線形代数⑪ 線形写像・核・像・退化次数の定義 このエントリーをはてなブックマークに追加

線形写像・核・像・退化次数の定義

線形写像というものを定義して、その線形写像に対して核と像というものを定めます。核の次元が退化次数になります。

線形写像・像・核とは?

線形写像
ベクトル空間$U$から$V$への写像$T$について、$\boldsymbol{u},\boldsymbol{v}$$\in U$,$c$$\in\mathbb{C}$に対して、
\begin{align*} f(\boldsymbol{u})+f(\boldsymbol{v})&=f(\boldsymbol{u}+\boldsymbol{v}) \\ f(c\boldsymbol{u})&=cf(\boldsymbol{u}) \end{align*}
が成り立つ$f$を線形写像といいます。
これが成り立つ例として、ベクトル$\boldsymbol{x}$と適当な行列$A$について、
\begin{align*} f(\boldsymbol{x})=A\boldsymbol{x} \end{align*}
というものがあります。
像と核
ベクトル空間$U$から$V$への線形写像$f$の像(Image)と核(Kernel)をそれぞれ$\text{Im}(f)$、$\text{Ker}(f)$と表し、以下のように定義します。
\begin{align*} \text{Im}(f)&\stackrel{def}{=}\{f(\boldsymbol{u})|\boldsymbol{u}\in U\} \\ \text{Ker}(f)&\stackrel{def}{=}\{\boldsymbol{u}\in U|f(\boldsymbol{u})=\boldsymbol{0}\} \end{align*}
退化次数
ベクトル空間$U$から$V$への線形写像$f$の核(Kernel)について
\begin{align*} \text{null}(f)\stackrel{def}{=}\text{dim}(\text{Ker}(f)) \end{align*}
とかき、退化次数と呼びます。また、退化次数と像の次数の間には
\begin{align*} \text{null}(f)+\text{dim}(\text{Im}(f))=\text{dim}(U) \end{align*}
という関係があります。
像の次元は$f(\boldsymbol{x})=A\boldsymbol{x}$の場合には行列$A$の階数と等しくなるので、$f$の階数と呼び、$\text{rank}(f)$とかくこともあります。

また、退化次数と像の次数の和に関する式は証明が長いため、証明はここではしません。

核と像が部分空間となる証明

$\text{Im}(f)$は$V$の、$\text{Ker}(f)$は$U$の部分空間となることが示せます。(参考:部分空間)

部分空間であるための必要十分条件

部分空間であるための必要十分条件
ベクトル空間の部分集合\(U\)について,以下が成り立つことが\(U\)が部分空間となるための必要十分条件です。

\begin{align} \boldsymbol{0}&\in U \label{eq:1}\\ \boldsymbol{u},\boldsymbol{v}\in U&\Rightarrow \boldsymbol{u}+\boldsymbol{v}\in U \label{eq:2}\\ \text{\(c\in\mathbb{C}\)に対して}\boldsymbol{u}\in U&\Rightarrow c\boldsymbol{u}\in U \label{eq:3} \end{align}

像が部分空間になることについて

まず、$\boldsymbol{u}_1,\boldsymbol{u}_2$$\in U$,および、$\boldsymbol{v}_1=f(\boldsymbol{u}_1)$,$\boldsymbol{v}_2=f(\boldsymbol{u}_2)$として、すすめます。示せば良い条件は、
\begin{align*} \boldsymbol{0}&\in \text{Im}(f) \\ \boldsymbol{v}_1,\boldsymbol{v}_2\in \text{Im}(f) &\Rightarrow \boldsymbol{u}+\boldsymbol{v}\in \text{Im}(f) \\ \boldsymbol{c}\in \mathbb{C}\text{に対して}\boldsymbol{v}\in \text{Im}(f)&\Rightarrow c\boldsymbol{u}\in \text{Im}(f) \end{align*}
となりますが、以下のように線形性より簡単に示すことができます。ちなみに、$U$はベクトル空間なので要素同士の和や要素の定数倍、零ベクトルは$U$の要素になります。
\begin{align*} \boldsymbol{0}&=f(\boldsymbol{0}) \\ \boldsymbol{v}_1+\boldsymbol{v}_2=f(\boldsymbol{u}_1)+f(\boldsymbol{u}_2)&=f(\boldsymbol{u}_1+\boldsymbol{u}_2) \\ c\boldsymbol{v}_1=cf(\boldsymbol{u}_1)&=f(c\boldsymbol{u}_1) \end{align*}
以上で、$f$の像は$V$の部分空間であることが示せました。同様に$f$の核が$U$の部分空間であることも示せます。



このエントリーをはてなブックマークに追加