相対性理論⑱ 宇宙項・宇宙定数 このエントリーをはてなブックマークに追加

宇宙項とは?アインシュタイン方程式の修正

どこかで宇宙項という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、アインシュタイン方程式の修正のことです。

アインシュタイン-ヒルベルト作用

アインシュタイン方程式を導出した作用積分の一部、重力場の部分は以下のようなものでした。
\begin{align*} S_g=c_g\int R\sqrt{-g}d^4x \end{align*}
これをアインシュタイン-ヒルベルト作用というのでしたが、この$g^{\mu\nu}$による変分を取った結果が以下の通りです。
\begin{align} \delta S_g=c_g\int \left(R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \label{eq:1} \end{align}

物質場の作用

さて。物質場の作用は
\begin{align*} S_m=c_m\int \mathcal{L}_m\sqrt{-g}d^4x \end{align*}
としてその$g^{\mu\nu}$による変分は
\begin{align} \delta S_m&=c_m\int \left(\dfrac{\partial\mathcal{L}_m}{\partial g^{\mu\nu}}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}\mathcal{L}_m\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \nonumber\\ &=-\dfrac{c_m}{2}\int T_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \label{eq:2} \end{align}

アインシュタイン-ヒルベルト作用に課された条件とは?

アインシュタイン-ヒルベルト作用を作ったときに考えていた条件は微分が高々二階微分までしか含まないことです。というわけで作用積分の中身をスカラー曲率$R$のみにしていたわけですが、定数も加えていいのでは?と考えたわけです。

つまり、以下のような作用を考えます。もちろん、$a$は定数です。
\begin{align*} S_0=\int a\sqrt{-g}d^4x \end{align*}

新たな作用の変分を取る

$g^{\mu\nu}$について変分を用いるわけですが、この場合変化を考えるのは$\sqrt{-g}$のみで、アインシュタインテンソルの記事を参考にすれば
\begin{align} \delta S_0=-\int ag_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \label{eq:3} \end{align}
さて、\eqref{eq:1},\eqref{eq:2},\eqref{eq:3}より、全体の作用積分の変分は
\begin{align*} \delta S=c_g\int \left(R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R-\dfrac{a}{c_g}g_{\mu\nu}-\dfrac{c_m}{2c_g}T_{\mu\nu}\right) \delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \end{align*}

宇宙項に宇宙定数を設定する

さて、被積分関数第三項の係数については$-a/c_g=\Lambda$とおきます。第四項については。もともと$\kappa$とおいていましたが、前回のNewton力学との整合性から$c_m/2c_g$$=$$8\pi G/c^4$とおいて、
\begin{align*} \delta S=c_g \int \left(R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R+\Lambda g_{\mu\nu}-\dfrac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}\right)\delta g^{\mu\nu}\sqrt{-g}d^4x \end{align*}
さて、作用が極値をとるのは、被積分関数の中身が0になるときで、これが修正されたアインシュタイン方程式です。
宇宙項・宇宙定数
アインシュタイン方程式は以下のようになります。
\begin{align*} R_{\mu\nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R+\Lambda g_{\mu\nu}=\dfrac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \end{align*}
ただし、$\Lambda g_{\mu\nu}$は宇宙項といい、その係数$\Lambda$は宇宙定数といいます。さらに、アインシュタインテンソルを導入すれば、
\begin{align*} G_{\mu\nu}+\Lambda g_{\mu\nu}=\dfrac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \end{align*}
となります。




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