線形代数⑨ 部分空間の定義と部分空間の例 このエントリーをはてなブックマークに追加

部分空間の定義と例の紹介

部分空間の定義をしますが、群の定義と似ていると思うので、それと関連して覚えるといいと考えやすいと思います。

群との関連を紹介

群論を習わずに線形代数だけやる人も多いと思いますが群の定義を知っていると部分空間が受け入れやすくなると思うので一応書いておきます。まあ興味がないor群論を全くかじってないなら無視してOKです。
群の定義
集合\(G\)の任意の元\(a,b,c\)と演算\(G\times G\mapsto G\)に対して以下の性質を満たすものを群と呼びます。

\begin{align} (a\cdot b)\cdot c=a\cdot (b\cdot c)\\ a\cdot e= e\cdot a =a\text{を満たす元}e\text{が存在する}\\ a\cdot a^{-1}=a^{-1}\cdot a=e\text{となる元}a^{-1}\text{が存在する} \end{align}

部分空間の定義

ベクトル空間\(V\)の部分集合\(U\)が\(U\)の和とスカラー倍によって閉じているとき\(U\)を\(V\)の部分空間といいます。

「閉じている」とは

ある空間の要素どうしの和やある要素の定数倍をしても、その空間の要素になることを閉じている。たとえば,整数の集合のなかで1+1をすれば答は2になるので,整数+整数=整数というようにその集合の中で演算が完結します。これが\eqref{eq:la8.5},\eqref{eq:la8.6}の内容ですね。

部分空間であるための必要十分条件

部分空間であるための必要十分条件
ベクトル空間\(V\)の部分集合\(U\)について,以下が成り立つことが\(U\)が部分空間となるための必要十分条件です。

\begin{align} \boldsymbol{0}&\in U \label{eq:la8.4}\\ \boldsymbol{u},\boldsymbol{v}\in U&\Rightarrow \boldsymbol{u}+\boldsymbol{v}\in U \label{eq:la8.5}\\ \text{\(c\in\mathbb{C}\)に対して}\boldsymbol{u}\in U&\Rightarrow c\boldsymbol{u}\in U \label{eq:la8.6} \end{align}

部分空間の定義をそのまま式にしているだけです。

部分空間の例

たとえば,\(\mathbb{R}^3\)の部分集合として
\begin{align*} U= \left\{ \boldsymbol{x} \left| \boldsymbol{x}= \begin{pmatrix} 1\\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}c,c\in\mathbb{C} \right. \right\} \end{align*}
を考えましょう。まず,\(c=0\)とすれば\eqref{eq:la8.4}が満たされることは明らかですね。次に,\(\boldsymbol{x_1},\boldsymbol{x_2}\in U\)として,
\begin{align*} \boldsymbol{x_1}+\boldsymbol{x_2}=\begin{pmatrix}c_1+c_2 \\ 0 \\ 0\end{pmatrix} \in U \end{align*}
\eqref{eq:la8.5}を満たすこともよさそうです。最後の\eqref{eq:la8.6}は\(U\)の定義より明らかです。



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