微分積分④ テイラーの定理 このエントリーをはてなブックマークに追加

テイラーの定理とは

前提条件:コーシーの平均値の定理

コーシーの平均値の定理
$f,g$を閉区間$[a,b]$で連続かつ$(a,b)$で微分可能な関数とする。また、$g^\prime(x)\ne 0$($a \lt$$x$$\lt b$),$g(a)$$\ne$$g(b)$とする。
\begin{align*} \dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}=\dfrac{f^\prime(c)}{g^\prime(c)} \end{align*}
を満たす$c$が存在する。
(参考:コーシーの平均値の定理)

これを前提としてテイラーの定理の証明を進めます。

テイラーの定理の内容とは?

テイラーの定理
開区間$I$で、$n$階微分可能で、$x,b$$\in I$とする。
\begin{align*} f(x)&=f(a)+\dfrac{f^\prime(a)}{1!}(x-a)^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots+\dfrac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1}+\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^n \\ &=\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k+\dfrac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^n \end{align*}
を満たす$a$と$x$の間の数$\xi$が存在する。
新しく関数$F$を定めますが、$a$を変数として以下のような関数を考えます。
\begin{align*} F(x)=f(b)-\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(x)}{k!}(b-x)^k \end{align*}
この関数を微分します。$b$は$a$と無関係として定数とみます。
\begin{align*} F^\prime(x)&=-\left\{\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k+1)}(x)}{k!}(b-x)^{k-1}+\sum_{k=1}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(x)}{(k-1)!}(b-x)^{k-1}\cdot(-1) \right\} \\ &=-\left\{\sum_{k=1}^{n}\dfrac{f^{(k)}(x)}{(k-1)!}(b-x)^{k-1} -\sum_{k=1}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(x)}{(k-1)!}(b-x)^{k-1} \right\} \\ &=-\dfrac{f^{(n)}(x)}{(n-1)!}(b-x)^{n-1} \end{align*}
次に、$F(b)$を計算しますが、$x$$=b$のとき、$0!=1$,$0^0=1$に注意すると、和のシグマ部分は$k=0$の場合には0にはならずに残ります。
\begin{align*} F(b)=f(b)-\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(b)}(a)}{k!}(b-b)^k=f(b)-f(b)=0 \end{align*}
次に、関数$G$として、以下の様な関数を考えます。
\begin{align*} G(x)=(b-x)^n \end{align*}
微分すると、
\begin{align*} G^\prime(x)=-n(b-x)^{n-1} \end{align*}
また、
\begin{align*} G(b)=0 \end{align*}
です。変数がいろいろごちゃごちゃしているので、以上をまとめると、
\begin{align*} F(x)&=f(b)-\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(x)}{k!}(b-x)^k \\ G(x)&=(b-x)^n \\ F^\prime(x)&=-\dfrac{f^{(n)}(x)}{(n-1)!}(b-x)^{n-1} \\ G^\prime(x)&=-n(b-x)^{n-1} \\ F(a)&=f(b)-\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(b-a)^k \\ F(b)&=0 \\ G(a)&=(b-a)^n \\ G(b)&=0 \end{align*}
となります。さて、ここで、今考えている$a$,$b$を含む開区間$I$で、関数$F$,$G$は微分可能で、$a$,$b$の間では$G^\prime(x)$$\ne0$なので、コーシーの平均値の定理より、$a$と$b$の間の数$\xi$について、
\begin{align*} \dfrac{F(b)-F(a)}{G(b)-G(a)}=\dfrac{F^\prime(\xi)}{G^\prime(\xi)} \end{align*}
となるものが存在します。この式を
\begin{align*} F(b)-F(a)=\dfrac{F^\prime(\xi)}{G^\prime(\xi)}\{G(b)-G(a)\} \end{align*}
と変形したうえで代入すると、
\begin{align*} -f(b)+\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(b-a)^k=-\dfrac{f^{n}(\xi)}{(n-1)!}(b-\xi)^{n-1}\cdot\dfrac{1}{-n(b-\xi)^{n-1}}\cdot\{-(b-a)^n\} \end{align*}
変形すると、
\begin{align*} f(b)-\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(b-a)^k=\dfrac{f^{n}(\xi)}{n!}(b-a)^n \end{align*}
ただ、このままだと何が変数なのかわかりにくいので、$b$を$x$に変えます。(もうテイラー展開を知っている人はそれに倣った形にすると考えてもよいでしょう。)

和の部分は移項すると、
\begin{align*} f(x)=\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k+\dfrac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^n \end{align*}
ただし、$\xi$は$x$と$a$の間の数です。これでテイラーの定理の証明が完了しました。

これはテイラー展開・マクローリン展開を数学的に正当化するために重要な定理となっています。 (参考:テイラー展開・マクローリン展開)



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