常微分方程式⑤ リッカチ(Riccati)の微分方程式 このエントリーをはてなブックマークに追加

特殊解があるリッカチの微分方程式

以下のリッカチの微分方程式を考えます。
\begin{align*}\dfrac{dy}{dx}+p(x)y^{2}+q(x)y+r(x)=0\end{align*}
この微分方程式を楽に解くには特殊解が1つ見つかっていることが条件となります。


ただ、解が見つかっていなくても解く方法は一応あるので、あとで紹介します。(ただ、そこまで実用的でないので一般的に教科書などでは書かれていなかったりしています。)

特殊解が見つかっている場合

この特殊解を$v(x)$としましょう。つまり、
\begin{align*}\dfrac{dv(x)}{dx}+p(x)\{v(x)\}^{2}+q(x)v(x)+r(x)=0\end{align*}
が成り立っています。 ここで、元の微分方程式から、この式をひくと、
\begin{align*}\dfrac{d}{dx}(y-v)+p(x)(y^{2}-v^{2})+q(x)(y-v)=0\end{align*}
ここで、$u(x)=y(x)-v(x)$とおくと、
\begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+p(x)u(x)\{y(x)+v(x)\}+q(x)u(x)=0\end{align*}
この通り、$u(x)$についての微分方程式に変形しています。 ここで、$y(x)$が残っていますが、これは未知関数なので消去したいですね。 ただ、$v(x)$は既知関数なので残っていても問題はないでしょう。 というわけで、$y(x)$を$y(x)=u(x)+v(x)$によって消去して、
\begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+p(x)u(x)\{u(x)+2v(x)\}+q(x)u(x)=0\end{align*}
これを$u(x)$についてまとめると、
\begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+p(x)\{u(x)\}^{2}+\{2p(x)v(x)+q(x)\}u(x)=0\end{align*}
あれ、これ結局そんなに変わってなくない?って思うかもしれませんが、実はこの方程式はベルヌーイの微分方程式になっています。

ここで、ではこのベルヌーイの微分方程式の解法を使って解いてみましょう。上の記事の形とそろえるために以下の形に変形します。
\begin{align*}\dfrac{du(x)}{dx}+\{2p(x)v(x)+q(x)\}u(x)=-p(x)\{u(x)\}^{2}\end{align*}
ここで、変数変換
\begin{align*}z(x)=\{u(x)\}^{-1}=\dfrac{1}{u(x)}\end{align*}
を行います。この両辺を微分すると、
\begin{align*}\dfrac{dz(x)}{dx}=-\dfrac{1}{\{u(x)\}^{2}}\dfrac{du(x)}{dx}\end{align*}
では、先ほどの微分方程式の辺々を$-\{u(x)\}^{2}$で割ると、
\begin{align*}-\dfrac{1}{\{u(x)\}^{2}}\dfrac{du(x)}{dx}-\{2p(x)v(x)+q(x)\}\dfrac{1}{u(x)}=p(x)\end{align*}
よって、変数を$z(x)$で置き換えると、
\begin{align*}\dfrac{dz(x)}{dx}-\{2p(x)v(x)+q(x)\}z(x)=p(x)\end{align*}
これは一階線形微分方程式ですね!もうせっかくなので最後まで解いてみましょう。辺々に$e^{-\int \{2p(x)v(x)+q(x)\}dx}$をかけると、
\begin{align*}e^{-\int (2pv+q)dx}\dfrac{dz}{dx}-\{2pv+q\}e^{-\int (2pv+q)dx}z=pe^{-\int (2pv+q)dx}\end{align*}
よって、左辺を積の微分公式にあてはめれば、
\begin{align*}\dfrac{d}{dx}\left(ze^{-\int(2pv+q)dx}\right)=pe^{-\int (2pv+q)dx}\end{align*}
よって辺々積分すると、
\begin{align*}ze^{-\int (2pv+q)dx}=\displaystyle \int p e^{-\int (2pv+q)dx)}\end{align*}
\begin{align*}z=e^{\int (2pv+q)dx}\displaystyle \int p e^{-\int (2pv+q)dx}\end{align*}
となります。ところで.... 今回は変数変換を2回もしています。
\begin{align*}z(x)=\dfrac{1}{u(x)}=\dfrac{1}{y(x)-v(x)}\end{align*}
よって、$y(x)$について解くと、
\begin{align*}y(x)=v(x)+\displaystyle e^{-\int \{2p(x)v(x)+q(x)\}dx}\left(\int p(x) e^{-\int \{2p(x)v(x)+q(x)\}dx}\right)dx\end{align*}
もちろん、特殊解が見つかっていなくても、その場で解を探してみるというのもありです。以下で特殊解がない状態で解く方法を解説しますが、上で示した解き方のほうが思考方法的には楽です。

特殊解抜きで解く方法

\begin{align*}\dfrac{u'(x)}{u(x)}=p(x)y\end{align*}
というように新しい変数$u(x)$を導入します。このとき、$y$の導関数は、
\begin{align*}\dfrac{dy}{dx}=-\dfrac{p'(x)}{\{p(x)\}^{2}}\dfrac{u'(x)}{u(x)}+\dfrac{1}{p(x)}\dfrac{u''(x)u(x)-\{u'(x)\}^{2}}{\{u(x)\}^{2}}\end{align*}
この式を元の微分方程式
\begin{align*}\dfrac{dy}{dx}+p(x)y^{2}+q(x)y+r(x)=0\end{align*}
に代入して、さらに他の$y(x)$も変数変換を行えば、
\begin{align*}-\dfrac{p'(x)}{\{p(x)\}^{2}}\dfrac{u'(x)}{u(x)}+\dfrac{1}{p(x)}\dfrac{u''(x)u(x)-\{u'(x)\}^{2}}{\{u(x)\}^{2}}\\+\dfrac{1}{p(x)}\left(\dfrac{u'(x)}{u(x)}\right)^{2}+\dfrac{q(x)}{p(x)}\dfrac{u'(x)}{u(x)}+r(x)=0\end{align*}
辺々に$p(x)u(x)$をかけると、
\begin{align*}u''(x)+\left(q(x)-\dfrac{p'(x)}{p(x)}\right)u'(x)+p(x)r(x)u(x)=0\end{align*}
これは2階の微分方程式になってしまいましたが、線形になりました。 つまり、まだ解きやすい微分方程式に変わったわけです。 とはいえ、これは定係数ではないのでまだまだ解きにくいです。 この変形で解きやすい簡単な形になればいいんですが...なかなかうまくいかないものです。


常微分方程式の他の記事

このエントリーをはてなブックマークに追加