統計力学④ 補足① 分配関数と熱力学的関数 このエントリーをはてなブックマークに追加

分配関数から熱力学的関数を導出する

分配関数をもとに熱力学的関数を導いていきます。統計力学から熱力学を導いていきます。

熱力学的関数の定義

熱力学的関数
内部エネルギー$E$、Helmholtzの自由エネルギー$F$は以下のようにあらわされます。
\begin{align} E&=-\dfrac{\partial}{\partial \beta}\log{Z} \label{eq:1}\\ F&=-\dfrac{1}{\beta}\log{Z} \label{eq:2} \end{align}

分配関数と確率との関係

分配関数$Z$は以下のようにあらわされました。$i$番目の状態のエネルギーを$E_i$とします。
\begin{align*} Z=\sum_i e^{-\beta E_i} \end{align*}
これはとりうる状態の和とみることができます。$i$番目の状態を取る確率$p_i$は、
\begin{align} p_i=\dfrac{e^{-\beta E_i}}{Z} \label{eq:3} \end{align}
となります。

内部エネルギーの分配関数からの導出

さて、\eqref{eq:1}の右辺を計算してみましょう。
\begin{align*} -\dfrac{\partial}{\partial \beta}\log{Z} &=-\dfrac{1}{Z}\dfrac{\partial Z}{\partial \beta} \\ &=-\dfrac{1}{Z}\sum_i (-E_i)e^{-\beta E_i} \\ &=\sum_i E_i\dfrac{e^{-\beta E_i}}{Z} \\ &=\sum_i E_i p_i\ \ (\because \eqref{eq:3}) \\ &=\braket{E} \end{align*}
さて、最後は期待値$\braket{E}$を用いましたが、今回用いている和は粒子の数だけ考えなければいけません。つまり、$N\approx 10^{23}$程度とみなせます

このサンプル量ではほぼ全体のエネルギーは変化しないでしょう。よって、これを内部エネルギー$E$としておくことにします。これで、\eqref{eq:1}が導かれました。

ヘルムホルツの自由エネルギーの分配関数

\eqref{eq:2}が正しいことを確かめましょう。前回導いたエントロピーの式
\begin{align*} S=k_B\beta E-k_B\log{Z} \end{align*}
を用いて、ヘルムホルツの自由エネルギーを計算すると、
\begin{align*} F&=E-TS \\ &=E-T(k_B\beta E+k_B \log{Z}) \\ &=-k_BT \log{Z} \\ &=-\dfrac{1}{\beta}\log{Z} \end{align*}
となります。



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