統計力学④ 補足② 分配関数の古典近似 このエントリーをはてなブックマークに追加

分配関数の古典近似とは?

分配関数は以下のように定義されました。
\begin{align*} Z=\sum_i e^{-\beta E_i} \end{align*}
これは暗にエネルギーが離散化されています。一応古典的には連続量として扱いたいので今回は連続に変換するような手立てを考えます。

古典的分配関数の導出

古典的分配関数
考えている粒子$N$個が非局在化している場合、座標$q$と運動量$p$について、
\begin{align*} Z=\dfrac{1}{N!}\prod_{i=1}^N\left\{\int\dfrac{d^3p_i d^3 q_i}{(2\pi \hbar)^3}\right\}e^{-\beta E} \end{align*}
となります。これを導出しましょう。
\begin{align*} Z&=\sum_i e^{-\beta E_i} \\ &=\sum_k \dfrac{\prod_{j=x,y,z} \Delta p_{ij} \Delta q_{ij}}{\prod_{j=x,y,z} \Delta p_{ij} \Delta q_{ij}} e^{-\beta E_k} \end{align*}
さて、この微小量の積はおおざっぱに、ではありますが、不確定性関係などを考えれば、$\Delta p_{ij} \Delta q_{ij}\sim h$$=2\pi\hbar$程度と見積もれるでしょう。これを分母のみに適用して、
\begin{align*} Z=\dfrac{1}{(2\pi \hbar)^3}\sum_k \prod_{j=x,y,z} \Delta p_{ij} \Delta q_{ij} e^{-\beta E_k} \end{align*}
さて、$k$についての和は、取りうる状態のうち$k$番目の状態について和をとっていく、ということで、$E_k$はあるときの全エネルギーです。考えうるすべての状態のそのエネルギーについて和をとります。$E_k$は、$3N$個ずつある運動量と座標の関数であり、
\begin{align*} E_k=E_k(p_{1x},p_{1y},p_{1z},p_{2x},\cdots,p_{Nz},q_{1x},\cdots,q_{Nz}) \end{align*}
のようにあらわされます。よって、このすべての変数を動かして、
\begin{align*} \sum_k \Delta p_{ij} \Delta q_{ij}\to \prod_{i=1}^N\int d^3p_i d^3q_i \end{align*}
ここで、$\Delta p_{ij},\Delta q_{ij}$を微小量とみて、以下のように記号を変換しました。
\begin{align*} \prod_{j=x,y,z} \Delta p_{ij} \Delta q_{ij}=d^3 p_i d^3 q_i \end{align*}
よって、分配関数は
\begin{align*} Z\stackrel{?}{=}\prod_{i=1}^N \int\dfrac{d^3p_i d^3q_i}{(2\pi\hbar)^3}e^{-\beta E} \end{align*}
となりますが...この式では少し問題があります。

ギブスのパラドックス

初めに断っておきますが、エントロピーは示量変数です。つまり、例えば粒子数が半減すればエントロピーも半減、体積が半減すればエントロピーも半減...といった具合に変化します。

自由粒子の場合に計算を進めるとエントロピーが示量変数になりません。これをギブスのパラドックスといいます。この対策として、$1/N!$をかけます。以上で、古典的な分配関数を導くことができます。この因子をかけるのはエントロピーが示量変数になるように、であり、粒子が非局在化している場合に限ります。



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