギーの式
コンデンサの電気容量は蓄えられた電荷を$Q$、極板間電圧を$V$として、
\begin{align} C\stackrel{def}{=}\dfrac{Q}{V} \label{eq:003} \end{align}
と定義されます。また、このときに蓄えられたエネルギーは、
\begin{align} U=\dfrac{Q^2}{2C}=\dfrac{1}{2}CV^2=\dfrac{1}{2}QV \label{eq:004} \end{align}
と定義されました。コンデンサに電荷$q$が充電されているときには極板間の電位差は
\begin{align} V=\dfrac{q}{C} \label{eq:005} \end{align}
となりました。この状態から微小電荷$dq$を無限遠から持ってくる微小ポテンシャル変化$dU$は,
\begin{align*} dU= V dq=\dfrac{q}{C}dq \end{align*}
ここで電気容量$C$を定数としてみなすと,辺々にインテグラルをつけて積分します。$q=0$のときに$U=0$、$q=Q$のときに$U$として、
\begin{align*} \int_{0}^{U}dU=\int_{0}^{Q}\dfrac{q}{C}dq=\dfrac{Q^2}{2C} \end{align*}
\eqref{eq:005}を用いて
\begin{align} U=\dfrac{Q^2}{2C}=\dfrac{1}{2}CV^2=\dfrac{1}{2}QV \tag{\ref{eq:004}} \end{align}
などと変形できます。

電気容量の具体的な表式の導出

電気容量とその静電エネルギー
電気容量$C$は極板面積を$S$、極板間隔を$d$、誘電率を$\varepsilon$として、
\begin{align} C=\varepsilon \frac{S}{d} \label{eq:006} \end{align}
電気容量でおなじみの式をマクスウェル方程式から導出します。ただし,前提条件として,先ほどから考えているコンデンサは適切にアースされていて,外側の面に電荷は存在しない(極板の向かい合っている側に全電荷$\pm Q$がそれぞれ存在する)とします。

今述べた状況ではコンデンサーの向かい合う面の間には電場がありますが,外側には電場が零ベクトルとなります。

以下のマクスウェル方程式のうちの一つ,ガウスの法則を思い出しましょう。ただし、極板間の誘電率は$\varepsilon$で一定と考えて、$\boldsymbol{D}=\varepsilon \boldsymbol{E}$としています。
\begin{align*} \nabla\cdot \boldsymbol{E}=\dfrac{\rho}{\varepsilon} \end{align*}
さて,この辺々を正電荷をためている正電荷が蓄えられている極板のみを含む空間$V$で体積分します。このとき、空間$V$の内部に含まれる電荷は$Q(>0)$となるので、右辺に関してはその空間に存在する電荷の総和$Q$が出てくるわけです。

左辺に関してはガウスの発散定理
\begin{align*} \int_V \nabla\cdot\boldsymbol{E}\ dV=\oint_S \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}\ dS \end{align*}
を利用して面積分に変更します。
\begin{align*} \oint_S \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}dS=\dfrac{Q}{\varepsilon} \end{align*}
さて,ではこの左辺の面積分を計算しましょう。本当は先ほど考えていた領域を囲む面すべてで積分する必要があるのですが,向かい合っている領域以外では電場は0です。つまり,この向かい合っている領域での電場を$E$とおけば,
\begin{align} ES=\dfrac{Q}{\varepsilon} \label{eq:007} \end{align}
となります。ちなみに極板を囲む面は極板と平行に考えています。つまり,電場は面積分の計算の話から考えて,電場は極板と垂直な成分のみ考えればいいことになります。ところで,この向かい合っている領域では電場は一定なので,この向かい合っている極板間電位差$V$は,極板間隔が$d$なので,
\begin{align*} V= \left|-\int_{\text{正電荷極板}}^{\text{負電荷極板}}\boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{L}\right|=Ed \end{align*}
\eqref{eq:007}式から電場を電位差の式で置き換えれば
\begin{align*} \dfrac{V}{d}S=\dfrac{Q}{\varepsilon} \end{align*}
となります。電気容量と同じ形の式になるように変形すると,
\begin{align} C=\dfrac{Q}{V}=\varepsilon\dfrac{S}{d} \tag{\ref{eq:006}} \end{align}
となります。

エネルギー密度を考える

電場によるエネルギー密度
電場$E$、誘電率$\varepsilon$の空間に蓄えられたエネルギー密度(単位体積当たりのエネルギー)は、
\begin{align} \dfrac{\varepsilon E^2}{2} \label{eq:008} \end{align}
\eqref{eq:004}と\eqref{eq:006}を考えると,ポテンシャルエネルギーは電場を用いると,
\begin{align*} U=\dfrac{\varepsilon S}{2d}(Ed)^2=\dfrac{\varepsilon E^2}{2}Sd \end{align*}
となります。ここで、極板面積は$S$,極板間隔は$d$なので、$Sd$というのは電場が存在している空間の体積になります。つまり,単位体積あたり,
\begin{align} \dfrac{\varepsilon E^2}{2} \tag{\ref{eq:008}} \end{align}
のエネルギーが存在していることになります。



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