ベクトル解析① 内積とノルム このエントリーをはてなブックマークに追加

内積の計算方法とは?

内積というのは定義の仕方が実は一通りではなく、内積の公理を満たすものを一般に内積と呼びます。(参考:内積空間と内積の公理)

ここでは最もよく使うベクトルに対する内積を紹介します。

内積の定義と性質

ベクトルの記法

ベクトルというものの記法を改めて書いておきます。上に矢印をつけて表すこともありますが,以降は太字で表記をします。
\begin{align*} (\vec{a}=)\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} a_x \\ a_y \\ a_z\end{pmatrix} \end{align*}
以下の二つのベクトルを用いて話を進めていきます。
\begin{align*} \boldsymbol{a}&=\begin{pmatrix}a_x \\ a_y \\ a_z\end{pmatrix}\\ \boldsymbol{b}&=\begin{pmatrix} b_x \\ b_y \\ b_z \end{pmatrix} \end{align*}

内積の定義

内積の演算はドット「$\cdot$」を用いて表します。以下のように定義します。

内積
\begin{align} \boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}\stackrel{\rm{def}}{=} a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z \label{eq:1} \end{align}
このようにベクトルの内積はスカラーになるので,スカラー積ともいいます。また, 演算にドットを用いるのでドット積ということもあります。

内積の性質とは?

\eqref{eq:1}から明らかなのですが、
\begin{align*} \boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}=\boldsymbol{b}\cdot\boldsymbol{a} \end{align*}
というように交換します。また,任意のベクトルに対して,
\begin{align*} \boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{a}=a_x^2+a_y^2+a_z^2\geq 0 \end{align*}
という性質があります。

ノルムを定義する

高校数学ではベクトル$\vec{a},\vec{b}$のなす角を$\theta$として,以下のような式がありました。
\begin{align} \vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}\|\vec{b}|\cos{\theta} \label{eq:2} \end{align}
つまり,同じベクトルの内積を取れば,$\theta=0$となり,
\begin{align*} \vec{a}\cdot\vec{a}=|\vec{a}|^2 \end{align*}
でした。つまり,ベクトルの大きさとして,
\begin{align*} |\vec{a}|=\sqrt{\vec{a}\cdot\vec{a}} \end{align*}
という式がありました。ただベクトルの長さというのがこれからよく使う言葉なので,新たにノルムという量を定義したいと思います。最初に口走ったように内積というのは多くの分野で違った定義で使われているので,$\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{a}$の代わりに一般の内積を表す式$\braket{\boldsymbol{a},\boldsymbol{a}}$を用いて,ノルムを定義します。

ノルム
\begin{align*} \|\boldsymbol{a}\|\stackrel{\rm{def}}{=}\sqrt{\braket{\boldsymbol{a},\boldsymbol{a}}} \end{align*}
というようにノルムを定義します。

というわけで,\eqref{eq:2}式は以下のように書きなおせます。
\begin{align*} \boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}=\|\boldsymbol{a}\| \|\boldsymbol{b}\|\cos{\theta} \end{align*}
ちなみに、ノルムにも別の定義があって、それはやはりノルムの公理を満たすものであればノルムといってよいことになります。(参考:ノルム空間とノルムの公理)



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