相対性理論⑬ アインシュタイン-ヒルベルト作用 このエントリーをはてなブックマークに追加

アインシュタイン-ヒルベルト作用とは?アインシュタインテンソルの導出

解析力学でいう作用積分を決定したいと思います。その作用としてどんなものを選ぶといいか?考えていきます。

アインシュタイン-ヒルベルト作用に求められる条件

そもそもですが、作用積分はスカラー量です。なので、スカラー量になるものから考えましょう。

今まで扱ってきた変数で、スカラーになるものといえば、スカラー曲率$R$があります。ほかにも$R_{\mu\nu}R^{\mu\nu}$などがスカラーになるわけですが、そんなにたくさんのものを考えることは難しいので思い切って候補を絞ります。

Newton力学では二階微分の方程式が基本方程式でした。というわけで作用積分から導かれる方程式が二階微分の方程式になるように作用積分を選びましょう。以下のリーマン曲率テンソルの表示を見てみましょう。
リーマン曲率テンソルの具体的な表示
\begin{align*} {R_{abc}}^d=\partial_b{\Gamma^d}_{ca}-\partial_a{\Gamma^d}_{cb}+{\Gamma^d}_{\lambda b}{\Gamma^\lambda}_{ca}-{\Gamma^d}_{\lambda a}{\Gamma^\lambda}_{cb} \end{align*}
作用積分から方程式を導く、ということを考えればさらに微分が1階分増えるはずです。つまり、リーマン曲率テンソルを作用積分の中身に、と言いたいところですが、中身はスカラーであるべきでした。よって、リーマン曲率テンソルをから導けるスカラー曲率
\begin{align*} R=g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}=g^{\mu\nu}{R_{\mu\alpha\nu}}^\alpha \end{align*}
を作用積分の中身に選びます。

作用積分の形を決定する

さて、定数部分は$c_g$とおいて、重力場による作用積分$S_g$は
\begin{align} S_g\stackrel{?}{=}c_g\int R d^4x \label{eq:1} \end{align}
としたいのですが、一般相対性原理より導かれる方程式が座標によらないものであってほしいです。今のままでは座標の部分$d^4x$が座標によって変わることになります。

座標変換に対して不定にする方法

$\{x^\mu\}$ $\to$$\{x^{\prime\mu}\}$の座標変換を考えます。それぞれの計量テンソルを$g_{\mu\nu}$,$g^\prime_{\mu\nu}$とします。線素は座標系によらず不変なので、
\begin{align*} g^\prime_{\mu\nu}dx^{\prime\mu} dx^{\prime\nu}=g_{\alpha\beta}dx^{\alpha}dx^{\beta} \end{align*}
が成り立ちますが、ここから計量テンソルの変換が導かれます。
\begin{align*} g_{\mu\nu}=\dfrac{\partial x^{\prime\alpha}}{\partial x^\mu}\dfrac{\partial x^{\prime\beta}}{\partial x^\nu}g^\prime_{\alpha\beta} \end{align*}
さて、辺々の行列式を取ります。$\det{g_{\mu\nu}}=g$と表すと、
\begin{align*} g=\left\{\det{\left(\dfrac{\partial x^\prime}{\partial x}\right)}\right\}^2g^\prime \end{align*}
さて、計量テンソルについて、$\eta^{\mu\nu}=\text{diag}(-1,1,1,1)$であることから、$\eta\lt 0$ですが、一般の計量テンソルについても同様に$g\lt 0$と考えられます。よって、 ルートを取るときはマイナスをつけます。
\begin{align*} \left|\det{\left(\dfrac{\partial x^\prime}{\partial x}\right)}\right|=\dfrac{\sqrt{-g}}{\sqrt{-g^\prime}} \end{align*}
この左辺はヤコビアンですね。つまり、微小時空体積素について、
\begin{align*} d^4x^\prime=\dfrac{\sqrt{-g}}{\sqrt{-g^\prime}}d^4x \end{align*}
となります。つまり、
\begin{align*} \sqrt{-g^\prime}d^4x^\prime=\sqrt{-g}d^4x \end{align*}
つまり、$\sqrt{-g}d^4x$という形にとれば座標系によらず不変となることがわかります。よって、\eqref{eq:1}を変形して、
アインシュタイン-ヒルベルト作用
スカラー曲率$R$,計量テンソル$g_{\mu\nu}$に対する行列式$g=\det{g_{\mu\nu}}$に対して、以下の式をアインシュタイン-ヒルベルト作用といいます。
\begin{align*} S_g=c_g\int R \sqrt{-g}d^4x \end{align*}




このエントリーをはてなブックマークに追加