量子力学④ 演算子 このエントリーをはてなブックマークに追加

ハミルトニアンとは?

解析力学の記事では全エネルギーとしても紹介しました。今回はこれを演算子にして話を進めます。

シュレディンガー方程式中に出てくる全エネルギー

以下の1次元の時間に依存しないシュレディンガー方程式
\begin{align*}\left\{-\dfrac{\hbar^{2}}{2m}\dfrac{\partial^{2}}{\partial x^{2}}+V(x)\right\}\varphi(x)=E\varphi(x)\end{align*}
を考えます。 この左辺の{}の中の複雑な式、これを,$H$を使って,
\begin{align*}\hat{H}=-\dfrac{\hbar^{2}}{2m}\dfrac{\partial^{2}}{\partial x^{2}}+V(x)\end{align*}
これをハミルトン演算子(ハミルトニアン)といいます.  あくまで演算子です(微分のみで作用先が指定されていません) そのことを強調するために$H$にハットをつけています.(つけなくても 通じます.) つまり、シュレディンガー方程式は簡単に
\begin{align*}\hat{H}\varphi=E\varphi\end{align*}
とかけます。

物理量の演算子化をする

演算子
運動量とエネルギーは以下のように対応しています。
\begin{align*} \hat{p}&=-i\hbar\nabla \\ \hat{E}&=i\hbar\dfrac{\partial}{\partial t} \end{align*}
ただし、エネルギー固有値は時間に依存する場合のみで、時間に依存しない場合には上で紹介したハミルトニアン演算子です。
これは線形代数で習った話なのですが、行列$A$に対して、固有ベクトル$\boldsymbol{v}$、固有値$\lambda$とすれば、
\begin{align*}A\boldsymbol{v}=\lambda \boldsymbol{v}\end{align*}
という話がありました。(つまり、$\boldsymbol{v}$に行列$A$を作用させると定数倍になるということ) これと同じ状況になっているので、$E$をエネルギー固有値、$\varphi$を固有関数などと呼びます。 さらに、
\begin{align*}\hat{H}\ \leftrightarrow \ E\end{align*}
という関係があることがわかります。 また、同様のことを運動量について行います。1次元について、波動関数が$\psi(x)=Ae^{i\left(\frac{p}{\hbar}x-\frac{E}{\hbar}t\right)}$のとき、辺々を$x$で微分すると、
\begin{align*}\dfrac{\partial \psi(x)}{\partial x}=i\dfrac{p}{\hbar}Ae^{i\left(\frac{p}{\hbar}x-\frac{E}{\hbar}t\right)}=i\dfrac{p}{\hbar}\psi(x)\\ \therefore -i\hbar\dfrac{\partial}{\partial x}\psi(x)=p\psi(x)\end{align*}
つまり、運動量について、
\begin{align*}i\hbar\dfrac{\partial}{\partial x}\leftrightarrow p\end{align*}
という関係がわかります。 これらは時間に依存しないシュレディンガー方程式に対して成り立つものでした。 時間に依存するときには、運動量は同様ですが、エネルギーは、
\begin{align*}i\hbar\dfrac{\partial}{\partial t}\leftrightarrow E\end{align*}
という関係があります。

固有値問題の応用

線形代数の固有値問題のようにあつかうことができます. たとえば、物理量$A$とその対応する演算子$\hat{A}$について、波動関数を$\psi$として、
\begin{align*}\hat{A}\psi=A\psi\end{align*}
と書けるとします。この式の両辺に左から$\psi$の複素共役($\psi^{*}$)をかけます。左辺の$\hat{A}$は演算子なので、順序入れ替えはむやみにはできませんが、右辺は$A$はスカラー値で、関数との順番の入れ替えができて、$\psi^{*}A\psi=A\psi^{*}\psi$という関係があるので、
\begin{align*}\psi^{*}\hat{A}\psi=A\psi^{*}\psi\end{align*}
さらに、$\psi^{*}\psi=\psi\psi^{*}=|\psi|^{2}$なので、
\begin{align*}\psi^{*}\hat{A}\psi=A|\psi|^{2}\end{align*}
ところで、$|\psi|^2$というのは確率密度関数を表していた(下で述べる規格化がされているとします)ので、この辺々を全範囲で積分すれば物理量$A$の期待値が求められます。(期待値の記事参照)これを$\braket{A}$で表すと、
\begin{align*} \braket{A}=\int_{\text{全範囲}} \psi^*(x)\hat{A}\psi(x)\ dx \end{align*}

波動関数を規格化する

波動関数が規格化されているとき,全空間で積分すれば1になります。 そこで、両辺を全空間で積分すると,
\begin{align*}\displaystyle \int \psi^{*}\hat{A}\psi\ d\boldsymbol{r}=\int A|\psi|^{2} d\boldsymbol{r}=A\int |\psi|^{2}d\boldsymbol{r} =A\end{align*}
(積分範囲は全空間です) つまり、対応する演算子の左から波動関数の複素共役、右から波動関数で挟んで全範囲で積分すると, 物理量が求まります

これも、量子力学が確率分布を基本としているからこのようにいちいち全範囲の積分をすることが必要なのです。



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