大学数学基礎: 各点収束、一様収束 このエントリーをはてなブックマークに追加

絶対収束、一様収束、各点収束の違い

関数列の収束の話なので少しレベルが高いかもしれません。大学初年次向けの本でもこの収束の定義を知っている前提で書かれた本がたまにあるので,収束の定義を知っていないと正確に書かれた文章がすごく読みにくくなるのでまとめておきます。 収束をなぜ区別するのかといえばやはりその収束先の連続性に影響してくるというのが一番大きいように思います。

収束の違いを考えたい場面

数値解析などでは無限回の操作によってだんだん近似していくみたいな回りくどい近似があります。 というか、そうでなくてもマクローリン展開すれば無限個の項なんてすぐ出てきます。そんな時には収束の話を無視できないのですが、その収束先を議論するときに不連続となる可能性が出てきます。

そこで収束の仕方をしっかり定めておかないとそのあとの扱いでいちいち考えないといけなくなってああ面倒くさいということになるので先に収束の仕方をまとめているわけです。

(1)各点収束

各点収束 区間 $I$ で定義された関数列 ${f_n(x)}$に対して、同じく区間 $I$ 上 で定義される$f(x)$が存在し、各 $x$ (もちろん定義域 $I$ に含まれる点)に対し
\begin{align*}\displaystyle \lim_{n\to\infty}f_n(x)=f(x)\end{align*}
が成り立つときに$f_n(x)$は$f(x)$に各点収束するといいます. 


ちなみに、これは関数列の極限の収束の話をしています。 つまり、以前この記事紹介した$\varepsilon-N$論法で表記できます。 (これは厳密な表記をしただけで、上のことと同じことを言っているだけです。)

具体的応用例として逐次近似法という手法があります。そこで 自然数$n$に対する関数$f_n(x)$ として$n\to\infty$のとき微分方程式の解に収束させるというものです。

(2)一様収束

一様収束 区間 $I$ で定義された関数列 ${f_n(x)}$に対して、同じく区間 $I$ 上 で定義される$f(x)$が存在し、各 $x$ (もちろん定義域 $I$ に含まれる点)に対し(各点収束の仮定と同じ状況で)
\begin{align*}\displaystyle \lim _ {n\to\infty} \sup _ {x}|f_n(x)-f(x)|=0\end{align*}
これは「各点収束よりも強い収束」です。 ここでsupの意味について紹介します。これは上界集合の最小値を示しています。

上界集合とは?

定義域 $I$に属する任意の要素以上の要素の集合です。 たとえば、$0\lt x\lt2$の最大値はいくつですか???

答えは「存在しない」ですね。

こういう時に便利なのがsupで、supを使って2と表せます。定義に上界集合の最小値と銘打ってあるので誤解しそうですが、「最大値もどき」というのが良いと思います。

一様収束と各点収束の大きな違い

本題に戻ります。 一様収束はなぜ各点収束よりも強い収束なのか? これがわかるのが以下の関数です。
\begin{align*}f_n(x)=x^{n}(0\lt x\lt 1)\end{align*}
この関数、直感的には$f(x)=0$に収束するように思えますよね??? しかし、ここで考えてほしいのは$x$が1に近い時(いわゆる$x\to1-0$)です。 なかなか0に収束しないように思えませんか?
\begin{align*} f_n(2^{-\frac{1}{n}}) = \left (2^{-\frac{1}{n}}\right)^{n}=\frac{1}{2}\end{align*}
これは一様収束の条件を満たしませんね。

一様収束の利点

一様収束するとき、収束する関数も連続になります。 上の例で定義域に$x=1$が含まれているとき、 収束先は$x=1$で、$f(1)=1$ となるように不連続になってしまいます。やはり連続関数のほうが扱いやすいですよね。



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