微分積分⑪ シュワルツの定理 このエントリーをはてなブックマークに追加

シュワルツの定理の証明

前提条件:ラグランジュの平均値の定理

ラグランジュの平均値の定理より、以下のような式が言えました。
ラグランジュの平均値の定理
$f$を閉区間$[a,b]$で連続かつ$(a,b)$で微分可能な関数とする。
\begin{align*} \dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f^\prime(c),a\lt c\lt b \end{align*}
を満たす$c$が存在する。
この$c$というパラメータを置き換えて以下の形も得られます。

ラグランジュの平均値の定理の別ver.
$f$を閉区間$[a,b]$で連続かつ$(a,b)$で微分可能な関数とする。$h$$=b-a$として、
\begin{align*} f(b)-f(a)=hf^\prime(a+\theta h),0\lt \theta\lt 1 \end{align*}
を満たす$\theta$が存在する。
この定理はロルの定理を用いて証明できます。(参考:ラグランジュの平均値の定理の証明)

シュワルツの定理の内容

シュワルツの定理
定義域$D$で、$f_x$,$f_y$,$f_{xy}$が存在して$f_{xy}$が連続ならば$f_{yx}$も存在して
\begin{align*} f_{xy}=f_{yx} \end{align*}
が成り立つ。

シュワルツの定理の証明

求めたい式から変形していく

仮定より、$f_x$が存在しますが、これは微分可能ならば連続なので、いま、関数$f$は$x$に対して連続といえます。$y$についても同様です。というわけで、以下ではラグランジュの平均値の定理を用いて証明を進めます。

以下では、正の微小量$h_x$、$h_y$を考えます

いま、$f_{yx}$($f_y$を$x$で偏微分)を計算してみたら$f_{xy}$と等しくなった、ということが示したいので、まず使う式は
\begin{align*} f_{yx}(a,b)=\lim_{h_x\to 0}\dfrac{f_y(a+h_x,b)-f_y(a,b)}{h_x} \end{align*}
となります。(参考:偏微分)この式を計算していきたいのですが、中身について、
\begin{align} \lim_{h_x\to 0}\dfrac{f_y(a+h_x,b)-f_y(a,b)}{h_x} &=\dfrac{1}{h_x}\lim_{h_y\to 0}\left[\left\{\dfrac{f(a+h_x,b+h_y)-f(a+h_x,b)}{h_y}\right\}-\left\{\dfrac{f(a,b+h_y)-f(a,b)}{h_y}\right\}\right] \label{eq:1} \end{align}
ここで、見やすくするために以下のような関数$g$を考えます。
\begin{align*} g(x,y)=f(x,y)-f(x,b) \end{align*}
\eqref{eq:1}は、
\begin{align} \lim_{h_x\to 0}\dfrac{f_y(a+h_x,b)-f_y(a,b)}{h_x} &=\lim_{h_x\to 0}\left[\dfrac{1}{h_x}\lim_{h_y\to 0}\left\{\dfrac{g(a+h_x,b+h_y)}{h_y}-\dfrac{g(a,b+h_y)}{h_y}\right\}\right] \nonumber \\ &=\lim_{h_x\to 0}\lim_{h_y\to 0}\left\{\dfrac{g(a+h_x,b+h_y)-g(a,b+h_y)}{h_xh_y}\right\} \label{eq:2} \end{align}
と書き直せます。ここからさらに変形を進めたいところですが、極限の順番は入れ替えることができるか怪しいので、変形するのは諦めます。この式は最左辺で分かる通り、$f_{yx}$です。この最右辺が$f_{xy}$から変形して導かれることを確かめましょう。

偏微分の順番入れ替えた項を計算する

ラグランジュの平均値の定理($\theta$が登場する別バージョンのほう)を$x$について考えると、
\begin{align*} g(a+h_x,b+h_y)-g(a,b+h_y) &=h_x g_x(a+\theta_x h_x,b+h_y) \end{align*}
となる$\theta_x$が$(0,1)$に存在します。さらにこれを$f$を用いて表すと、
\begin{align*} g_x(a+\theta_x h_x,b+h_y)=f_x(a+\theta_x h_x,b+h_y)-f_x(a+\theta_x h_x,b) \end{align*}
ということで、$0\lt$ $\theta_x$ $\lt 1$を満たす$\theta_x$を用いて、
\begin{align*} g(a+h_x,b+h_y)-g(a,b+h_y)&=h_x\left\{f_x(a+\theta_x h_x,b+h_y)-f(a+\theta_x h_x,b)\right\} \end{align*}
とできます。さらに右辺の中身に対して、同じように$y$についてラグランジュの平均値の定理を用いてあげると、
\begin{align*} 0\lt\theta_y\lt 1,\ \ f_x(a+\theta_x h_x,b+h_y)-f_x(a+\theta_x h_x,b)=h_yf_{xy}(a+\theta_x h_x, b+\theta_y h_y) \end{align*}
を満たす$\theta_y$が存在します。つまり、
\begin{align*} g(a+h_x,b+h_y)-g(a,b+h_y)=h_xh_yf_{xy}(a+\theta_x h_x, b+\theta_y h_y) \end{align*}
を満たす$\theta_x,\theta_y$$\in(0,1)$が存在することになります。 $h_x,h_y$は正なので、わると、
\begin{align*} \dfrac{g(a+h_x,b+h_y)-g(a,b+h_y)}{h_xh_y}=f_{xy}(a+\theta_x h_x,b+\theta_y h_y) \end{align*}
この左辺は\eqref{eq:2}の最右辺の極限の中身ですね。つまり、
\begin{align*} \lim_{h_x\to 0}\lim_{h_y\to 0}\dfrac{f_y(a+h_x,b)-f_y(a,b)}{h_x}&=\lim_{h_x\to 0}\lim_{h_y\to 0}f_{xy}(a+\theta_x h_x,b+\theta_y h_y) \\ &=f_{xy}(a,b) \end{align*}
最左辺は$f_{xy}(a,b)$なので、これで所望の式が得られました。



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