関数解析① 距離空間と距離の公理
距離空間とは?
距離といえば...?絶対値だとか三平方の定理を用いた定義だとか様々だと思いますが、距離とはどんなものなのか?明確に定めてみます。距離の公理と距離関数
以下の性質を距離の公理、またこれを満たす関数$d$を距離関数といいます。距離関数
集合$X$に対する関数$d:X\times X\mapsto \mathbb{R}$について
\begin{align}
d(x,y)\geq 0,d(x,y)=0&\Leftrightarrow x=y \label{eq:1}\\
d(x,y)&=d(y,x) \label{eq:2}\\
d(x,z)+d(z,y)&\geq d(x,y) \label{eq:3}
\end{align}
距離の例としての絶対値
距離関数として以下のような関数を考えて、距離の公理を満たすことを確かめましょう。\begin{align*}
d(x,y)=|x-y|
\end{align*}
まずは、\eqref{eq:1}について、絶対値とは何かを考えれば、
\begin{align*}
d(x,y)=|x-y|\geq 0
\end{align*}
であり、
\begin{align*}
d(x,y)=|x-y|=0 \Leftrightarrow x=y
\end{align*}
とすぐにわかるでしょう。次に\eqref{eq:2}について、
\begin{align*}
d(x,y)=|x-y|=|y-x|=d(y,x)
\end{align*}
なのでよいでしょう。\eqref{eq:3}について、
\begin{align*}
|x-z|+|z-y|\geq |x-y|
\end{align*}
を示しましょう。絶対値の三角不等式から成り立つことはいえるでしょうが、一応しっかり計算してみました。
\begin{align*}
(\text{左辺})^2-(\text{右辺})^2
&=|x-z|^2+2|x-z| |z-y|+|z-y|^2 -|x-y|^2 \\
&=(x^2-2xz+z^2)+2|x-z| |z-y|+(z^2-2zy+y^2)-(x^2-2xy+y^2) \\
&=2z^2+2(xy-yz-xz)+2|x-z| |z-y| \\
&=2\left\{z^2-(x+y)z+xy+|x-z| |z-y|\right\} \\
&=2\left\{-(x-z)(z-y)+|x-z| |z-y|\right\} \\
&\geq 0
\end{align*}
以上で距離関数としてふさわしいことが示せました。