常微分方程式③ 二階線形微分方程式 このエントリーをはてなブックマークに追加

二階線形微分方程式の解き方


$\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}+a\dfrac{dy}{dx}+b=f(x)$

今回は,この形の常微分方程式を解きましょう。 ($a,b$は定数です) まず、確認です。

$\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}=y'', \dfrac{dy}{dx}=y'$

あまり詳しくは触れませんが微分の記号の使い方、慣れていない人はちゃんと覚えましょうね。 では、本題です。

特性方程式の導出と使い方

今回、この微分方程式を解くのには特性方程式を使います。まず、外力項$f(x)=0$の場合についてです。 今考えている微分方程式の特性方程式としてこんなものを考えます。

$\lambda^{2}+a\lambda+b=0$

解を$\alpha,\beta$とすると、微分方程式の解は、$A,B$を定数として、

$y=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}\ (\alpha\ne \beta)$


$y=Axe^{\alpha x}+Be^{\alpha x}\ (\alpha=\beta)$

となります。(虚数解になるときはオイラーの公式を用いて展開するべきですが、考え方としては実数解のときと同じように解を求めることができます) では、なぜこうなるのか、順を追って説明します。

特性方程式が重解を持たないとき

重解ではないときを考えます。 まず、微分記号について。

$\dfrac{dy^{2}}{dx^{2}}=\dfrac{d}{dx}\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{d}{dx}\dfrac{d}{dx}y$

こうなるのはわかりますか? つまり、元の微分方程式は こんなふうにかけるのではないでしょうか。

$\dfrac{d}{dx}\dfrac{d}{dx}y+a\dfrac{d}{dx}y+by=0$

ここで、$y$でくくると、

$\left(\dfrac{d}{dx}\dfrac{d}{dx}+a\dfrac{d}{dx}+b\right)y=0$

微分演算子$\dfrac{d}{dx}$を数とみれば、かっこの中が因数分解できそうですね。 特性方程式の解$\alpha,\beta$を用いると、

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)\left(\dfrac{d}{dx}-\beta\right)y=0$

たとえば、ふたつめのかっこに$y$をいれてやると、

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)\left(\dfrac{dy}{dx}-\beta y\right)=0$

2つ目のカッコが0になると考えると、変数分離形の微分方程式が得られますね。

$\dfrac{dy}{y}=\beta dx\therefore \log{y}=\beta x+C$ $y=e^{\beta x+C}=e^{C}e^{\beta x}$

ここで、$e^{C}$は定数なので、これを改めて$C$と置きなおすと、$y=Ce^{x}$となります。 また、1つめのかっこに$y$を入れ込んで、0になると考えると、同様に

$y=C'e^{\alpha x}$

となります。でも、解はこれら和になると説明しました。これはなぜでしょうか。$y=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}$を

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)\left(\dfrac{d}{dx}-\beta\right)y=0$

の左辺に代入してみます. たとえば、2つめのかっこに$y$を入れ込むと、

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)\left(\dfrac{dy}{dx}-\beta y\right)$

2つ目のカッコを計算すると、 $$ \begin{align*} \dfrac{dy}{dx}-\beta y&=A\alpha e^{\alpha x}+B\beta e^{\beta x}-A\beta e^{\alpha x}-B\beta e^{\beta x}\\&=A(\alpha -\beta)e^{\alpha x} \end{align*}$$ これで終わりではありません。微分方程式にこの式を代入して,

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)A(\alpha-\beta)e^{\alpha x}$

右の式を左側のカッコの中に入れてみます。

$\dfrac{d}{dx}A\left(\alpha-\beta\right)e^{\alpha x}-\alpha A(\alpha-\beta)e^{\alpha x}=0$

となり、確かに解になっていることが確認できました。 次に重解を持つときを考えます。

特性方程式が重解を持つとき

この時の解は

$Axe^{\alpha x}+Be^{\alpha x}$

と表されるのでした. 代入して確認してみましょう.

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)\left(\dfrac{dy}{dx}-\beta y\right)$

この式の左辺に$y$を代入します.(もう$y$はかっこの中にあらかじめ入れました) 2つ目のカッコについて計算すれば、

$\left(\dfrac{dy}{dx}-\beta y\right)=Ae^{\alpha x}$

となります。よって,微分方程式の左辺は

$\left(\dfrac{d}{dx}-\alpha\right)Ae^{\alpha x}$

となり、確かにこれは0となり、解になっています. では、ちょっと問題を解いてみます。

二階線形微分方程式の例題


$\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}+2\dfrac{dy}{dx}+2y=0$

これを解いてみましょう. まず特性方程式を立てます。

$\lambda^{2}+2\lambda+2=0$

この方程式の解は

$\lambda=-1\pm{i}$

つまり、この微分方程式の解は、

$y=Ae^{(-1+i)x}+Be^{(-1-i)x}$

となります. ただ、虚数を指数に残しておくのはよくないので、オイラーの公式$e^{i\theta}=\cos{\theta}+i\sin{\theta}$でもう少し計算してみましょう。 $$\begin{align*} y&=e^{-x}\left\{Ae^{ix}+B^{(-i)x}\right\}\\&=e^{-x}\left\{(A+B)\cos{x}+i(A-B)\sin{x}\right\} \end{align*} $$ ここで、$A+B, A-B$は定数ですから、改めて定数$C_{1},C_{2}$で置きなおすと、

$y=C_{1}e^{-x}\cos{x}+C_{2}e^{-x}\sin{x}$

これが解になります。 (この場合、定数は複素数です) 次に非斉次形(外力項$f(x)\ne0$)のときを考えましょう。 一階線形のときにも説明したように斉次形の解と非斉次形の解の和も、微分方程式の解になります。 たとえば、先ほどの例題の右辺に、例えば$e^{x}$があるとしましょう。

$\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}+2\dfrac{dy}{dx}+2y=e^{x}$

斉次形(右辺=0)の解は求めてある(これを、$y_{g}=C_{1}e^{-x}\cos{x}+C_{2}e^{-x}\sin{x}$としておきます)ので、非斉次形の特殊解を探しましょう。 特殊解を見つけるには右辺から特殊解を類推するしかないです。たとえば、

$y_{p}=Ae^{x}$($A$は定数)

という形だと推測して微分方程式に代入すると、左辺=$Ae^{x}+2Ae^{x}+2Ae^{x}=5Ae^{x}$となります。つまり、右辺と比較すれば、

$5Ae^{x}=e^{x}$

となり、$A=\dfrac{1}{5}$で特殊解になります。つまり、この非斉次形の微分方程式の解は、

$y=y_{g}+y_{p}=C_{1}e^{-x}\cos{x}+C_{2}e^{-x}\sin{x}+\dfrac{1}{5}e^{x}$

ということになります。


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