常微分方程式⑦ ラプラス変換 このエントリーをはてなブックマークに追加

ラプラス変換とは?変換の公式

関数$f(t)$のラプラス変換$F(s)$は
\begin{align*}F(s)=\displaystyle \mathcal{L}[f(t)]=\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\end{align*}
と、表されます. 変数が$s$になることに注意してください.$x$で積分したらその積分結果には$x$は残りません。元の変数はどこかへ行ってしまったというわけです。ちなみにどこかへ行きっぱなしというわけではなく、実は戻す方法があります。だから変換なわけです。でもなにがいいのか?というと微分積分を簡単に扱えることがあげられます。

微分・積分の公式

ちなみに関数$f(x)$のラプラス変換に対して、

微分⇄$sF(s)-f(0)$
積分⇄$\dfrac{F(s)}{s}$

という関係があります。微分のときには$s$をかけて、もとの関数の初期値をひく。積分は$s$で割るということになります。これは部分積分から計算できます。
\begin{align*}\mathcal{L}[f'(t)]&=\displaystyle \int_{0}^{\infty}f'(t)e^{-st}dt\\&=\displaystyle\left[f(t)e^{-st}\right]^{\infty}_{0}+s\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\\&=-f(0)+sF(s)\end{align*}
\begin{align*}\mathcal{L}\left[\displaystyle \int f(t)dt\right]&=\displaystyle \int_{0}^{\infty}\left(\int f(t)\ dt\right)e^{-st}dt\\&=\displaystyle\left[-\left(\int f(t)dt\right)\dfrac{1}{s}e^{-st}\right]^{\infty}_{0}+\dfrac{1}{s}\int_{0}^{\infty}f(t)e^{-st}dt\\&=\dfrac{F(s)}{s}\end{align*}

微分方程式への応用例題

早速微分方程式を解いてみましょう。
\begin{align*}\dfrac{d^{2}y}{dx^{2}}+5\dfrac{dy}{dx}+6=0\end{align*}
この方程式を解きます. ただし、初期条件として$y(0)=y'(0)=1$としましょう。 まず両辺をラプラス変換します。 右辺はラプラス変換しても0ですね。 では左辺はどうでしょう?ラプラス変換は定義式からもわかるように線形性が成り立つので、$y$のラプラス変換を$Y(s)$として、
\begin{align*}\left\{s^{2}Y(s)-sy(0)-y'(0)\right\}+5\left\{sY(s)-y(0)\right\}+6Y(s)\\=(s^{2}+5s+6)Y(s)-s-6\end{align*}
つまり、元の微分方程式のラプラス変換は、
\begin{align*}(s^{2}+5s+6)Y(s)-(s+6)=0\end{align*}
となります。すなわち、
\begin{align*}Y(s)=\dfrac{s+6}{s^{2}+5s+6}\end{align*}
こうして、$y$のラプラス変換が求まりました. 最後に、これを普通の$x$の関数に直します。(逆ラプラス変換) しかし、ラプラス変換に公式はないので、ラプラス変換表をみるか、頭の中でどんな関数をラプラス変換したらこうなるのかを探します。 (実際にはあるのですがあまり実用的ではなく、基本的にはどんな関数がこのラプラス変換になるかを確かめるのが一般的) ラプラス変換表は検索すればありふれているので省略します. ちなみに今回の場合、$Y(s)$をまず部分分数分解します。
\begin{align*}Y(s)=\dfrac{4}{s+2}-\dfrac{3}{s+3}\end{align*}
ここで、それぞれ逆ラプラス変換してやると、
\begin{align*}y=\mathcal{L}^{-1}[Y(s)]=4e^{-2x}-3e^{-3x}\end{align*}
となります。私は、$e^{-(s+2)x}$を積分すれば$(s+2)$にがおりてくるよなぁなんて考えて、頭の中で逆ラプラス変換を行いました。 これくらい単純な形なら頭の中でできますが、あまり複雑になりすぎると...変換表を見るしかないですね。

工学的な安定性について

ちなみに、ラプラス変換の分母の部分が0になるような$s$について、これは複素数なのですが、実部が負であれば減衰項になり、$t\to\infty$で一定値に収束するので、工学的な応用場面では実部が負であるという条件がたびたび出てきます。





常微分方程式の他の記事

このエントリーをはてなブックマークに追加