測度論⑤ ディリクレ関数のルベーグ積分 このエントリーをはてなブックマークに追加

ルベーグ積分とは?リーマン積分との違いとディリクレ関数との関係

ルベーグ積分というのは名前だけは有名ですね。
よく言われる話として、ルベーグ積分は$y$軸に沿っての積分といわれています。

個人的にはあまり$y$軸に沿ってとか言うことは考えていませんがね笑 どういうふうに計算するのか、ということについて紹介します。


前回まで測度というものを紹介してきました。 なんでこんな変な話をしてきたかということは今回でわかります。


リーマン積分では関数グラフの下の高さを$x$軸方向の微小長さの積(いわゆる $f(x) dx$ですね)をとってこれを足し合わせるのでした。 ではこの計算を$y$軸でくぎってすることを考えます. 具体的には$f(x)$の値を返す$x$の集合の長さを$\mu$として、$\mu\{f(x)\}$をすべての$f(x)$について足し合わせます。

ルベーグ積分の具体例

ではディリクレ関数の積分を考えます。 ディリクレ関数とは、$x\in[0,1]$に対して、
\begin{align*}f(x)=\left\{\begin{array}{p}1\ \ (x\in \mathbb{Q})\\ 0\ \ (x\notin \mathbb{Q}) \end{array}\right.\end{align*}
でした。では,$0\leq x\leq 1$でこの関数をルベーグ積分します。 先ほどの説明から...ルベーグ積分の値は, $x\in[0,1]$に対して、
\begin{align*}1\times\mu(\mathbb{Q}\cap [0,1])+0\times \mu(\mathbb{Q}^{c}\cap [0,1])\end{align*}
このように計算できます. $\mu()$は( )内の集合の大きさ(ルベーグ測度による)です。

では、あとはこのそれぞれの$\mu$の値を求めましょう。 ルベーグ外測度の定義は $x\in[0,1]$に対して、
\begin{align*}\mu^{*}(A)=\displaystyle \inf{\sum_{n=1}|I_{n}|}\end{align*}
でした。

集合の濃度を用いた測度の評価

ここで集合論の話に戻りますが、有理数と無理数はどちらが多いのでしょうか?集合の濃度です。 細かい話は割愛しますが、有理数は可算集合(自然数と濃度が等しい集合)です。対して無理数は対角線論法を使えば有理数より濃度が大きいことが証明できます。

$[0,1]$の長さは1(普通の感覚で考えてください)なので、この区間で有理数と無理数のルベーグ測度を足し合わせれば必ず1になります。 では、有理数と無理数では無理数のほうが大きいということを説明したので、まずは有理数のルベーグ測度を求めましょう。

なんでわざわざ小さいほうから求めるのか? というと前回の投稿の最後で説明しましたが極限が0になることは簡単に証明できるのです そこで、有理数の大きさが0にならないかなぁと期待しているのです。


有理数は可算集合だと説明しました。つまり、各有理数に番号をつけて数えることができます。 では、たとえば$[0,1]$に存在する有理数を$n$個だとしてみましょう。(のちに無限大の極限に飛ばします) そして、各有理数が存在する点の大きさを考えましょう。 点の大きさ? 0じゃないの? と感じるかもしれません。実はそうなんですが、あとではさみうちの原理を使うための布石です。 各点を被覆するような長さ$\dfrac{1}{n^{2}}$の集合を考えます。 長さを持たないといわれている点が長さ$\dfrac{1}{n^{2}}$より小さいのは理解できると思います。

では、ここで$[0,1]$で有理数は$n$個だと仮定していたのでこれらの和は$\dfrac{1}{n}$になります。ここで、有理数はいくらでも細かくとってこれるので、$n\to\infty$とすれば0になります。つまり、 $x\in[0,1]$に対して、
\begin{align*}0\leq \mu(\mathbb{Q}\cap[0,1])\leq \mu(\mathbb{Q}\cap[0,1])\leq \displaystyle\lim_{n\to\infty}{\dfrac{1}{n}}=0\end{align*}
はさみうちの原理から $x\in[0,1]$に対して、
\begin{align*}\mu(\mathbb{Q}\cap[0,1])=0\end{align*}
となりました。このことから、
\begin{align*}\mu(\mathbb{Q}^{c}\cap[0,1])=0\end{align*}
が自動的に導かれます。 なぜかということを先ほども軽く触れましたがもう一度。 有理数、無理数の和集合は実数集合ですから、$[0,1]$で考えれば、当たり前だともいえますし、正確に議論したければ
\begin{align*}\mu([0,1])=1\end{align*}
(つまり$[0,1$が可測ということ)を可測条件
\begin{align*}\mu(A)=\mu(A\cap B)+\mu(A\cap B^{c})\end{align*}
に、$A=[0,1],B=\mathbb{Q}$として代入すればわかります。


つまり、ディリクレ関数のルベーグ積分は
\begin{align*}1\times \mu(\mathbb{Q}\cap[0,1])+0\times \mu(\mathbb{Q}^{c}\cap [0,1])=0\end{align*}
となります。 なんとなく、かっこよくまとめると
\begin{align*}\displaystyle \int_{0}^{1}\lim_{m\to\infty}\lim_{k\to\infty}\cos^{2k}{(m!\pi x)}dx=0\end{align*}
となります。


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