統計力学② 統計力学的なエントロピー このエントリーをはてなブックマークに追加

エントロピーとは?

エントロピーの統計力学的な定義はどんな式でしょうか?

統計力学でのエントロピーの定義

エントロピー
$i$番目の状態を取る確率を$p_i$として、エントロピー$S$は、
\begin{align*} S=-k_B\sum_{i=1}^{W} p_i \log{p_i} \end{align*}
と表せます。なぜこんな式がエントロピー?以下で導出します。

エントロピーの表式

系1,2を用意します。系1と系2は互いに独立と考えます。その合成系のエントロピー$S_{12}$は、系1のエントロピー$S_1$と系2のエントロピー$S_2$を用いて、エントロピーが示量変数であることから、
\begin{align} S_{12}=S_1+S_2 \label{eq:1} \end{align}
また、系1の状態$i$を取る確率$p_{1i}$と系2の状態$j$を取る確率$p_{2j}$を用いて、合成系で系1が状態$i$、系2が状態$j$となる確率は、
\begin{align} p_{ij}=p_{1i}p_{2j} \label{eq:2} \end{align}
となります。(ただし、これは各系が独立と考えています。) また、エントロピーが適当な関数$f(p)$を用いて、
\begin{align} S=\sum_k p_k f(p_k) \label{eq:3} \end{align}
と表されることを仮定します。\eqref{eq:2},\eqref{eq:3}を用いて、\eqref{eq:1}は、
\begin{align*} \sum_{i,j}p_{ij}f(p_{ij})=\sum_i p_{1i}f(p_{1i})+\sum_{j} p_{2j}f(p_{2j}) \end{align*}
となります。ここで、すべての項が$i,j$の両方についての和にしたいので
\begin{align*} \sum_i p_{1i}=\sum_j p_{2j}=1 \end{align*}
をもちいて、以下のように書き直します。
\begin{align*} \sum_{i,j}p_{ij}f(p_{ij})=\sum_{i,j} p_{1i}p_{2j}f(p_{1i})+\sum_{i,j} p_{1i}p_{2j}f(p_{2j}) \end{align*}
$p_{ij}$$=$$p_{1i}p_{2j}$を用いて、すべて左辺にまとめると
\begin{align*} \sum_{i,j}p_{ij}\left\{f(p_{1j}p_{2j})-f(p_{1i})-f(p_{2j})\right\}=0 \end{align*}
すなわち、
\begin{align*} f(p_{1i}p_{2j})=f(p_{1i})+f(p_{2j}) \end{align*}
という式が成り立つことになります。この関数方程式を解きます。

関数方程式を解く

$p$を以下のように置き換えて考えましょう。
\begin{align*} f(xy)=f(x)+f(y) \end{align*}
ここで、辺々を$x$で微分すると、
\begin{align*} yf^\prime (xy)=f^\prime (x) \end{align*}
ここで、$x=1$として、
\begin{align*} yf^\prime(y)=f^\prime (1) \end{align*}
さて、ここで微分方程式ができたので、これを解きましょう。
\begin{align*} df&=\dfrac{f^\prime(1)}{y}dy \\ \therefore f(y)&=f^\prime(1)\log{y}+C \end{align*}
さて、元のエントロピーの式に戻します。たとえば系1について、取りうる状態数を$W_1$,$f^\prime(1)$$=$$-k_B$とすれば、
\begin{align*} S_2 &=\sum_{i=1}^{W_1} p_{1i}\left\{k_B\log{p_{1i}}+C\right\} \\ &=-k_B\sum_{i=1}^{W_1} p_{1i}\log{p_{1i}}+CW_1 \end{align*}
エントロピーの最小値が0になるように考えます。これは熱力学第三法則よりいえることで、$p_{1i}$$=$$0,1$で第一項は最小値0になるので、$C$$=$$0$として、
\begin{align*} S_1=-k_B\sum_{i=1}^{W_1}p_{1i}\log{p_{1i}} \end{align*}
となります。つまり、一般には、
\begin{align*} S=-k_B\sum_{i=1}^Wp_i\log{p_i} \end{align*}
となります。



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